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下町ロケット(2015)第10話(最終話) [ドラマ(日本)下町ロケット]

下町ロケット10.jpg


「下町ロケット」ガウディ編も、いよいよファイナルです。
いろいろな問題がここでいっきに回収されます。
スカッとする部分は、少し抑え目かもしれません。ロケット編よりも回収する案件が多くて、最後にたたみかけるように処理したせいか、スカッとする部分に時間が割けなかった模様です。

とはいえ、企業のありかたとして、見事に善悪のコントラストがありました。

善=部下の責任は、すべて上司がとる
悪=上司の責任は、部下になすりつける

帝国重工の財前もそうですが、週刊ポストの編集長も、そのあたり、なかなか良いポジションでした。
このわかりやすさが、池井戸潤の特徴なのかもしれません。



【ストーリー】

Pmeaの面談をパスし、大型動物での実験に着手した新型人工弁“ガウディ”。
順調な進捗具合に喜ぶ航平だったが、同時にガウディの完成を待つ聖人(庵原匠悟)の容態が芳しくないと一村(今田耕司)から報告を受け、一刻も早くガウディの臨床治験を目指さなければならない状況でもあった。
同時に、航平がコアハートの治験患者死亡の件を調べていることを知った一村からは、ガウディと同様にコアハートも自分にとって大切なものであるため、コアハートが正しく使われるよう真実を突き止めてほしいと頼まれるのだった。

航平は、山崎とともに、出勤時をねらって中里(高橋光臣)を待ち伏せていた。
中里は、航平と山崎から治験患者が死んだこと、そして、コアハートのバルブに問題はなかったかと聞かれるが、問題はないと答える。逃げるようにその場から去ろうとする中里は、航平は、佃製作所で見つけられなかった夢を、サヤマ製作所で見つけられたか、と聞かれ、重要な仕事を任されて充実していると答える。

航平「それならいいが。
    だがな、中里、世の中や社会に迷惑をかけないようにしろ。
    おまえは今、技術者として胸張ってられるか?
    まもなく臨床治験が再開される。
    また人が死ぬぞ」


そのことばに、中里は、自分が山崎の設計図を盗んだことを航平が知っていると気づき、動揺する。
会社に着いた中里を待っていたのは、椎名だった。開発のめどが立っていないことを知り、椎名は苛立ちを中里にぶつける。そして、1週間のうちに開発ができなかったら、そのときは技術者として生きていけないようにしてやると言うのだった。
椎名から、ほぼ見限られたことを知った中里は、横田が指摘したコアハートの部品の不具合のことを考え、そして、航平に言われた「おまえは今、技術者として胸張ってられるか?」ということばを思い出していた。コアハートの耐久性に疑念を募らす中里は、現行バルブの実験記録を参考にしたいと、データを管理するマネージャーの月島(福田転球)に見せてくれるよう頼み込む。
月島は、一瞬、躊躇するが、中里がバルブを完成させなければそれが一番の問題であることもわかっているので、ワンタイムパスワードを教える。

コアハート用バタフライバルブのデータにアクセスした中里は、そのデータが完璧に近い数値であることに、バルブには問題はなかったと結論付けるとともに、治験患者の死は事故死だったと安心するのだった。
その隣で、データを食い入るように見つめる横田(バカリズム)に、問題はないと納得したらPCを終了させておくようにと伝え、中里は食事のためにその場を離れる。残った横田は、その数値を見ながら、その完璧すぎる数値に疑いを持つのだった。


咲間より、コアハート用バタフライバルブの実験データが航平たちに渡される。
データの提供元に関しては秘密であると咲間は言うが、山崎は、型式「SSV-0098」の表記から、これがサヤマのデータであることに気づく。つまり、この実験データはサヤマの内通者からのものだった。
データはほぼ完璧の数値を示していた。やはりNASA品質であると驚く、山崎だったが、航平はそのデータが不自然に「きれい」であることに疑問を持つ。つまり、データ偽装の可能性が浮上したのだった。


日本クラインの藤堂は、協力すると見せかけ、咲間から情報を入手していた。
その情報の中から、サヤマ製作所によるコアハート用バタフライバルブの実験データがあった。
椎名に見せて、サヤマ製作所のものであると確認した久坂と藤堂は、表情を曇らせる。このようなデータが流出すれば、なにかあったときに難癖をつけられる可能性があり、危機的な状況であった。
ただ、貴船は、データに問題がなければ、さほど目くじらを立てる必要もないと言う。
そのことばに、椎名の目に剣呑な光がともるのだった。


椎名は、すぐさま、月島にデータ流出原因を突き止めるよう指示する。
月島は中里のPCからデータがダウンロードされていることとを追及する。その場は取り繕った中里であったが、横田に確認すると、データをダウンロードし、咲間にデータを渡したのは、横田であった。

横田もまた、データがそろいすぎており、データ偽装が行われた可能性があることに気づいていた。
横田によると、確証はないが、あのバルブを作るには高度な技術を要し、開発を行っていたときも0.1%の割合で不良が出ていた。それを、月島がほんのわずかな期間で精度を高めることができたかは甚だ疑問であるという。そして、もし、月島も動作保証90日をクリアしていないとするならば、今、中里が携わっている開発は、現行バルブとすり替え、データ偽装を隠蔽するためのものであると横田は指摘する。つまり、中里には現在、動作保証180日という目標が設定されているが、本当は、90日で十分であり、データ偽装の隠蔽のために開発というのだ。
中里は、臨床治験で使用されたバルブは、90日の動作保証もなされていない不良品であったこと知り、自分が設計図を盗み出したことで、治験患者を死なせてしまった事実におののくのだった。
横田がデータを咲間に流したのは、その推測の元、第三者の機関によってデータの真偽を見極めてもらうためだった。

