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下町ロケット(2015)第10話(最終話) [ドラマ(日本)下町ロケット]

下町ロケット10.jpg


「下町ロケット」ガウディ編も、いよいよファイナルです。
いろいろな問題がここでいっきに回収されます。
スカッとする部分は、少し抑え目かもしれません。ロケット編よりも回収する案件が多くて、最後にたたみかけるように処理したせいか、スカッとする部分に時間が割けなかった模様です。

とはいえ、企業のありかたとして、見事に善悪のコントラストがありました。

善=部下の責任は、すべて上司がとる
悪=上司の責任は、部下になすりつける

帝国重工の財前もそうですが、週刊ポストの編集長も、そのあたり、なかなか良いポジションでした。
このわかりやすさが、池井戸潤の特徴なのかもしれません。



【ストーリー】

Pmeaの面談をパスし、大型動物での実験に着手した新型人工弁“ガウディ”。
順調な進捗具合に喜ぶ航平だったが、同時にガウディの完成を待つ聖人(庵原匠悟)の容態が芳しくないと一村(今田耕司)から報告を受け、一刻も早くガウディの臨床治験を目指さなければならない状況でもあった。
同時に、航平がコアハートの治験患者死亡の件を調べていることを知った一村からは、ガウディと同様にコアハートも自分にとって大切なものであるため、コアハートが正しく使われるよう真実を突き止めてほしいと頼まれるのだった。

航平は、山崎とともに、出勤時をねらって中里(高橋光臣)を待ち伏せていた。
中里は、航平と山崎から治験患者が死んだこと、そして、コアハートのバルブに問題はなかったかと聞かれるが、問題はないと答える。逃げるようにその場から去ろうとする中里は、航平は、佃製作所で見つけられなかった夢を、サヤマ製作所で見つけられたか、と聞かれ、重要な仕事を任されて充実していると答える。

航平「それならいいが。
    だがな、中里、世の中や社会に迷惑をかけないようにしろ。
    おまえは今、技術者として胸張ってられるか?
    まもなく臨床治験が再開される。
    また人が死ぬぞ」


そのことばに、中里は、自分が山崎の設計図を盗んだことを航平が知っていると気づき、動揺する。
会社に着いた中里を待っていたのは、椎名だった。開発のめどが立っていないことを知り、椎名は苛立ちを中里にぶつける。そして、1週間のうちに開発ができなかったら、そのときは技術者として生きていけないようにしてやると言うのだった。
椎名から、ほぼ見限られたことを知った中里は、横田が指摘したコアハートの部品の不具合のことを考え、そして、航平に言われた「おまえは今、技術者として胸張ってられるか?」ということばを思い出していた。コアハートの耐久性に疑念を募らす中里は、現行バルブの実験記録を参考にしたいと、データを管理するマネージャーの月島(福田転球)に見せてくれるよう頼み込む。
月島は、一瞬、躊躇するが、中里がバルブを完成させなければそれが一番の問題であることもわかっているので、ワンタイムパスワードを教える。

コアハート用バタフライバルブのデータにアクセスした中里は、そのデータが完璧に近い数値であることに、バルブには問題はなかったと結論付けるとともに、治験患者の死は事故死だったと安心するのだった。
その隣で、データを食い入るように見つめる横田(バカリズム)に、問題はないと納得したらPCを終了させておくようにと伝え、中里は食事のためにその場を離れる。残った横田は、その数値を見ながら、その完璧すぎる数値に疑いを持つのだった。


咲間より、コアハート用バタフライバルブの実験データが航平たちに渡される。
データの提供元に関しては秘密であると咲間は言うが、山崎は、型式「SSV-0098」の表記から、これがサヤマのデータであることに気づく。つまり、この実験データはサヤマの内通者からのものだった。
データはほぼ完璧の数値を示していた。やはりNASA品質であると驚く、山崎だったが、航平はそのデータが不自然に「きれい」であることに疑問を持つ。つまり、データ偽装の可能性が浮上したのだった。


