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映画 ひみつのアッコちゃん(2012) [邦画・ドラマ]

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赤塚不二夫による大人気少女まんが「ひみつのアッコちゃん」を松竹が実写映画化した、「映画 ひみつのアッコちゃん」(2012)
監督は、川村泰祐、原作は赤塚不二夫『ひみつのアッコちゃん』。
出演は、綾瀬はるか、岡田将生、谷原章介、吹石一恵、塚地武雅、香川照之、堀内まり菜など。


加賀美あつ子ことアッコ(吉田里琴)は、パパが豪華客船の船長をしているため、普段はママ(堀内敬子)と二人暮しをしている10歳の小学生5年生。お化粧をすることが大好きで、ママがいつも使っているAKATSUKAの化粧品は特にお気に入りだった。2学期の終業式の放課後、学校で化粧をして、いつものようにモコ(堀内まり菜)とおしゃべりしていると、モコの弟で姉思いの熱血漢のカン吉、ガキ大将で意地悪もするけど人情家の大将、大将の弟の少将たちによって、大切にしていた手鏡が割れてしまう。
悲しみのなか、鏡のお墓をつくるアッコ。鏡は、その晩、輝きながら天へと登っていった。
眠りにつこうをすると、アッコを呼ぶ声が聞こえてくる。その声をさがして家の外に出たアッコの前に現れたのは、鏡の精(香川照之)だった。今まで鏡を大切にしてくれたお礼にと、きれいなコンパクトをもらう。しかし、このコンパクトは魔法のコンパクトで、変身の呪文「テクマクマヤコン」と唱えると望むものなんにでも変身でき、元の姿に戻るときの呪文は「ラミパスラミパスルルルルル」という。この魔法のコンパクトの秘密を誰かに知られると二度と魔法が使えなくなってしまうと聞き、半信半疑のアッコ。
しかし、「オトナになーれ」と変身の呪文を唱えると、22歳のオトナのアッコ(綾瀬はるか)に変身したのだった。
明日からは冬休み。
魔法のコンパクトで楽しいことが起こりそうで、わくわくするアッコだった。

モコたちと遊園地にやってきたアッコは、そこで、オトナなのに遊園地に来ている27歳の早瀬尚人(岡田将生)と出会う。たまたま一緒に観覧車に乗ることになった尚人を見ながら、アッコは自分も早くオトナになって、恋人に「キレイ」と言われたいと思う。
翌日からの塾の集中講座を欠席し、アッコはオトナの姿で楽しむことに。デパートの化粧品フェアでAKATSUKAのブースできれいにメイクしてもらうアッコは上機嫌。そこにやってきた尚人の姿に、つい声をかけてしまうが、逆に、化粧品についての意見を求められる。高い、ケースがかわいくない、ローションの匂いが・・・と素直な意見を述べるアッコの感性が気に入った尚人は、アッコをアルバイトとして雇う。
働いたことがないアッコは、当然ながらいろいろな失敗をして、青山マリ(吹石一恵)にも注意されるが、尚人だけはアッコのアイデアをおもしろがり、味方をしてくれていた。
しかし、尚人が置かれている状況は、厳しいものだった。尚人の学生時代の研究成果によってAKATSUKAは飛躍的に売り上げを伸ばし、尚人は若くして企画開発室室長待遇となっていたが、それも名ばかりのものだった。熱海専務(谷原章介)のクーデターにより中村前社長(大杉漣)が関連会社に異動となり、熱海専務率いる新体制となってからは企画開発室の提案はことごとく却下された。当然、業績は悪化し、ゴールド興業の増資が必要不可欠となっていた。しかし、これは、ゴールド興業の社長・鬼頭大五郎(鹿賀丈史)と熱海が仕組んだ会社乗っ取りのシナリオだったのだ。熱海は、自分が社長となるために、わざとAKATSUKAの業績を悪化させていたのだ。
尚人たちはまだこのことに気づいていない。

アッコは、守衛さん(塚地武雅)から尚人のことを聞き、尚人が会社を立て直すために奔走していることを知って、力になろうとする。結果が第一だというオトナのロジックに沿って、総理夫人(内田春菊)に変身してAKATSUKAの商品を宣伝したり、楽に結果を出そうとする。
そんなアッコは、授業の課題で楽をしようとして、楽をするためにズルをしても、なにも意味がないと先生に注意される。
アッコがズルによって、一時期は株価が上昇したAKATSUKAだったが、鬼頭サイドからリークされた有害物質混入疑惑がマスコミで取り上げられ、AKATSUKAはまたしても経営が悪化する。アッコが、青山のふりをして鬼頭と熱海の話を聞いていたことを知った尚人は、次の株主総会で、ゴールド興業による事実上の乗っ取りが計画されていることを知る。
焦る尚人だったが、個人では太刀打ちできないものもあった。
アッコは、鬼頭と熱海の話に出ていた筆頭株主である大庭鶴子(もたいまさこ)に協力をお願いしようと考える。しかし、鶴子の元にはすでに鬼頭や熱海が話をつけていた後だった。

運命の株主総会の日、アッコや尚人の懸命な訴えに、鶴子は、株主として業績を安定してほしいが、理想のない企業に明日はない、と現執行役員の解任案を提示する。投票の結果、鶴子の案は、わずかな差で否決されてしまうが、そこに仕事のため遅れてきた守衛さんが投票に訪れる。
守衛さんは、2%の株を保有しており、本来ならば株の配当金で働かなくても良いのだったが、AKATSUKAが好きだからこの会社で働いていたという。
「ぼくは、早瀬さんやアッコちゃんを支持します」
守衛さんの投票によって、現執行役員の解任案が可決された。
よろこぶ尚人は、アッコにこれからもそばにいてほしいと伝える。しかし、アッコにはまだ恋というものがよくわかっていなかった。

尚人たちによる温度で色が変わる化粧品開発は順調に進んでいた。
尚人は、アッコの秘密を話してほしいと伝えていた。アッコの履歴書には早稲田大学「算数学部」と書いてあった。そのような学部は存在しないし、今までのアッコの行動からも、ただの女子大生ではないことはわかっていた。それでも、アッコのことを想い、秘密を打ち明けてほしいと言う尚人に、アッコは、秘密がばれたら二度と魔法が使えなくなると、その場から逃げるのだった。
そのとき、鬼頭によって工場に爆弾が仕掛けられていることが判明する。
鬼頭がAKATSUKAの乗っ取りを企んだのは、尚人が開発中の新成分が目的だった。たとえば戦車に温度で色が変わる成分を付着させれば、置かれた状況に応じて車体の色を変化させ、敵から姿を隠すことができる。兵器の開発のために、尚人を手に入れようとしていたのだった。熱海はそのことを知り、鬼頭と縁を切ろうとするが、すでに遅かった。
爆弾を仕掛けられていることを知ったアッコは、爆弾を探しに工場に向かう。
爆弾を探し、工場のみんなを助けるため、アッコは、尚人やみんなの前で魔法を使い、爆弾の存在を教えるのだった。
工場爆発は免れたが、その爆風によってコンパクトが壊れてしまう。

