さびしんぼう(1985) [邦画・ファンタジー]
「転校生」「時をかける少女」に続く“尾道3部作”の最終作。大林宣彦監督が故郷尾道市を舞台に、ノスタルジックにつづった甘く切ない青春ファンタジーの感動作、「さびしんぼう」(1985)。
原作は、山中恒『なんだかへんて子』。
脚本は、剣持亘・内藤忠司・大林宣彦。
出演は、尾美としのり、富田靖子、小林稔侍、藤田弓子、大山大介、砂川真吾、佐藤允、岸部一徳、秋川リサ、浦辺粂子ほか。
寺の住職の一人息子・ヒロキはカメラ好きの高校2年生。さえない毎日を送るヒロキ(尾美としのり)は、隣の女子校で放課後になるとショパンの『別れの曲』を弾く少女・橘百合子(富田靖子)に恋心を抱いていた。
ヒロキは彼女を勝手に“さびしんぼう”と呼んでいたが、寺の掃除を境に、ピエロのような格好をして“さびしんぼう”と名乗る謎の女の子(富田靖子二役)が現れた。自分の前だけに現われた、自分だけにしか見えなかった女の子相手に、ひとり戸惑うヒロキだったが、やがて母(藤田弓子)や他の人たちの前にも現われ、おかしな騒動がおこる。
百合子とヒロキ、そして“さびしんぼう”と母の思い出が、ショパンの『別れの曲』を中心に、せつないメロディを奏でるのだった…。
初恋のせつない思いが、思い出となって昇華されていく。少し古ぼけた映像の中に、日常と非日常があふれて、なつかしいおもちゃ箱のように辺りに散らばっている、そんなふうになぜか妙に惹きつけられる映画です。
こうして改めて見ると、尾美としのりと、父の住職役の小林稔侍の雰囲気がそっくりで、こんなふうにひょうひょうとしたお父さんは、おもしろいかもしれない。「転校生」に主演として出ていた小林聡美と樹木希林の親子設定もまた、よく見れば似てないこともない。
尾道3部作の内容は、ファンタジー好きには好意的に受け入れられるものであるが、そこかしこに流れているショパンの『別れの曲』がなければ、果たしてこの映画はそれほど印象に残ったのだろうかと思うくらい、ノスタルジックな思いに浸ることのできる曲の効果は大きいものだ。
コメディタッチも相変わらずで、宮沢賢治の「雨ニモマケズ…」と「♪タンタン狸の…」の合体した詩を朗読する校長室のオウムは非常に面白くて、正直、ツボにはまりました。秋川リサも、ある意味、なかなかの体当たり演技(?)ではないでしょうか。それにしても、身長が高いですね、彼女は。
富田靖子も、けなげに頑張っています。
「姉妹坂」(1985)でも感じたけれど、この人は、少し困ったような顔がよく似合います。
ところで、チョコが嫌いに人間なんているのか、という場面がありましたが、実際に、いるんですよ、チョコの匂いを嗅いだだけでも血の気がひいて気分が悪くなるように人が。
久しぶりに見て、ヒロキのチョコ嫌いを、少しは理解できるようになった自分を感じたとき、オトナになったような気がしました。
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