エリザベス(1998) [洋画・史劇]
華麗なコスチューム・ドラマ「エリザベス」(1998 イギリス/原題:ELIZABETH)。
監督はシェカール・カプール。
イギリスのコスチューム・ドラマ好きにはたまらない話題作。
出演はケイト・ブランシェット、ジェフリー・ラッシュ、クリストファー・エクルストン、ジョセフ・ファインズ。
1558年11月、イングランド史上2番目の女王となるエリザベスは、3歳で私生児の烙印を押され、21歳で反逆罪に問われ、25歳でイングランド女王に即位。そして、「国と国民と結婚した」ヴァージン・クィーンとなる。
エリザベス1世の肖像画は歴史の教科書には必ず載っているし、彼女がイングランド女王となってからの国の繁栄については誰もが知っているだろう。その彼女がいかにして即位し、そして真の「女王」となっていくかが、華麗に、残酷に、そしてセクシーに描かれている。
16世紀のイングランドでは宗教戦争が絶えず、旧教(カトリック)派のイングランド史上1番目の女王であるメアリーは、盛んに新教(プロテスタント)を弾圧し、ブラッディー・メアリーと呼ばれている。これはカクテルの名にもなっているので、ご存知の方も多いだろう。
メアリーといえば、9日間の女王ジェーン・グレー(18歳)を死に追いやった張本人で、この辺りのエピソードに関する私の知識については、夏目漱石『倫敦塔』によるところが大きい。
倫敦塔の歴史は英国の歴史を煎じ詰めたものである。過去という怪しき物をおおえる戸張が自ずと裂けてがん中の幽光を二十世紀の上に反射するものは倫敦塔である。すべてを葬る時の流れが逆しまに戻って古代の一片が現代に漂い来れりとも見るべきは倫敦塔である。人の血、人の肉、人の罪が結晶して馬、車、汽車の中に取り残されたるは倫敦塔である。
ロンドン塔には行ったことがないが、とてもドキドキしたものだ。また、反逆罪に問われたエリザベスがロンドン塔に入っていく場面を見たとき、とっさに『倫敦塔』の次の場面を思い出した。
逆賊門とは名前からが既に恐ろしい。古来から塔中に生きながら葬られたる幾千の罪人は皆舟からこの門まで護送されたのである。彼等が舟を捨てて一度びこの門を通過するや否や娑婆の太陽は再び彼等を照らさなかった。テームズは彼等にとっての三途の川でこの門はよみに通ずる入り口であった。
漠然と思い描いていた場面が、この映画で強烈な映像となって襲ってきた。すばらしい。そして、この塔を出、女王となり、自信と威厳にあふれるエリザベスの姿は、歴史のおもしろさを教えてくれる。
内容については触れないが、この映画がもたらす圧倒的な美と迫力と、人間の弱さと強さについては見てのお楽しみです。歴史がちょっぴり苦手だという方は、1度お試しください。おススメですよ。
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