アッコは、元の姿に戻ることができず、心配しながら自分を待っているママに会っても、自分がアッコだと告げることもできず、途方にくれていた。
そのアッコの前に、鏡の精が現れる。みんなを助けるために自分を犠牲にしたアッコのやさしい思いに応え、もう一度だけ、魔法を使えるようにしてくれるという。「もう一度鏡が使えるとしたら、何になりたい?」と言う鏡の精への答えとして、アッコは「私」になれと最後の魔法をかけたのだった。

10年後、AKATSUKAの就職面接に臨むアッコは、そこに尚人の姿を見つける。
「早稲田大学算数学部…いえ、理工学部」と言うアッコの姿を見て、尚人は、かつて自分が恋をしたアッコを思い出すのだった。





どうなんでしょう?
トム・ハンクス主演の「ビッグ」(1988)によく似た展開ですが、ゴールド興業の乗っ取り事件が、あまりにもリアリティがなさすぎて・・・もう少し脚本を工夫してほしかった。
そして、ラストで20歳のアッコと37歳の尚人のラブストーリーをにおわせていますが、すみません、どうしても想像することはできません。
尚人ラブだった青山くんは、アッコに尚人を託して自ら身を引いたわけですが、アッコ不在の10年間になにかあったかもしれない、と想像する方が普通だし、現実問題として、17歳年上のおじさんにラブな気持ちは抱けないなぁ。ま、年の差カップルがいるので、わからないですが。

綾瀬はるかの演技は、まぁまぁ良かったと思いますが、「22歳女子大生」というのは無理がありました。尚人役が、年下の岡田将生ではなく、もっと上の年代の人ならばまだ「22歳女子大生」っぽく見えたのかもしれませんが、岡田くんのお肌の方がぴちぴちで・・・綾瀬さんもきれいなのですが、やはりいろいろと無理な部分が。

現在、CMなどで、昔のアニメキャラクターがオトナになったら・・・的なものが見られるようになりましたが、その流れの中で、「ひみつのアッコちゃん」の実写映画化が出てきたのでしょうか。
慣れ親しんだ題材の映画化というのは、宣伝をかけずとも視聴者がもれなくついてくるので、楽なのかもしれませんが、どうぜならば、もう少しひねりの効いた「ひみつのアッコちゃん」を見たかったです。
エンディングの曲は、懐かしかったです。




映画 ひみつのアッコちゃん(本編1枚+特典DISC1枚) [DVD]

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女子ーズ(2014) [邦画・ドラマ]

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「勇者ヨシヒコと魔王の城」(テレビ東京、2011)の福田雄一が描く、戦隊ヒーロー?、いや、ヒロインの特撮コメディー映画、「女子ーズ」(2014)
監督・脚本は、福田雄一。
出演は、桐谷美玲、藤井美菜、高畑充希、有村架純、山本美月、佐藤二朗など。


選ばれし5人の女たちが揃ったとき、最強の戦隊が誕生する!
が、なかなか揃わない。
なぜなら女子とは、そういうものだからである・・・。



いつもの戦いの場所。
ワカメヌルン(ワカメ怪人)から地球を守るため、正義の戦隊「女子ーズ」のメンバーが集結した・・・はずだった。
女子レッドの赤木直子(桐谷美玲)、女子イエローの黄川田ゆり(高畑充希)、女子グリーンの緑山かのこ(有村架純)、女子ネイビーの紺野すみれ(山本美月)は、その場にいない女子ブルーの青田美佳(藤井美菜)に電話をかける。
朝起きたら、マツエク(まつ毛エクステ)が取れていたから、今、マツエクをしているという。レッドは「マツエクと怪人、どっちが大事なの?」と聞くと、ブルーの答えは、「ごめん、マツエク?」。
5人が揃わないと必殺技「女子トルネード」が出せないが、しかたなく、4人でワカメ怪人を倒すことになった。

ことのはじまりは、正義の戦隊をまとめる男・チャールズ(佐藤二朗)によって、5人が召喚されたときにさかのぼる。
以前の戦隊の任期終了に伴い、新たな戦隊を結成しなければならなかった。今は女子のほうが強い、ということで、「名字に色が入っている」という理由だけで突然集められた5人の女子たち、赤木直子、青田美佳、黄川田ゆり、緑山かのこ、紺野すみれは、世界征服を企む怪人たちから地球を守る戦隊「女子ーズ」のメンバーにさせられてしまう。

青田美佳は、アパレルショップでアルバイトをしているギャルであり、怪人退治には当然興味はない。
黄川田ゆりは、弟を大学に進学させるためにアルバイトを掛け持ちしているフリーターで、怪人退治をしている暇などない。
緑山かのこは、アングラ劇団「カオスの彼方」の劇団員で、チャールズに「特別な能力がある」と言われ、少しはその気に?
紺野すみれは、紺野財閥の令嬢で、こわがり。当然、怪人退治などできるはずもない。

それぞれの理由から、断ろうとする彼女たちだったが、豊島建設営業課に勤め、何事にも全力で取り組む真面目な性格の赤木直子の説得により、ようやく女子ーズは結成された。

しかし、司令官・チャールズから怪人退治の指令がかかっても、女子たちは、恋愛・仕事・美容・野暮用など、それぞれの理由で、徐々に全員が集まることが少なくなり、チャールズは女子たちに注意をする。女子たちは、現在まで退治している怪人たちは、「女子トルネード」がなくても倒せるため、集まれるメンバーだけで戦えば良い、と言う。それに対し、チャールズは、次第に強い怪人が現れ、「女子トルネード」なしでは勝てなくなると伝え、レッドもがんばろうと他のメンバーに声をかけるのだったが・・・。

