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エドワードⅡ(1991) [洋画・史劇]

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シェイクスピアと並ぶ16世紀の劇作家クリストファー・マーロウの戯曲をもとに、鬼才デレク・ジャーマンが描くアンチ・ゲイ・バッシングの問題作。
「エドワードⅡ」(1991 イギリス・日本/原題:EDWARD II)
最初から最後まで困難な愛を貫き通すエドワード2世とその寵臣の行き様を、歴史考証を無視した大胆な演出と見事な映像美で創出。

監督・脚本はデレク・ジャーマン、原作戯曲はクリストファー・マーロウ、製作総指揮はサラ・ラドクリフ。
出演は、スティーヴン・ウォディントン、ティルダ・スウィントン、アンドリュー・ティアナン、ナイジェル・テリー、アニー・レノックス、ジョン・リンチなど。


父王の死によって即位したエドワード2世は、フランスに追放されたガヴェストンを自分のいるイギリスに呼び戻す。エドワードは愛のもとに、権力をガヴェストンと共に分かち合い、ガヴェストンもまた、エドワートと引き裂かれた苦しみを癒すかのように王への愛に溺れていく。
しかしその淫らで異常なまでの寵愛ぶりは、ガヴェストンを追放した司教をはじめとする貴族達の反発を招き、また、その貴族達に与えられた理不尽かつ屈辱的な死によって、王宮への信頼は崩壊寸前にまで追い込まれる。
王妃イザベラは、エドワードの愛を求めつつもそれを拒絶され、ガヴェストンを憎みながらもどうすることもできない。

王に返り討ちにされるのを恐れて、誰もが王のガヴェストンへの愛を阻止することができなかったが、国を憂えたモーティマーによって、ようやくガヴェストンが追放される。しかしすぐに、王への愛を求める王妃によって、追放は取消される。
戻ってきたガヴェストンと王の暴挙はさらに激しくなり、王妃はモーティマーと共に謀って、王に「退位かガヴェストンか」と迫り、ガヴェストンは死ぬ。
ガヴェストンがフランスから連れてきたスペンサーの入れ知恵によって、王はモーティマーたちへの復讐を決行する。だが、王妃と結託したモーティマーの力によって、王は捕まってしまうのだった・・・。



暴君として知られたエドワード2世を、別の視点でとらえ、性と暴力を題材とした話題作。
闘病の末に亡くなった映像詩人D・ジャーマンは、HIV陽性が判明してからは新作を発表するたびに、最後の作品か、と噂されながらも遺作「ブルー」まで旺盛な活動を続けていました。
この作品は、政治と感情の抑圧をテーマとし、彼自身も「『カラヴァジア』よりも過激になる」と語っているように、ヘテロ社会の価値観に対する彼の作品の中でも最も過激なメッセージにあふれています。

当初はBBCのTVムービーとして企画されたものでしたが、後にジャーマンの意向でビデオから35ミリで撮影されることになりました。ちょうど政治的にも、政府条例28条・刑司法法案第25項の法改正(これらは同性愛者に対するさまざまな制約等が盛り込まれている)が行われるという時期にあり、社会に問題を投げかける作品にもなりました。

ジャーマンはこのテーマを、低予算を逆手に取ったシンプルなセットと現代的衣装によって、見事に1320年代のイギリスを現代に引き寄せて真実を生々しく描き出しています。
政治的抗争、同性愛に対する偏見、そのどれもが、中世と現代、両方に通じるものです。
エドワードを被害者としてのみ描いているのではないというところも、ジャーマンの考えが窺えるようで、楽しめます。また、C・マーロウの戯曲が採用されたのも、セリフの流れ(語感)によるところがあったと同時に、シェイスクピアが保守派であるのに対してマーロウは過激派・反体制派であることもあったとかないとか、言われているところが、おもしろいです。

以上が、政治的な問題作としてこの作品をとらえた見方ですが、ジャーマンの映像美・演出力に注目するのも、1つの楽しみ方です。

本当にシンプルなセットです。しかし、映像技術と演出で、あそこまでやってのける力量は、ちょっと驚きます。
「エリザベス」のように正統派コスチュームものもいいのですが、低予算をこのように利用できてしまうジャーマンって、やはり鬼才ですね。また、頂点までのぼれば、あとは落ちていくのみ・・・、その、権力のありかたを王妃イザベラのそばで見ていた王子の、王亡き後に頂点にのぼりつめた王妃とモーティマーに対する行動も、なかなか見物。ふと、「ヴィトゲンシュタイン」を思い出したりしてしまいましたが、エドワード2世の悲劇を知らなくても、充分楽しめる映画です。

個人的には、イザベラ役のティルダ・スウィントンがすごく強烈な個性の美人だと思ったことが印象に残っています。改めて見ても、「強烈だな~この美人」と思いますし。確か、彼女は1991年のヴェネチア国際映画祭で女優賞を受賞していましたよね、この映画で。

ジャーマンは、病気になってから考えがまとまりやすくなった、などと語っていて、病気をバネに作品を撮りつづけていたわけですが、もう少し、彼の作品を見ていたかった気もします。




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