日本クラインの藤堂は、協力すると見せかけ、咲間から情報を入手していた。
その情報の中から、サヤマ製作所によるコアハート用バタフライバルブの実験データがあった。
椎名に見せて、サヤマ製作所のものであると確認した久坂と藤堂は、表情を曇らせる。このようなデータが流出すれば、なにかあったときに難癖をつけられる可能性があり、危機的な状況であった。
ただ、貴船は、データに問題がなければ、さほど目くじらを立てる必要もないと言う。
そのことばに、椎名の目に剣呑な光がともるのだった。


椎名は、すぐさま、月島にデータ流出原因を突き止めるよう指示する。
月島は中里のPCからデータがダウンロードされていることとを追及する。その場は取り繕った中里であったが、横田に確認すると、データをダウンロードし、咲間にデータを渡したのは、横田であった。

横田もまた、データがそろいすぎており、データ偽装が行われた可能性があることに気づいていた。
横田によると、確証はないが、あのバルブを作るには高度な技術を要し、開発を行っていたときも0.1%の割合で不良が出ていた。それを、月島がほんのわずかな期間で精度を高めることができたかは甚だ疑問であるという。そして、もし、月島も動作保証90日をクリアしていないとするならば、今、中里が携わっている開発は、現行バルブとすり替え、データ偽装を隠蔽するためのものであると横田は指摘する。つまり、中里には現在、動作保証180日という目標が設定されているが、本当は、90日で十分であり、データ偽装の隠蔽のために開発というのだ。
中里は、臨床治験で使用されたバルブは、90日の動作保証もなされていない不良品であったこと知り、自分が設計図を盗み出したことで、治験患者を死なせてしまった事実におののくのだった。
横田がデータを咲間に流したのは、その推測の元、第三者の機関によってデータの真偽を見極めてもらうためだった。

横田「俺はここ辞めるよ。
    もし、データ偽装が俺の思いすごしなら、
    俺は会社を裏切ったことになるし
    もし、事実なら、この会社はクソ以下だ」


そして、横田は、佃製作所がデータを検証することを中里に伝えるのだった。



佃製作所での検証では、確かに、サヤマ製作所のデータがおかしいことが判明した。
ただ、一部、確証を得られない部分があり、他の企業でも同様だった。高速耐久実験装置でもあれば、という山崎のことばに、航平は、帝国重工にある装置を使わせてもらうことを思いつく。

さっそく、航平と咲間は財前を訪ね、データ偽装を証明するためには、帝国重工の高速耐久実験装置が必要であることを説明する。
航平は、自分の思いすごしになるかもしれないが、しかし、技術者としてこの疑念をそのままにしておくことはできない、これは人の命が関わっている問題なのだと財前に頼みこむ。
財前は快諾する。
航平は、さっそく佃製作所に電話して、必要なものを用意するよう指示する。
航平が電話で席を立っている間、咲間は、財前にお礼を言うとともに、今まで、このような事態に対して大企業が協力してくれたことはないことを伝える。それに対し、財前もまた、現在、帝国重工のバルブシステムを共同開発しているサヤマ製作所がデータ偽装をしているとなれば、帝国重工としても問題だと答える。

財前「それに、彼のことを信頼しています。
    彼とは、一緒にロケットを打ち上げた同士ですから」


航平を見ながら、財前は力強く言うのだった。



帝国重工からの帰り、咲間は航平に、なぜここまで協力してくれるのかと尋ねる。
航平は、その理由として、最初に試作品開発を頼まれたのが佃製作所であり、日本クラインからの横暴な応対に開発の件を突っぱねていなければ、治験患者を死なせずに済んだかもしれないからと言う。そして、サヤマ製作所にロケット打ち上げの夢を奪われたからとも話す。航平にとってロケットのバルブシステムの供給は、自分の夢であり、重要なものだったのだ。