ある日、怪人退治の指令を受信する。
それは、レッドの長年の夢だった美術館建設のプレゼンの日だった。仕事と怪人退治のどちらを優先するか悩んだ末、レッドはプレゼンを優先させる。その結果、無事、美術館建設の仕事を得たレッドだったが、そのことで他の4人と喧嘩をしてしまう。つい、正社員の自分には外せない仕事があるのだから、そのときはバイトの人ががんばってほしい、と言ってしまい、他の4人は女子ーズの役目を放り投げてしまう。そのことで嫌気がさしたレッドも、女子ーズの役目を放り投げて仕事に専念するようになる。
しかし、レッドは、仕事も恋愛も上手く行かなくなってしまうのだった。
久々にチャールズからの指令を受信したレッドは、基地に呼び出され、自分がいない間も他の4人が怪人たちと戦っていたことを聞かされ、再び女子ーズの役目に目覚める。レッドは、怪人退治に向かうが、現れた怪人・メタルゴードン(金属怪人)はそれまでの怪人とは桁違いに強く、しかもレッドの不在に不満を募らせていた4人は来なかった。レッドは、4人を探すため街に向かい、4人を説得し、戦いの場に連れていく。
5人が集まり、「女子トルネード」で退治できたと思われたが、巨大化したメタルゴードンは強かった。
危機一髪の女子ーズに、チャールズはロボを呼び出せと言う。そして現れたピンクの女子ーズロボ。
使い方はよくわからないけれど、いろいろと触っているうちに、メタルゴードンを倒せてしまった。
5人はお互いの存在の大切さを再確認する。

チャールズから、また指令が。
急いで駆け付けたのは、レッドだけだった・・・。





劇団系で小劇場好きの福田雄一監督らしく、佐藤二朗やムロツヨシが出ています。
迷惑な乗客役で出演していたムロツヨシが、「ピンクはいないの?」と言っていましたが、なるほど、ロボがピンクでした。となると、6色になるのでは?
細かいことは気にしない方が良いですね。
あと、ブルーのバイト先に現れたバカップル役で、上地春奈さんが出ています。「勇者ヨシヒコと魔王の城」にゲストで出ていたのですが、個人的には「新解釈・日本史」(TBSテレビ、2014)での印象が強いです。ムロツヨシさんの影響かもしれませんが。

福田監督が、その製作背景を映画.com (2013年12月19日)で語っています。

うちの嫁が大変わがままで、社会人経験がなく、協調性のない女性だったため、こんな女が戦隊を組んだら面白いことになるだろうなと思ったのが、事の発端です。


「勇者ヨシヒコと魔王の城」は、正直、おもしろいとは思わなかったのですが、こういう精神は、私は好きです。


「女子ーズ」DVD 片手間版

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いとしのエリー(1987) [邦画・ドラマ]

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当時、おニャン子クラブを卒業した国生さゆりの初主演作品であり、同じく人気を誇っていた男闘呼組の前田耕陽とのダブル主演も話題にはなった、高見まこの同名小説の映画化、「いとしのエリー」(1987)
監督は、佐藤雅道、原作は高見まこ。
出演は、国生さゆり、前田耕陽、鶴見辰吾、井浦秀知、志村香、森田まゆみ、名古屋章、陣内孝則、三浦友和など。


ある日、いつものように街で遊んでいた都立三田町高校2年の上野晋平(前田耕陽)は、目の前をさっそうとバイクで走り去る串田枝理子(国生さゆり)に横顔に見惚れる。枝理子のバイクが不調になったことから、知り合いの山本達巳(陣内孝則)のバイク店に送っていた晋平は、気さくで美人の枝理子に一目ぼれしてしまう。
新学期になり、新しく赴任してきたという、英語担当の担任教師の話で盛り上がる晋平と、清水文太郎(井浦秀知)と本土寺マコト(家富洋二)の仲良しコンビ。そこに現れたのは、枝理子だった。美人の枝理子は、大学時代の先輩である真名古敬一(鶴見辰吾)のサポートもあり、すぐに生徒たちとも仲良くなり、晋平は毎日学校で枝理子と会えることを楽しみにしつつも、枝理子と敬一の仲を心配していた。
敬一は、大学時代から枝理子に想いを寄せていたが、枝理子はそのことには気づいておらず、大学時代の恩師である中村敦(三浦友和)と不倫関係を続けていた。敦は北海道の大学に行くことになり、枝理子とは離れ離れになる。枝理子は寂しさを吹っ切るようにお酒を飲み、二日酔いに。酔いざましに校庭を走っていたところ、こけて怪我をしてしまう。晋平はすかさず枝理子を抱き上げて保健室に向い、枝理子は、晋平が自分に向けてくる好意に戸惑いながらも、嫌な気持ちはしなかった。
明るい性格と可愛らしさで人気だった隣野美代子(志村香)の誕生日パーティに呼ばれる枝理子と敬一。晋平は、枝理子が敬一と一緒に踊る姿に嫉妬し、会場から出てしまう。そんな晋平の後を枝理子が追いかけ、ふたりはバイクに乗って会場を後にするが、雨に降られて枝理子の家へ。7歳年下の晋平を可愛く思っていたが、晋平の純粋な想いに、敦と離れて空虚は気持ちになっていた枝理子の心は揺れ、つい、教師と生徒の一線を越えてしまう。
枝理子が初めての相手だった晋平は、ますます枝理子にのめり込み、枝理子を「エリー」を呼ぶように。
枝理子もまた、晋平のことを可愛く思うのだったが、晋平の母・三津子(野川由美子)から、最近、晋平のようすがおかしいと相談を受ける。家族に秘密を持ち、外泊することも多くなり、成績が下がったという。自分と付き合うことで、晋平をダメにしてしまうのでは、と枝理子は晋平と距離を置くようになる。不安に思う晋平だったが、枝理子の気持ちを知り、自分は大丈夫だと答えるのだった。
枝理子の元に、1年ぶりに敦からハガキが届いた。離れてみて、やっと枝理子の存在の大きさを知った、北海道に来てほしい、会いたい、という内容だった。枝理子は北海道に向かい、そのことを知った晋平は、文太郎とマコトの協力を得て、枝理子を追いかけて北海道に向かう。
北海度ではなかなか敦と連絡が取れず、空港に向かった枝理子の前に、敦が現れる。一緒にいてくれないか、と枝理子に告白する敦。しかし、枝理子は1年前に言ってほしかったと答える。自分には大切にしたい人がいるのだと。敦は、枝理子と一緒になるために離婚していたのだが、枝理子の決心は固く、ふたりは空港で別れる。そのようすを、晋平が見ていた。枝理子が自分の元に戻ってくれたことをよろこび、抱き合うふたりだった。




