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序の舞(1984) [邦画・ドラマ]

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明治の日本画家・上村松園の生涯を描いた、宮尾登美子『序の舞』原作の東映映画、「序の舞」(1984)
監督は、中島貞夫、原作は、宮尾登美子。
出演は、岡田茉莉子、名取裕子、風間杜夫、水沢アキ、三田村邦彦、三田佳子、佐藤慶など。ナレーションは、市原悦子。


安政5年、9歳の勢以(小林綾子)は貧しかった実家の事情で、京都の葉茶屋「ちきりや」を営む島村家に養女に出される。
勢以(岡田茉莉子)が18歳のときに江戸から明治となる。明治2年に養父母が相次いで亡くなり、翌3年に彫り物職人を婿養子を迎えるが、5年後の明治8年に女児2人を残して世を去った。26歳で若後家となった勢以に、実母・麻(菅井きん)は、生活のために娘を養女に出すように勧めるが、勢以はそれを拒否する。自分が養女に出されたとき、どれほど両親を恨み、そして今も恨みに思っていることか、と。子どもは実の親の元にいることが大切であり、自分は娘たちを絶対に手放さないと、麻の申し出を突っぱねる。勢以のことばに、麻は反発するのだった。
んだことか

勢以の娘・志満(杉沢美紀)と津也(野口一美)は元気に育っていく。津也は、小学校の時に絵で賞を取る。指導していた西内太鳳(風間杜夫)は津也の才能を見出し、小学校を卒業したら、画塾に通うよう勧め、志満も津也を応援するが、勢以は、女の幸せは良い男との結婚であり、絵で食べていくことなど難しいと反対する。勢以の反対に、涙する津也だった。
津也(名取裕子)は高木松溪(佐藤慶)の画塾に入り、島村松翠としてその絵の才能を開花させていた。津也が16歳のときに第3回内国勧業博覧会で「四季美人図」を出品し、一等褒状を受賞する。また、この絵を、来日中のヴィクトリア女王の三男であるコンノート殿下が60円で購入し、津也は天才少女画家として一躍有名となった。自分の絵が、60円という母子3人で1年は暮らしていける大金で売れたことを無邪気に喜ぶ津也だった。
ずっと津也の面倒を見ていた太鳳が、ヨーロッパに絵の修業に行くという。4~5年は帰ってこないという太鳳のことばに、津也は泣きじゃくるのだった。
太鳳がいなくなり、松溪に全面的に世話になることになった津也は、「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵」、「真・善・美の極致に達した本格的な美人画」を目指し、日々修行に励んでいた。その津也に、同じ画塾に通う村上徳二(三田村邦彦)は心を寄せていた。
ある日、津也の財布を届けにきた徳二と出会ったことで、姉・志満(水沢アキ)は徳二への淡い恋心を抱く。しかし、徳二は津也をひたむきに想っており、津也も徳二に淡い想いを抱いていたが、絵に夢中になるあまり、はっきりとした恋愛感情にまで育っていなかった。
松溪が千枚描きに挑戦した夜、松溪に夕飯に誘われて店に行った津也は、そこで強引に男女関係を迫られ、受け入れてしまう。この時代、師匠に逆らえば、絵を描くことも難しくなり、絵を描いて出品しても賞を取ることはできなくなる。また絵に関わる商人たちに悪い評判を流され、絵を売ることすらできなくなる。つまり、画家としての人生を潰されてしまうのだ。そのため、津也は、徳二に淡い想いを抱いていたとしても、松溪を拒むことすらできなかったのだ。
松溪と関係を持ったことで、徳二への想いを封印する津也であったが、それを知らない徳二は、津也をあいかわらず想っていた。そんな徳二のようすに、自分が、徳二の愛も画家としての才能もある津也をそのうち憎んでしまうのでは、と志満は苦しみ、大家の勧めに沿って、結婚する。
徳二は、松溪と津也の関係を知り、自分の絵の才能に見切りをつけると同時に絵の世界を捨て、画塾を去る。
津也や、松溪との子を身ごもってしまう。勢以は、父親のない子どもを身ごもった津也を責め、生まれた子どもを極秘裏に里子を出すという喜代次(三田佳子)に頼んで、津也が産んだ子どもを里子に出してしまう。津也は、出産の苦しみの中、男の身勝手で子どもを身ごもってしまう女の身の苦悩と、子どもを奪われる屈辱を、その壁に描くのだった。そして、出産後、津也は姿を消す。
津也は徳二に救われるが、太鳳がヨーロッパ帰りの新進気鋭の画家として帰国したことを知り、徳二の元を去り、太鳳の元に身を寄せる。
自分には絵しか残っていないと、絵に没頭する津也は、松溪を決別して太鳳に師事し、7年後、「花ざかり」の絵を完成させる。その絵は、松溪の作品よりも上位の章を取る。
松溪は、津也を騙して彼女との再会を果たす。自分の子どもを産んだことを知りつつも、7年も音信不通にしていたのは、妻がいたので去っていく津也を引き止められなかったこと、そして今は妻が亡くなり、ずっと津也のことを気にしていたことを津也に伝える松溪。ついほだされた津也と、松溪は再び関係を結ぶのだった。
松溪の子を再び身ごもった津也は、どうすれば良いか松溪に相談する。しかし、松溪は、それは自分の子か、と突き放す。太鳳の元にいる津也に、太鳳と自分を利用して画家としての成功をおさめたのだから、自分の始末は自分でしろを言うのだった。松溪のことばに、津也はようやく、松溪の卑しい思いに気づくのだった。津也との関係を復活させたのは、画家として自分より上になってしまった津也を、女として自分の思いのままにし、支配するためであり、同じく画家として松溪をしのぐ名声を得ている太鳳への嫉妬から、太鳳が津也と男女の関係になっていると思い込み、津也を自分のものにすることで、男として優越感を味わおうと思っていたのだった。
画壇の会合で、津也をめぐって言い合いになる松溪と太鳳。津也を無理やり手篭めにしたと責める太鳳に、津也は今でも自分の女だと答える松溪。
太鳳は、男としてのプライドを傷つけられ、松溪と再び関係を持ち、子どもを身ごもった津也を破門にする。自分には絵しかないと泣いて謝る津也を冷たく突き放すのだった。
津也は、子をおろす薬を求めて奔走するが、松溪に利用され、太鳳に破門にされたことで画家としてお金の工面をすることが難しくなる。それでも、薬を得て、子をおろそうとするが失敗し、命を失いかける。一命を取り留め、茫然と海を眺める津也の元に、絵を辞めなければ親子の縁を切る、と言っていた勢以が来る。またしても、子どもを取り上げて里子に出そうとするのかと反発する津也。しかし、勢以は、家で産んで育てろと言うのだった。勢以は、子どもは実の親と一緒にいる方が良いと、自分は娘たちを手放さなかったのに、津也の子は里子に出し、しかも4歳で亡くなったこと、前の出産の際に津也が描いた壁の絵から女の苦悩を感じ、世間体ばかりを考え、津也の気持ちを考えなかったことを後悔していたのだった。
勢以に受け入れられ、津也は京都の家に戻り、子どもを産むのだった。
麻は世間体が悪いと勢以を責めるが、ならば親子の縁を切れば良いと勢以は麻を突き放す。そして津也には、たとえ外は厳しくても、家の中があたたかければそれで良いと励ますのだった。
子どもを産み、「自分の身を切り、滴るその血を絵筆に含ませて描くだけの苛烈な覚悟」をもって絵に向かう津也に、太鳳は破門を撤回する。ようやく画家として再出発を果たした津也は、やがて女性として初めて文化勲章を受章するのだった。