航平は、利菜が、帝国重工を第一志望にしていることに、若干、ふしぎな感覚を受けていた。
1次は通過し、次は面接だという。
帝国重工の第2次面接試験に臨む利菜は、自分が航平の娘であり、帝国重工との取引のために航平が送り込んできたのでは、どうせ水原本部長が落とすに違いない、などと面接官が陰口を言っていることを知り、気持ちを奮い立たせる。そして、自分が帝国重工に入りたいと思ったのは、3年前のロケット打ち上げで泣いている父たちの姿を見たからだと言う。大のおとなが涙を流せるような仕事とは何か、父は自分の目標とする技術者であると利菜は面接官に語る。



財前は、装置の扱いに慣れている富山に、高速耐久実験装置での実験を頼んでいた。
しかし、富山はサヤマ製作所に赴き、設備面においても技術面においても信頼できる会社であり、データの偽装なんてあるわけがないと、財前の申し出を断る。

その後、富山は、石坂ととも椎名と会っていた。
石坂は椎名に、帝国重工としてはコアハートへの支援は難しそうだと伝える。それに対し、開発への支援ではなく、共同出資で子会社を設立し、海外セールスの窓口として帝国重工の看板がほしいのだという椎名の申し出に、石坂は喜々とした表情を浮かべる。
富山は、椎名にコアハートのバルブの素材を変えることを提案するが、石坂は、共同開発をする気はないから技術的な話をする必要はない、と富山を叱責する。

石坂「すみませんね。
    椎名社長と違って、うちの技術屋は空気が読めなくて」


石坂のことばに、技術者としての自負を持っている富山は、プライドを傷つけられる。そして、石坂が椎名から賄賂(現金)を受け取っているところを目撃したことで、富山の技術者としてのプライドが、事態の軌道修正に向かわせた。
会社に戻った富山は、財前が高速耐久実験装置の前で奮闘している姿を見て、その実験の続きを引き受けるのだった。




財前は、実験データを航平と山崎、咲間に渡す。
やはり、データ偽装が行われていた。
この結果を、週明けの週刊ポストに掲載すると咲間は言う。世論が動けば厚労省を含め各機関もコアハートを問題視するだろうということだった。しかし、椎名個人にかんしては、「知らない」としらをきられたら追及はできないという。椎名自身がかかわっていたという証拠が必要であるが、とにかく今はできることの最善を尽くそうと、航平は言う。



佃製作所が、帝国重工の実験装置をつかって、サヤマ製作所のデータを検証していることを聞いた椎名は、月島にデータの消去を命ずる。
心配する月島に、椎名は、中里の設計図を日本クラインに持ち込んだのは月島であり、なにか問題が起こったら、月島に罪をなすりつけるつもりであることを告げる。月島は自分を守るため、データを消去するのだった。
その現場を、中里が見ていた。
中里は「証拠隠滅ですか」と、月島に迫る。かつて、月島も、結果を出せない無能な社員は要らないと中里に言っていたが、今、すべての責任を背負わされ切り捨てられるのは月島ではないのか、と中里は言う。月島は、動揺する。

中里「そうなる前に、本当のことを教えてください。
    私はこの会社になんのために呼ばれて、何を作らされているんですか。
    答えろ!」


月島の顔が、動揺でひきつった。




椎名は、17年前のことを思い出していた。
旧サヤマ製作所では、父の椎名直久が精力的に仕事をしていた。
椎名に「オールAを取ったか?」と学校の成績を聞き、トップクラスではなくトップをねらえ、と言う父の姿は誇らしいものだった。
しかし、その父が急死する。2年前から業績が悪化していたが、必ず立て直してやると、心臓が悪いのに無理をして毎日営業に回っていたという。許せないのは、債権を回収しよう躍起になった大企業たちで、父が亡くなると、サヤマ製作所が持っていた特許や機材を根こそぎ取り上げ、椎名にはなにも残されなかった。
父が受けた屈辱を思いながら、椎名は、貴船に連絡を取るのだった。