う・・・・ん。
基本、無理。生理的に受け付けない話です。
教師と生徒の恋愛というのは、現実にあり得ることですが、やはりレアケースであるわけで、少女マンガの世界ですよ。・・・って、これ、原作が少女マンガでしたね。
いや、普通に、モラルの話なのです。今ならセクハラ、アカハラで訴えられます。大問題です。なぜ、教師と生徒がそういう関係になって、ほのぼの学園ドラマが展開されるのですか?
いや、もう、無理です。

国生さゆりは、きれいでしたよ。ああ、可愛いなぁ、と思って眺めていました。敦と別れて、ひとりダンスを踊って、涙を流すシーンなんて、きれいだなと思いましたさ。
映画全体にあふれているバブリーな雰囲気も良いでしょう。学園ドラマの常連の名古屋章さんが教師役で出ているのも、トラックの運ちゃん役で一瞬だけ登場する伊武雅刀も、良かったですよ。でも、なにもかもが非現実的。
原作と違って、エリーと晋平のハッピーエンドで終わるのも良いのだけれど、たとえ、上映当時に、自分もバブリーな高校生だったとしても、憧れないわぁ。この映画を見たいとは思わないわ。
DVD化していない貴重な映像なのでしょうが、基本、無理でした。



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序の舞(1984) [邦画・ドラマ]

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明治の日本画家・上村松園の生涯を描いた、宮尾登美子『序の舞』原作の東映映画、「序の舞」(1984)
監督は、中島貞夫、原作は、宮尾登美子。
出演は、岡田茉莉子、名取裕子、風間杜夫、水沢アキ、三田村邦彦、三田佳子、佐藤慶など。ナレーションは、市原悦子。


安政5年、9歳の勢以(小林綾子)は貧しかった実家の事情で、京都の葉茶屋「ちきりや」を営む島村家に養女に出される。
勢以(岡田茉莉子)が18歳のときに江戸から明治となる。明治2年に養父母が相次いで亡くなり、翌3年に彫り物職人を婿養子を迎えるが、5年後の明治8年に女児2人を残して世を去った。26歳で若後家となった勢以に、実母・麻(菅井きん)は、生活のために娘を養女に出すように勧めるが、勢以はそれを拒否する。自分が養女に出されたとき、どれほど両親を恨み、そして今も恨みに思っていることか、と。子どもは実の親の元にいることが大切であり、自分は娘たちを絶対に手放さないと、麻の申し出を突っぱねる。勢以のことばに、麻は反発するのだった。
んだことか

勢以の娘・志満(杉沢美紀)と津也(野口一美)は元気に育っていく。津也は、小学校の時に絵で賞を取る。指導していた西内太鳳(風間杜夫)は津也の才能を見出し、小学校を卒業したら、画塾に通うよう勧め、志満も津也を応援するが、勢以は、女の幸せは良い男との結婚であり、絵で食べていくことなど難しいと反対する。勢以の反対に、涙する津也だった。
津也(名取裕子)は高木松溪(佐藤慶)の画塾に入り、島村松翠としてその絵の才能を開花させていた。津也が16歳のときに第3回内国勧業博覧会で「四季美人図」を出品し、一等褒状を受賞する。また、この絵を、来日中のヴィクトリア女王の三男であるコンノート殿下が60円で購入し、津也は天才少女画家として一躍有名となった。自分の絵が、60円という母子3人で1年は暮らしていける大金で売れたことを無邪気に喜ぶ津也だった。
ずっと津也の面倒を見ていた太鳳が、ヨーロッパに絵の修業に行くという。4~5年は帰ってこないという太鳳のことばに、津也は泣きじゃくるのだった。
太鳳がいなくなり、松溪に全面的に世話になることになった津也は、「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵」、「真・善・美の極致に達した本格的な美人画」を目指し、日々修行に励んでいた。その津也に、同じ画塾に通う村上徳二(三田村邦彦)は心を寄せていた。
ある日、津也の財布を届けにきた徳二と出会ったことで、姉・志満(水沢アキ)は徳二への淡い恋心を抱く。しかし、徳二は津也をひたむきに想っており、津也も徳二に淡い想いを抱いていたが、絵に夢中になるあまり、はっきりとした恋愛感情にまで育っていなかった。
松溪が千枚描きに挑戦した夜、松溪に夕飯に誘われて店に行った津也は、そこで強引に男女関係を迫られ、受け入れてしまう。この時代、師匠に逆らえば、絵を描くことも難しくなり、絵を描いて出品しても賞を取ることはできなくなる。また絵に関わる商人たちに悪い評判を流され、絵を売ることすらできなくなる。つまり、画家としての人生を潰されてしまうのだ。そのため、津也は、徳二に淡い想いを抱いていたとしても、松溪を拒むことすらできなかったのだ。
松溪と関係を持ったことで、徳二への想いを封印する津也であったが、それを知らない徳二は、津也をあいかわらず想っていた。そんな徳二のようすに、自分が、徳二の愛も画家としての才能もある津也をそのうち憎んでしまうのでは、と志満は苦しみ、大家の勧めに沿って、結婚する。
徳二は、松溪と津也の関係を知り、自分の絵の才能に見切りをつけると同時に絵の世界を捨て、画塾を去る。
津也や、松溪との子を身ごもってしまう。勢以は、父親のない子どもを身ごもった津也を責め、生まれた子どもを極秘裏に里子を出すという喜代次(三田佳子)に頼んで、津也が産んだ子どもを里子に出してしまう。津也は、出産の苦しみの中、男の身勝手で子どもを身ごもってしまう女の身の苦悩と、子どもを奪われる屈辱を、その壁に描くのだった。そして、出産後、津也は姿を消す。
津也は徳二に救われるが、太鳳がヨーロッパ帰りの新進気鋭の画家として帰国したことを知り、徳二の元を去り、太鳳の元に身を寄せる。
自分には絵しか残っていないと、絵に没頭する津也は、松溪を決別して太鳳に師事し、7年後、「花ざかり」の絵を完成させる。その絵は、松溪の作品よりも上位の章を取る。
松溪は、津也を騙して彼女との再会を果たす。自分の子どもを産んだことを知りつつも、7年も音信不通にしていたのは、妻がいたので去っていく津也を引き止められなかったこと、そして今は妻が亡くなり、ずっと津也のことを気にしていたことを津也に伝える松溪。ついほだされた津也と、松溪は再び関係を結ぶのだった。
松溪の子を再び身ごもった津也は、どうすれば良いか松溪に相談する。しかし、松溪は、それは自分の子か、と突き放す。太鳳の元にいる津也に、太鳳と自分を利用して画家としての成功をおさめたのだから、自分の始末は自分でしろを言うのだった。松溪のことばに、津也はようやく、松溪の卑しい思いに気づくのだった。津也との関係を復活させたのは、画家として自分より上になってしまった津也を、女として自分の思いのままにし、支配するためであり、同じく画家として松溪をしのぐ名声を得ている太鳳への嫉妬から、太鳳が津也と男女の関係になっていると思い込み、津也を自分のものにすることで、男として優越感を味わおうと思っていたのだった。
画壇の会合で、津也をめぐって言い合いになる松溪と太鳳。津也を無理やり手篭めにしたと責める太鳳に、津也は今でも自分の女だと答える松溪。
太鳳は、男としてのプライドを傷つけられ、松溪と再び関係を持ち、子どもを身ごもった津也を破門にする。自分には絵しかないと泣いて謝る津也を冷たく突き放すのだった。
津也は、子をおろす薬を求めて奔走するが、松溪に利用され、太鳳に破門にされたことで画家としてお金の工面をすることが難しくなる。それでも、薬を得て、子をおろそうとするが失敗し、命を失いかける。一命を取り留め、茫然と海を眺める津也の元に、絵を辞めなければ親子の縁を切る、と言っていた勢以が来る。またしても、子どもを取り上げて里子に出そうとするのかと反発する津也。しかし、勢以は、家で産んで育てろと言うのだった。勢以は、子どもは実の親と一緒にいる方が良いと、自分は娘たちを手放さなかったのに、津也の子は里子に出し、しかも4歳で亡くなったこと、前の出産の際に津也が描いた壁の絵から女の苦悩を感じ、世間体ばかりを考え、津也の気持ちを考えなかったことを後悔していたのだった。
勢以に受け入れられ、津也は京都の家に戻り、子どもを産むのだった。
麻は世間体が悪いと勢以を責めるが、ならば親子の縁を切れば良いと勢以は麻を突き放す。そして津也には、たとえ外は厳しくても、家の中があたたかければそれで良いと励ますのだった。
子どもを産み、「自分の身を切り、滴るその血を絵筆に含ませて描くだけの苛烈な覚悟」をもって絵に向かう津也に、太鳳は破門を撤回する。ようやく画家として再出発を果たした津也は、やがて女性として初めて文化勲章を受章するのだった。