女性画の巨匠である上村松園の生涯を描いたフィクション作品です。
名取裕子の脱ぎっぷりが良いこと良いこと。

いろいろな意見があるこの映画ですが、女の生き方に焦点をあてると、男社会の中で女が成功する難しさ、犠牲にしなければならないことの大きさを思い知らされます。仕事のために、結婚という選択肢を選ばなかった女性は、今でもたくさんいますし、閉鎖的な世界では、師匠には絶対に逆らうことができない(逆らったら、人生を抹殺されてしまう)ということは現在も普通にあることです。
松溪に手篭めにされて悔しくとも、自分が一番大切にしている絵を守るためには仕方のないことなのであれば、その屈辱的な出来事も芸の肥やしにするしかない、と思う津也の気持ちは、よくわかります。

それでも、津也は成功を勝ち取ったのですから、それはそれですごいと思いますよ。現実には、自分を犠牲にしたところで、利用されるだけ利用されて、業界から抹殺される人の方が圧倒的に多いわけですから。人間というのは了見の狭い生き物で、自分をしのぐ才能の持ち主というのは、排除しようと考えるものです。なぜなら、業界全体を考えれば大きな損失でも、自分よりも愚鈍であれば、自分の身は安泰だと思えるからでしょう。そういう狭い了見の人間がつくりあげた社会においては、正直、愚鈍な人間が組織の長となり、権力を握り、さらに愚鈍な人間を増産させる、という負のスパイラルが行われるわけです。たとえば、もし、AKBのメンバーが、自分たちで新しいメンバーを選ぶとするのであれば、自分よりかわいい子は、絶対に入れないと思います。その証拠が、「(「AKB48」メンバー231人が選ぶ)正直AKBにいなくて良かった現役アイドル」(2014)にも名前が挙がった橋本環奈の存在。人間の考えなど、そのようなものです。
よく、自分が成功しない理由を他者に押しつける人が多いと非難する声もあります。
確かに、自分の責任を自分で取らない人も多いと思いますが、わざわざ、このような発言をする人間に限って、さまざまな上の思惑に乗っかり、棚ぼた形式で今の地位を得てしまった人が多いような気がします。
この映画を見て、そういうことを考えてしまいました。
才能がある人が成功するのは、本当に大変な社会なのです。



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