咲間は、編集長から特集記事の掲載中止を通告される。
週刊ポストと咲間、そして佃製作所に対して、サヤマ製作所とアジア医大が、信用棄損と業務妨害で訴えてきたのだ。損害賠償額は10億円。
編集長は、週刊ポストとしては、このようなことは日常茶飯事なので問題はないが、今回は、佃製作所を巻き込むことになる。そしてアジア医大が相手となると、厚労省ともやり合うことになりかねず、100%勝てる見込みがなければ、記事を掲載することはできないと言うのだった。
協力してくれた航平のことを思い、咲間は黙り込むのだった。


サヤマ製作所とアジア医大から警告書が来たことを知り、航平は椎名のもとに乗り込もうとしていた。
頭に血がのぼっている航平を、殿村は必死に止める。

殿村「社長、あなたはうちの大将なんだ。
    もっとどーんと構えなさい。
    あなたはあなたの信じた道を行けばいい。
    その編集長に、うちはどうなってもいいから
    記事を出してくれと言えばいいんです。
    もしそのせいで会社が窮地に追い込まれても、元銀行員の私がいる。
    たとえどんなことが起きようと、絶対この会社は潰しません。
    だから、あなたが今行く場所は、椎名のところじゃない。
    週刊ポストの編集室だ」



殿村の覚悟に、航平は自分がすべきことを思い出すのだった。
その航平の元に、中里が訪ねてきた。


中里は、自分が、山崎の設計を椎名に渡し、そのせいでコアハートの治験患者が死んでしまったと涙ながらに言う。
そして、どうしていいのかわからなくなり、気がついたら、佃製作所に来ていたという。

航平「まず、顔を上げろ。
    下を向いてても、やってしまったことはもう戻らない。
    何も変わらない。
    とにかく顔を上げて、まっすぐ前を見ろ。
    つらかっただろ。
    よく正直に話してくれた」

山崎「よく逃げなかったな。見直したぞ」

中里「やめてください。私が悪いんです。全部私が・・・」

航平「確かにおまえは間違いを犯した。
    でもな、誰だって間違えることはあるんだ。
    大切なのは、これからどうするかだ。
    それに、本当に責任を取らなきゃならないやつは、他にいるんだろ。
    俺はそいつを絶対に許さない。
    おまえの敵は俺がとってやる



航平は、週刊ポストの編集室に行き、編集長と咲間に、記事を掲載するよう伝える。

航平「編集長、咲間さん。
    手前どものことはどうぞお気づかいなく、
    思う存分書いてください。
    最初からそのくらいの覚悟はできています。
    大丈夫です。うちには優秀な弁護士と大番頭がいますから。
    それに治験で亡くなった患者さんのためにも、
    ここで引き下がるわけにはいかないでしょ。
    受けて立ちましょうよ。正義は我にあり、です」

咲間「わかりました。では遠慮なく書かせていただきます」

編集長「本気か?」

咲間「編集長、正しいことを声にできなくなったら、
    私たちは何のためにいるんですか?
    訴訟が怖くてジャーナリストなんてやってられません」

編集長「わかった。好きにしろ。ケツは俺が持つ」

咲間「ありがとうございます」

航平「私も同じ技術者として、
    これ以上、椎名の間違いを許すわけにはいきません。
    これは技術者としてのプライドをかけた戦いなんです」




第4次スターダスト計画最終連絡会議が、帝国重工で行なわれていた。
藤間社長をはじめ、役員の前で、石坂によってサヤマ製作所との共同開発の正式決定についての確認が行われていた。
そのとき、財前が急に会議室に入ってきた。
どうしても本日中に決済してほしい事案が発生したため、クビを覚悟でやってきたという。

財前は、性能面でサヤマ製作所を上回る佃製作所のバルブを採用することを藤間に進言する。確かに、サヤマ製作所との共同開発は、性能面での差を補って余りあるものであるが、それは、サヤマ製作所との信頼関係があってこそであり、そこに疑義が生じれば、そもそもスターダスト計画は成立しないと言う。
それに対し、石坂は、佃製作所との癒着があるのでは、と詰め寄る。