女性画の巨匠である上村松園の生涯を描いたフィクション作品です。
名取裕子の脱ぎっぷりが良いこと良いこと。

いろいろな意見があるこの映画ですが、女の生き方に焦点をあてると、男社会の中で女が成功する難しさ、犠牲にしなければならないことの大きさを思い知らされます。仕事のために、結婚という選択肢を選ばなかった女性は、今でもたくさんいますし、閉鎖的な世界では、師匠には絶対に逆らうことができない(逆らったら、人生を抹殺されてしまう)ということは現在も普通にあることです。
松溪に手篭めにされて悔しくとも、自分が一番大切にしている絵を守るためには仕方のないことなのであれば、その屈辱的な出来事も芸の肥やしにするしかない、と思う津也の気持ちは、よくわかります。

それでも、津也は成功を勝ち取ったのですから、それはそれですごいと思いますよ。現実には、自分を犠牲にしたところで、利用されるだけ利用されて、業界から抹殺される人の方が圧倒的に多いわけですから。人間というのは了見の狭い生き物で、自分をしのぐ才能の持ち主というのは、排除しようと考えるものです。なぜなら、業界全体を考えれば大きな損失でも、自分よりも愚鈍であれば、自分の身は安泰だと思えるからでしょう。そういう狭い了見の人間がつくりあげた社会においては、正直、愚鈍な人間が組織の長となり、権力を握り、さらに愚鈍な人間を増産させる、という負のスパイラルが行われるわけです。たとえば、もし、AKBのメンバーが、自分たちで新しいメンバーを選ぶとするのであれば、自分よりかわいい子は、絶対に入れないと思います。その証拠が、「(「AKB48」メンバー231人が選ぶ)正直AKBにいなくて良かった現役アイドル」(2014)にも名前が挙がった橋本環奈の存在。人間の考えなど、そのようなものです。
よく、自分が成功しない理由を他者に押しつける人が多いと非難する声もあります。
確かに、自分の責任を自分で取らない人も多いと思いますが、わざわざ、このような発言をする人間に限って、さまざまな上の思惑に乗っかり、棚ぼた形式で今の地位を得てしまった人が多いような気がします。
この映画を見て、そういうことを考えてしまいました。
才能がある人が成功するのは、本当に大変な社会なのです。



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太陽の季節(1956) [邦画・ドラマ]

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石原慎太郎の第34回芥川賞受賞作品『太陽の季節』(1955)が原作の、戦後のセンセーショナルな若者群像を描いた、日活映画「太陽の季節」(1956)
監督は古川卓巳、製作は水の江瀧子。
出演は、長門裕之、南田洋子、三島耕、清水将夫、坪内美詠子、佐野浅夫、岡田眞澄、石原裕次郎、石原慎太郎など。



1955年頃、時代は神武景気といわれる好景気で、戦後の窮屈な価値観に反抗し、若者たちの間には開放的で自堕落な雰囲気が漂っていた。
昭和神奈川県逗子市。
海が近く、開放的な地に住む裕福な家庭で育った高校生・津川竜哉(長門裕之)は、バスケット部に所属していたが、ボクシング部に入り浸っており、伊豆(石原裕次郎)を試合をしたことから、ますますボクシング部に熱中し、転部する。竜哉は、ボクシングに熱中しながらも、部の仲間とタバコ・酒・バクチ・女遊び・喧嘩のいう自堕落な生活をしている。兄・道久(三島耕)とは、酒や女遊びなどで連携しながらも、適度に距離を置き、父・洋一(清水将夫)には漠然とした反発心と反抗心から若干の距離を置いている。しかし、裕福な家庭で育った竜哉は、父や母・稲代(坪内美詠子)に反発しながらも離れられない、そんな世間知らずで甘えた一面もあった。

ある日、ボクシング部の仲間とともに、街にナンパをしに出かけた竜哉は、そこで自分が声をかけた少女・武田英子(南田洋子)と気が合い、一緒にいるようになる。竜哉は、女とのつきあいは肉体の歓び以外のものはなく、友とは取引の相手でしかない、という、今だけを楽しもうという空虚な考えの持ち主であった。そして英子もまた裕福な家庭に育つが、愛を信じず、世の中の倫理に反抗し、退屈な毎日を過ごしていた。