石坂「私はね、帝国重工の将来の社益を考えて、
    サヤマ製バルブを採用すべきだと言っているんだよ。
    その考えに異論があるのなら、言ってみろ」

財前「社益・・・ね。
    これを見てもまだそんなことが言えるのかな、あなたは」

藤間「なんだそれは。見せろ」


明日発売の週刊ポストのゲラに書かれていたのは、世界最小最軽量人工心臓コアハートの実験データ偽装疑惑を告発した記事だった。
その記事が出る前に、なんとしてもサヤマ製作所との取引を見直す必要があったため、こうして無礼を承知で会議に乗り込んだのだと財前は語る。

財前「その記事が事実であれば、
    サヤマ製作所は、わが社のコンプライアンス規範に多いに反します。
    それだけではありません。
    すでに納品されたロケットバルブに関しても、
    データ偽装を疑わざるをえません。
    今回の事態を受け、開発グループとしては決定を白紙に戻し、
    従来通り、佃製作所製バルブの搭載を目指したいと思います。
    よろしいでしょうか」

石坂「たかが週刊誌の記事だぞ。
    直接確認もせずにこんなものを信じて、判断を変えろというのか。
    もし何もなかったら、わが社のバルブシステムは、
    何年も遅れるかもしれないんだぞ。
    それでよろしいんでしょうかね、みなさん」

財前「石坂部長、先ほど私と佃の癒着をお疑いのようでしたが、
    あなたのほうこそ、ずいぶんとサヤマ製作所に肩入れなさっているようだ。
    あなたが椎名社長から多額のリベートを受け取ったという情報も
    私のところには届いておりますが」


ざわめく役員たち。
石坂は、その情報が財前の部下からのものだと知り、富山が裏切ったことを知る。「あの裏切り者が」とつぶやく石坂に、石坂こそ、リベートを受け取って会社を裏切っていると財前は追及する。

藤間の目が鋭く石坂を見た。
そのようすに気づいた水原は、石坂を事実を尋ねる。

石坂「とんでもございません。
    私はこのスターダスト計画を成功させるためだけに、
    すべてを捧げてまいりました。
    こんな小さな問題のためにスケジュールを遅らせるようなことがあっては
    絶対になりません」

藤間「小さな問題か」

水原「社長の懸念される通りです。
    仮に不正が真実ならば、サヤマ製作所は存続に危機に立たされる。
    バルブの共同開発など問題外だ。
    これはわが社にとって重大なことかと」

石坂「小さな問題ということばに語弊があったことは認めます。
    しかしながら、考えるべきことはいたってシンプルなんです。
    こんな週刊誌の与太記事と、NASA出身の椎名社長と、
    いったいどちらを信じるかということなんですよ」

財前「それは違う。
    これは単純にどちらを信じるかという比較の問題ではありません。
    リスクテイクの問題です。
    このままプロジェクトを進めても、
    万が一、サヤマ製作所のデータ偽装が真実であると証明された場合、
    わが社の受ける損害は計り知れない。
    スターダスト計画は崩壊します。
    その責任があなたに取れるのかな?

    今ならまだ方向転換ができます。
    我々には佃製作所がある。
    彼らの技術力はいまだ世界最高峰。健在です」

藤間「サヤマ製作所とは、白黒がはっきりつくまで、
    共同開発をはじめ、当社のすべての取引を即刻凍結する」

水原「承知いたしました」

石坂「お待ちください」

藤間「石坂、サヤマに問題はないと言ったな。
    ロケットは、金や技術があれば打ち上がるというような、
    そんな簡単なものではない。
    開発に携わる者は少しのミスも許されない極限状態の中で、
    完璧に仕事をこなし、互いに2重3重のチェックをし合い、
    その上で信頼を高めていかねばならん。

    サヤマの問題に気付けなかったのは、君の責任だ。
    石坂。君はいったい何を見てきたんだ。
    ロケットをなめるな!

    わが社は佃製作所のバルブシステムを採用する。
    石坂。君の処分については追って伝える。
    あとは任せたぞ、財前。打ち上げスケジュールは絶対に守れ」


敗北感で、石坂は、テーブルに手をつき、うなだれるのだった。




航平は、サヤマ製作所を訪れ、明日発売の週刊ポストの記事を椎名に見せる。
椎名は、この記事は捏造であるし、サヤマ製作所から盗み出したデータを検証したところでその信憑性が疑われると言う。航平の「数字はうそはつかない」ということばに対しても、60%の確率をどう思うかと逆に問いかける。つまり、10人中、4人は死ぬかもしれないが、6人は生きる可能性について、助かる可能性をすべて潰すつもりかと、コアハートの開発を妨害するのはそれと同じというのだった。
航平は、6人を助けるために4人を犠牲することが正しいのかどうかは自分には判断できないが、治験患者は確率のことなど考えているのではなく、技術者も100%を目指してがんばっているのだと答える。

航平「にも関わらず、自分の私利私欲のために、
    開発する努力を放棄して、データ偽装するなんて、言語道断だ。
    どんな理由があろうとも絶対にやってはならない、
    越えてはならない一線だ」


椎名が言っているのは、詭弁だと航平は断罪する。
椎名に人の命を語る資格はなく、また椎名が一度犯したデータ偽装によって、技術者の信頼をも失わせたのだ、と。これでコアハートの開発は当然ゼロからのスタートになるのであり、認可直前だったコアハートを待ち望んでいた患者を裏切る、マイナス100%の結果だと言うのだった。

航平とは価値観が違うし、こんな記事が出ても痛くも痒くもないという椎名に、椎名の父が今のサヤマ製作所を見ればどう思うか、と航平は続ける。
業績が悪化しても従業員をクビにすることができなかった父とは違い、すべてを部下のせいにして逃げようとする椎名を責める航平だが、椎名は、父は負け犬で、父が残したものなど必要なく、自分は、自分の力で一流の設備と人材を集めたと反論する。
社員のやりがいとプライドで支えられている佃製作所と、社員を便利な持ち駒のように利用して捨てるサヤマ製作所との差が明確となった。

確かな証拠を持って来いと言う椎名に、航平は、すべて椎名の指示であったことを告白する月島の会話を聞かせる。
月島の裏切りに愕然とする、椎名。
月島に証言させたのは、椎名が無能と言い放った中里であることを航平は伝える。
この告発の音声は、明日の週刊ポストの発売と同時に、警察に提出されることになっていた。もう、椎名はおしまいだと、航平は言い放つのだった。


去りながら、航平は振り返る。
椅子に座り、うなだれる椎名に向かって、夢はあるのか、と聞く。航平は、ロケットに携わりたいと思った時からNASAで働きたいと思っていたが、日本での生活を捨ててアメリカに行くことはできなかったといい、だからこそ、椎名に嫉妬していた部分もあったと告白する。
それに対し、椎名は、アメリカに行ったのは、大企業に家も会社も父も奪われ、天涯孤独となって、泥水をすするような地獄から這い上がるためだったという。大企業を見返すために、実力主義のアメリカに渡り、NASAの看板を得ると、日本の企業はおもしろいようにすり寄ってきたという。自分の夢は、そんな大企業のトップになることであり、そのために佃製作所は邪魔だ、自分は必ずもう一度這い上がって見せると椎名は語る。

父のような負け犬にはなりたくないと再三語る椎名に、椎名の父が開発したRM-062264の特許が、次のロケットのキーパーツとして採用されることが決まったことを航平は伝える。椎名の父の開発が最先端技術として認められたのであり、たとえ特許を大企業に取られたとしても、その技術は継承されていく。これこそが、後世に残る技術というものだと航平は語るのだった。



翌日、週刊ポストが発売されると、日本クラインとサヤマ製作所には連日のように報道陣が詰めかけた。
アジア医大の貴船のところにも調査が入り、その数日後、椎名は業務上過失致死で逮捕された。
久坂と藤堂は、貴船に謝罪して「なんとかする」「時間をくれ」というが、貴船は、医者の世界では失敗したら人が死ぬんだと突っぱねる。なんとかするというのであれば、死んだ治験患者を生き返らせろとふたりを追い出すのだった。