夏に入る前に葉山のサマーハウスの準備にやってきた英子は、逗子の竜哉の家を訪れる。ふたりはヨットで楽しみ、東京に帰るのは面倒だからという英子を家に連れて帰った竜哉は、そのまま英子と関係を結ぶ。

竜哉と英子は、関係を持ち、お互いに惹かれあいながらも、素直になれずにいた。英子は、次第に竜哉に夢中になり、竜哉にならば心を許すことができると考えるが、一方、竜哉は、英子を次第に疎ましくなる。そして、英子に興味を示す道久に彼女を5千円で売るのだった。それを知った英子は、「なぜ、あなたはもっと素直に愛することができないの」と語り、竜哉が素直に自分のことを見るまで、道久に金を送りつけると宣言し、竜哉と道久、そして英子の3人の間で金のやりとりがくり返される。

英子が道久に送った総額が6万円になるころ、英子の妊娠が竜哉に知らされる。
英子の妊娠を知り、いったんは彼女を受け入れようと思う竜哉だが、だんだんと面倒くさく感じるようになる。妊娠4ヶ月になった英子は、竜哉に決断を迫るが、竜哉は突き放すように去る。英子は、その足で病院に行き、妊娠中絶手術を受けるのだった。

ボクシング部の仲間とマージャンをしていた竜哉の元に、英子の友人から電話がかかってくる。中絶手術が失敗し、英子は腹膜炎を併発して死亡したというのだった。英子の葬式に向かった竜哉は、彼女が自分に復讐を果たしたのだと感じ、遺影に香炉を投げつける。これまで、一度も泣いたことがないと言ったいた竜哉の目から初めて涙がこぼれ落ちたのだった。






この映画は、長門裕之と南田洋子が結婚するきっかけとなり、石原慎太郎の芥川賞最年少受賞作品であり、その弟である石原裕次郎のデビュー作でもあるという、いろいろな意味で戦後の日本を象徴するものです。雑誌掲載時のキャッチコピーは、「健康な無恥と無倫理の季節! 眞の戦後派青年像は生れた」というものであり、社会に与えた影響は大きく、竜哉や英子のように、夏の海で無秩序に「生」を謳歌する若者のことは「太陽族」と呼ばれるようになりました。
映画が公開された翌1956(昭和31)年は、「もはや戦後ではない」といわれ、いよいよ、戦後の倫理観が変わり始めた時代でもあります。

石原裕次郎は、当初、若者文化を制作陣に伝えるために同行していましたが、そのまま出演することになったということです。石原慎太郎も友情出演していますが、確かに、裕次郎の方が華があります。しかし、主役ではやはりありえない。この時の裕次郎には、竜哉の、どこか屈折した暗さとは程多い、明るく開放的なイメージがあるからです。
一方、目を惹くのは、バンドマスター役の岡田眞澄。あの顔立ちは、周囲の役者とは別格ですし、神奈川という土地柄もあっていろいろと興味深い配役でした。

この作品は、いろいろな意味で話題になりました。
世間的に話題となった倫理観などの問題もありますが、やはり、現実に目覚めるのが早いのは、現実的な問題に直面しやすい女性なのかもしれません。その他、映画として楽しむのであれば、南田洋子のクラシカルモダンなファッションは、彼女の勝気な容姿とあいまって、ポイントかもしれません。

戦後の若者文化を見ると言う意味では、一見の価値はあるかもしれません。
ただ、個人的に、裕次郎作品の中で好きなのは「黒部の太陽」です。






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夜の河(1956) [邦画・ドラマ]

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巨匠・吉村公三監督が、京都を舞台に秘められた大人の恋を描いた、「夜の河」(1956、大映)
原作は沢野久雄、脚本は田中澄江、撮影は宮川一夫。
出演は、山本富士子、上原謙、阿井美千子、川崎敬三、東野英治郎ほか。


京都・堀川で染織業をいとなむ「まるよし」の娘・舟木きわ(山本富士子)は、伝統的な染織のみならず自らも新しいデザインに挑戦する自立した女性。美大生の岡本五郎(川崎敬三)はきわの崇拝者で、才能あふれる彼女を自分のなかで理想化している。女学校時代からの友人・せつ子(阿井美千子)もきわの崇拝者である。
29歳のきわが仕事一筋で結婚しないことを父・由次郎(東野英治郎)は心配しているが、着物業界の現状、つまり、きわの独創的なデザインは評判がよかったが、それでも洋服の勢いにおされて着物離れが進む現状を考えると、きわの存在はありがたかった。

ある日、近江屋(小沢栄)の紹介で店に着物を置くことが決まったきわは、新たな創作意欲にもえて奈良を訪ねる。そして、法隆寺で自らがデザインしたネクタイを結ぶ大阪大学の竹村幸雄(上原謙)たちと出会う。自分の作品をつけてくれる竹村への思いは、その後、竹村がきわの元に同窓会の品物を注文してからますます強いものとなっていく。一方、竹村も美しく凛としたきわの存在を気にし始めるように。

竹村の研究目標、赤いショウジョウバエをつくるということを聞いたきわは、赤いハエをモチーフとしたデザインを手がけ、竹村がその研究報告として東京に行くことから、近江屋に頼み、銀座での着物ショーに参加することを決意する。
東京に行く列車の中で、偶然、竹村と会ったきわは、竹村への思いを強くし、また竹村も、落胆した自分のそばにいて、自分に好意を寄せるきわに対して強い思いを抱くようになる。近江屋は、日頃からきわに下心を抱き、ショーのための東京行きも自分との関係を深めるためだと思っていたにも関わらず、きわがきっぱりと断ったことに対して、逆恨みをもつ。その恨みは、着物業界の寄合の席で爆発した。

うっとうしい気分になっていたきわは、せつ子から竹村が京都に来ていることを知らされ、竹村と再会する。雨に降られて宿に入った竹村ときわは、竹村が岡山に行くという言葉によって離れがたい思いにかられ、関係を持つのだった。

竹村の娘・あつ子(市川和子)とは奈良で会っていたので、娘がいることは知っている。しかし、あつ子から、竹村の妻が生きていて、しかも重い病気のため余命幾ばくかという状況を知り、そして竹村から「もう少しの辛抱だ」と言われたきわは、自分がまるで、竹村の妻の死を願う愛人のようだと思われているようで、たまらない気分になる。

そして訃報が届いた。竹村の妻の死を知らされ、家族の者はきわが後添えになるものだとよろこんでいる。複雑で憂鬱な気持ちがきわを支配する。そんなとき、画家を諦めて故郷に戻る岡本の、自分を崇拝する澄んだまなざしに対して、きわはようやくひとつの決意をするのだった・・・。



オープニングとエンディングにメーデーのようすが描かれているが、それに対するきわの態度の違いは、竹村との恋がどのようなものだったかを如実に物語っています。

山本富士子と上原謙という、共に一時代を気づいた美男美女の組み合わせ。山本演じるヒロインは、伝統的な染織の仕事をしつつ、独自の表現をも試みる自我の強い女性です。これを山本は、京女の華やかさとしたたかさ、そして凛とした女性として見事に表現しています。この作品によって、山本の演技力は開花し、スターとしての名声を名実とも獲得したのであり、山本にとっては記念的な作品といえるでしょう。それは吉村監督の力のおかげといえます。

また、この作品は吉村監督の初のカラー作品です。ヒロインが染織家であることを生かした多彩な色使い、その時々で山本演じる「きわ」と上原演じる「竹村」の関係を予兆させる華やかな花の使い方は、とても斬新で美しい。

東京に向かう列車の中で2人が偶然出会い、2人の心が寄り添いあう瞬間の場面は、まるで川端康成の『雪国』の冒頭シーンのようでした。窓にうつる少女の顔に注がれる視線・・・とても余情的です。一方、竹村の妻の容態が悪いことを知り、それぞれの思いを抱いて海を見下ろす崖の上にたたずむ2人の姿は、列車でのシーンとは正反対の、どこかむなしさを感じてしまいます。

映像も演出も、山本富士子の演技もとてもよかったです。近江屋とその妻のコミカルな関係も、適度に「間」をつくってくれました。

ものすごく好きな作品ですが、ひとつ気になったことが。
作品に対してのものではなく、本当にごくごく個人的に気になったことなのですが、上原謙が、複雑な思い出たたずむ山本富士子に向かって「ね~君ぃ、ど~したの」というセリフは、とっても鳥肌が立ちました。恋人同士の甘い言葉だと理解しているのですが、なよっとしていて、正直、ひいてしまいました。
こんな言葉は、冷静に聞いてはいけないということでしょうね。


夜の河 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2012/11/15
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ウォーターボーイズ(2001) [邦画・ドラマ]

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川越高校水泳部のよる文化祭恒例の“男のシンクロナイズド・スイミング”をモデルとした、男のシンクロ?青春コメディ映画。若手個性派の矢口史靖が監督をつとめる「ウォーターボーイズ」(2001)
出演は、妻夫木聡、玉木宏、三浦哲郁、近藤公園、金子貴俊、平山綾、竹中直人、眞鍋かをり、杉本哲太ほか。

部員が3年生の鈴木(妻夫木聡)ひとりという廃部目前の唯野高校水泳部。試合で最低の成績を残し、根性ナシの鈴木もさすがに落込む。実力があるわけでもなく、練習場であるプールも荒れ放題という水泳部だが、新任の美人女性教師・佐久間(眞鍋かをり)が顧問になることで、男子たちはこぞって入部する。
しかし、生徒にシンクロを教えるのが夢だったという佐久間先生はなんと、男子校で「シンクロをやる」と言い出す。これにはさすがの男子たちもあっという間に逃げていき、逃げ切れなかったのは、鈴木を含め落ちこぼれの5人。文化祭にシンクロの発表すると意気込む佐久間先生だが、しかし練習が始まるや否や、妊娠8ヶ月であることが発覚して産休に入ってしまった。

残された鈴木たちは、1度はシンクロを諦めるが「根性ナシ」のレッテルを挽回しようと、文化祭当日にゲリラ(不祥事を起こしてプールは使用禁止になっていた)でシンクロ発表しようと計画。
イルカの調教師・磯村(竹中直人)に教えてもらおうと、夏休みの間、水族館で合宿することに。5人は次第に団結力を強め、知らぬ間に実力をつけていった。夏休み最後の日に、海で練習しているところを溺れていると誤解した住民による通報・撮影によって、唯野高校文化祭に予定されている水泳部のシンクロ発表がニュースに流れてしまう。そのニュースを見て、はじめは逃げ出した男子たちも注目されたい下心から参加する。

そして、文化祭前日。高校最後の思い出に燃える彼らだが、その夜に起こった高校内の火事でプールの水が使われてしまい、プールには水がなくなってしまった。このままではシンクロはできない・・・。



最後のシンクロ発表シーンは、高校時代の“青春”を思い起こさせ、スポ根ものというよりも、単なる青春コメディ映画として楽しめる作品です。

中心となった落ちこぼれ5人組、鈴木役の妻夫木聡、佐藤役の玉木宏、太田役の三浦哲郁、金沢役の近藤公園、早乙女役の金子貴俊は、比較的薄っぺらなキャラ設定においては、個性的でよかったです。特に、個人的に金子貴俊はよかったですね。ああいうカマキャラは好きだし、役と実物のギャップなどが楽しめる点で、今後に期待したい俳優です。
竹中直人や、杉田先生役の杉本哲太、オカマバーのママ役の柄本明などは、個々人のキャラが強いし、さすがに存在感がありますね。若手陣の薄っぺらさをカバーするという感じで、個性派俳優の彼らが脇を固めているから、この映画は「映画」として成り立っていると思います。

逆に魅力的ではなかったのが女優陣。
恋愛要素を提供してくれる静子役の平山綾は、雰囲気はいいけれど、それだけという感じ。それでも好意的に見るとしたら、今後の成長を気長に観察するしかないという感じですね。そしてもうひとり、眞鍋かをりですが、他の若手陣の薄っぺらさにしっかりとマッチした薄っぺらなキャラとしてはいいですが、映画には不向きな素材かもしれません。
このふたり、どっちがどっち、ということは言えませんね、残念ながら。

ニュース番組で、モデルになった川越高校の特集を見たのですが、さすがにオリジナルの方が“青春”が感じられて、感動します。フィクションである映画の方が感動が薄いというのは、単純に演出・脚本の問題だと思うのですが、あまり深入りしない描き方は、確かに、矢口史靖らしいともいえます。