日本クラインに戻った久坂は、その貴船のようすに、もうダメだとつぶやく。しかし、藤堂は、コアハートの開発には莫大な資金を投入しているため、貴船にはお飾りでもいてもらわないと、と訴える。
そして、どうすれば良いのかと、中川弁護士にアドバイスを求める藤堂。
中川は、道義的責任は認めつつも、自分たちも不良品を納品された被害者として決着させる、と言う。ただ、問題は、サヤマ製作所以外のどこにバルブを作らせるか、と中川は続ける。
藤堂は、それならば佃製作所に頼めばいいという。久坂は、過去のやりとりから佃製作所が引き受けるわけはないと言うが、藤堂は、どうせ中小企業なのだから鼻先に餌をぶらさげればいいだけだと軽く答えるのだった。
その藤堂のことばに、中川は佃製作所がかかわるのであれば、自分は手を引くと言って出ていく。

中川「佃をなめると痛い目にあいますよ」




後日、佃製作所を訪ね、バルブの製作を依頼する久坂と藤堂に対し、航平は、この設計図は誰が書いたのかと尋ねる。かつて、佃製作所にいた従業員がサヤマ製作所に設計図を流出させたこと、その設計図がこれであるとことばを続ける。

藤堂「なにをバカなことを。
    そんな作り話までして自社の権利を主張したいのか。
    部長、やはり他の会社をあたりましょう」

航平「そうされるのならどうぞご自由に。
    ただし、その設計図でのバルブの製造はやめていただきたい」

藤堂「ふざけるな!
    そもそもこれが、おたくの設計図だという証拠はどこにある!」

神谷「ありますよ」


神谷弁護士により、3年前に認可されたバタフライバルブの基本特許が提示される。帝国重工のロケットにも搭載された技術でもあり、コアハートのバルブはこの基本特許を侵害しているという。また、佃製作所側は、日本クラインに特許の実施を認めておらず、すでに試作品が製造されている事実に対して、その製造中止を求めると神谷から説明がなされた。

航平「その傲慢な意識が、基本特許の侵害を見逃すなどという、
    杜撰な結果を招いたんだ。
    あんたたちのような人間に、人の命にかかわる技術を扱う資格などない」




帝国重工では、財前から航平に対して、佃製作所製バルブシステムの納品時期が確認されていた。
また、午前中の取締役会議でガウディ計画への正式な支援も決定したという。
お礼を言う、航平。
ロケットでは、自分の夢をかなえることができたので、だからガウディでは誰かの夢を応援したかったのだ、という航平に対して、財前は、その航平を応援したい、と力強く言い、ガウディの開発を応援するのだった。


佃製作所では、みんなが不眠不休でガウディの開発を行っていた。
航平のアイデアで、弁にカーブを付けることで飛躍的に性能がよくなり、最後の血栓発生テストでは、0.00005%という、基準値クリアをはるかにこえ、そして人体への発生標準値よりも低いという驚異のデータをたたき出したのだった。

その1ヶ月後、初の臨床治験が実施された。
治験患者は、ガウディをもっとも必要していた中島聖人が選ばれ、その手術も無事成功し、臨床治験はその後、順調に重ねられた。



その3年後、種子島宇宙センターでは、新たなロケット打ち上げが行われていた。
固唾をのんで見守る佃製作所の面々、そしてJAXAの沙耶、帝国重工の利菜の祈りが通じ、無事衛星が分離された。
喜びを分かち合う航平たちの元に、椎名がやってくる。
自分が開発した新型バルブを取り出し、今、打ち上げられたロケットに搭載された佃製バルブよりも、調圧信頼性、耐久性ともに30%上回るという。
椎名の復活に目をみはるとともに、闘志を燃やす航平だった。






「下町ロケット」概要
第1話 | 第2話 | 第3話 | 第4話
第5話 | 第6話 | 第7話 | 第8話
第9話 | 第10話(最終話)



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