ということは、監督の性格を考えると、正直、中途半端な映画ということになりますね。熱くもなりきれず、冷たくもなりきれず、中身が薄っぺらい・・・というやつです。
川越高校というモデルがあったのが逆効果だったのか、ストーリー性抜群のオリジナル(川越高校)に引きずられているようで、個人的に成功だなと思える最後のシーンは、オリジナルあっての感動!ですね。

カラッと乾いているようで、乾ききっていないと言うか・・・、感動に浸りこめるものでもないというか。矢口史靖作品を楽しむということでは成功していると思いますし、娯楽映画としてはいいと思いますが、う~む・・・。
同じような作品としては、「櫻の園」(1990)がありますが、両者を見比べてみるのも楽しいかもしれません。


ウォーターボーイズ (通常版) [DVD]

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藏(1995) [邦画・ドラマ]

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戦前の信州(新潟県)を舞台に、大地主の娘・烈が夜盲症という障害を抱えながら家業の酒造りに生きがいを見出し、愛を見つける、という、宮尾登美子の同名小説の映画化、「藏」(1995)
東映=松プロダクション製作。
監督は降旗康男。
出演は松方弘樹、浅野ゆう子、一色紗英、西島秀俊、蟹江敬三、夏川結衣、黒木瞳、加藤治子、朝丘雪路。


大正9年、大地主で酒造業を営む田乃内家に、女児が誕生した。名前は、烈。8人の子を死産等で亡くしていたこともあり、9人目の子には、力強く生き抜いてほしいという意造(松方弘樹)の気持ちが込められていた。

田乃内家には、烈の母であり病気がちな賀穂(黒木瞳)の妹・佐穂(浅野ゆう子)がいて、烈の世話などをしていた。
大正15年、就学を目前とした烈が夜盲症という病気となり、医師より、まもなく失明すると宣告されていた。意造の母(加藤治子)は病気平癒の観音詣でに向かうが体の不調から戻り、賀穂は義母の意志を継ぎ、佐穂に烈のことを頼むと観音詣でに行くが、途中に息絶える。
意造が若い芸者・関(夏川結衣)を後妻に迎えることになり、佐穂は実家に戻るが、烈の懇願で田乃内家に戻る。以来、佐穂は田乃内家にはなくてはならぬ存在となる。烈に縁談が持ち込まれるが、関の生んだ息子が不注意で亡った日に、烈(一色紗英)はとうとう失明し、それを理由に縁談を断る。

意造は体を壊し、酒造業をやめることを決意するが、烈は、田乃内家には「蔵」が大切だと主張し、自分が意造の代わりに酒造業を営むことを宣言する。その熱意に負けて意造も烈を応援するが、烈は、蔵人の涼太(西島秀俊)に心惹かれて、関の不倫の相手が涼太ではないかと疑う。

蔵元である烈は、蔵人である涼太にとって自分の言動がどのような影響をもたらすのか考えていなかった。意造は、そんな烈の未熟さを責め、烈は涼太の許しを得るため、そして自分の気持ちを伝えるために野積に向かう。吹雪の中で倒れた烈を救い野積へと導いてくれたのは、烈をずっと見守ってくれていた母・賀穂だった。



さすが映画だけあって、翌年放映されたドラマよりも、1つの作品として断然楽しめる!
田乃内の屋敷の他2つくらい、重要文化財に指定されている屋敷で、見応えあります。役者も、ドラマとは比べ物にならないくらい、いい! 魅力全開ってやつです。
最初、浅野ゆう子はミスキャストではと思っていたけれど、松方弘樹とのバランスは思ったよりもよかった。
涼太役の西島秀俊は、テレビ版の前田耕陽と比べてイイ男なので、見ていて清々しいって感じで。
関役の夏川結衣は、個人的に好きだってこともあるけれど、テレビ版の洞口依子があまりにも・・・なので、その良さが際立っている。贔屓目でなくて、夏川結衣はいい役者だと思いますよ。
朝丘雪路も、芸者のおかあさんって感じの上品さがある。
烈役の一色紗英は、代役ながらもけなげに演じていたけれど、やはり、当初決まっていた宮沢りえの方がよかったかも、と思う。最後の高島田に結ってもらった一色紗英は、ちょっと見るにたえないっていうか、・・・トータル的に、他の役者とのバランスを考えると、宮沢りえの方が適役。まー、いろいろあったので降板したわけだけど、惜しいなぁ。烈の子役の小井紗陽のかわいらしさが、印象的です。佐穂を追いかけていくシーンは、ちょっぴり涙ものですなぁ~。

テレビ版にも書いたけれど、内容的には日本人の感性にしっくりきて、安心して見ていられるものじゃないでしょうか。映画なので、内容もきれいにまとまっているし。スケールも大きくて、注目の衣装も満足できる。烈が失明した後、意造と佐穂との3人のシーンがあるけれど、その時の烈と佐穂の衣装は、夏らしくてよかった。難を言えば、野積に向かう途中に、明らかに合成と見られるチープな映像が挿入されていたところかな。
宮尾作品はよく映画化されるが、この作品は成功例に入るのではないでしょうか。


藏 [DVD]

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貴族の階段(1959) [邦画・ドラマ]

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新藤兼人が脚本を担当した「貴族の階段」(1959)
監督は吉村公三郎。
出演は叶順子、金田一敦子、本郷功次郎、菅原謙二、仁木多鶴子、志村喬。


226事件を背景に、襲撃された公爵・西の丸家を舞台にした武田泰淳の同名小説の映画化。
お父さまと軍人の密談を隠し部屋でこっそりメモるというスリリングな役割をしている17歳の娘・氷見子を主人公に、軍人の娘で学習院の同級生である美人の節子と、お父さま、そして軍人になったお兄さま・義人をめぐっての人間関係を、226事件をからめて描いている。

清純で美しい節子と、いかにも華族の坊ちゃん然としたおっとりしたお父さまが、とにかく見所!
226事件と、節子とお父さまの事件を通じて、天真爛漫なお姫様・氷見子の微妙な心の変化もいいけど、凛としたところが不足がちなので、ついつい、ビジュアル的に目を惹く節子の美しさに関心がいってしまう。
とはいえ、節子もなかなか波乱万丈でいい味出してます。お父さまが好き心を出して節子を手ごめにしてしまい、義人と相思相愛なのに結ばれることがかなわなくってしまった節子の苦悩なんて、本当、「これぞメロドラマ!」て感じで、いいですよ。

こういう映画をきっかけにして、原作やら226事件に関心を持てるのは、いいことだと思いますね。


タグ:貴族の階段
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