横田「俺はここ辞めるよ。
    もし、データ偽装が俺の思いすごしなら、
    俺は会社を裏切ったことになるし
    もし、事実なら、この会社はクソ以下だ」


そして、横田は、佃製作所がデータを検証することを中里に伝えるのだった。



佃製作所での検証では、確かに、サヤマ製作所のデータがおかしいことが判明した。
ただ、一部、確証を得られない部分があり、他の企業でも同様だった。高速耐久実験装置でもあれば、という山崎のことばに、航平は、帝国重工にある装置を使わせてもらうことを思いつく。

さっそく、航平と咲間は財前を訪ね、データ偽装を証明するためには、帝国重工の高速耐久実験装置が必要であることを説明する。
航平は、自分の思いすごしになるかもしれないが、しかし、技術者としてこの疑念をそのままにしておくことはできない、これは人の命が関わっている問題なのだと財前に頼みこむ。
財前は快諾する。
航平は、さっそく佃製作所に電話して、必要なものを用意するよう指示する。
航平が電話で席を立っている間、咲間は、財前にお礼を言うとともに、今まで、このような事態に対して大企業が協力してくれたことはないことを伝える。それに対し、財前もまた、現在、帝国重工のバルブシステムを共同開発しているサヤマ製作所がデータ偽装をしているとなれば、帝国重工としても問題だと答える。

財前「それに、彼のことを信頼しています。
    彼とは、一緒にロケットを打ち上げた同士ですから」


航平を見ながら、財前は力強く言うのだった。



帝国重工からの帰り、咲間は航平に、なぜここまで協力してくれるのかと尋ねる。
航平は、その理由として、最初に試作品開発を頼まれたのが佃製作所であり、日本クラインからの横暴な応対に開発の件を突っぱねていなければ、治験患者を死なせずに済んだかもしれないからと言う。そして、サヤマ製作所にロケット打ち上げの夢を奪われたからとも話す。航平にとってロケットのバルブシステムの供給は、自分の夢であり、重要なものだったのだ。


航平は、利菜が、帝国重工を第一志望にしていることに、若干、ふしぎな感覚を受けていた。
1次は通過し、次は面接だという。
帝国重工の第2次面接試験に臨む利菜は、自分が航平の娘であり、帝国重工との取引のために航平が送り込んできたのでは、どうせ水原本部長が落とすに違いない、などと面接官が陰口を言っていることを知り、気持ちを奮い立たせる。そして、自分が帝国重工に入りたいと思ったのは、3年前のロケット打ち上げで泣いている父たちの姿を見たからだと言う。大のおとなが涙を流せるような仕事とは何か、父は自分の目標とする技術者であると利菜は面接官に語る。



財前は、装置の扱いに慣れている富山に、高速耐久実験装置での実験を頼んでいた。
しかし、富山はサヤマ製作所に赴き、設備面においても技術面においても信頼できる会社であり、データの偽装なんてあるわけがないと、財前の申し出を断る。

その後、富山は、石坂ととも椎名と会っていた。
石坂は椎名に、帝国重工としてはコアハートへの支援は難しそうだと伝える。それに対し、開発への支援ではなく、共同出資で子会社を設立し、海外セールスの窓口として帝国重工の看板がほしいのだという椎名の申し出に、石坂は喜々とした表情を浮かべる。
富山は、椎名にコアハートのバルブの素材を変えることを提案するが、石坂は、共同開発をする気はないから技術的な話をする必要はない、と富山を叱責する。

石坂「すみませんね。
    椎名社長と違って、うちの技術屋は空気が読めなくて」


石坂のことばに、技術者としての自負を持っている富山は、プライドを傷つけられる。そして、石坂が椎名から賄賂(現金)を受け取っているところを目撃したことで、富山の技術者としてのプライドが、事態の軌道修正に向かわせた。
会社に戻った富山は、財前が高速耐久実験装置の前で奮闘している姿を見て、その実験の続きを引き受けるのだった。




財前は、実験データを航平と山崎、咲間に渡す。
やはり、データ偽装が行われていた。
この結果を、週明けの週刊ポストに掲載すると咲間は言う。世論が動けば厚労省を含め各機関もコアハートを問題視するだろうということだった。しかし、椎名個人にかんしては、「知らない」としらをきられたら追及はできないという。椎名自身がかかわっていたという証拠が必要であるが、とにかく今はできることの最善を尽くそうと、航平は言う。



佃製作所が、帝国重工の実験装置をつかって、サヤマ製作所のデータを検証していることを聞いた椎名は、月島にデータの消去を命ずる。
心配する月島に、椎名は、中里の設計図を日本クラインに持ち込んだのは月島であり、なにか問題が起こったら、月島に罪をなすりつけるつもりであることを告げる。月島は自分を守るため、データを消去するのだった。
その現場を、中里が見ていた。
中里は「証拠隠滅ですか」と、月島に迫る。かつて、月島も、結果を出せない無能な社員は要らないと中里に言っていたが、今、すべての責任を背負わされ切り捨てられるのは月島ではないのか、と中里は言う。月島は、動揺する。

中里「そうなる前に、本当のことを教えてください。
    私はこの会社になんのために呼ばれて、何を作らされているんですか。
    答えろ!」


月島の顔が、動揺でひきつった。




椎名は、17年前のことを思い出していた。
旧サヤマ製作所では、父の椎名直久が精力的に仕事をしていた。
椎名に「オールAを取ったか?」と学校の成績を聞き、トップクラスではなくトップをねらえ、と言う父の姿は誇らしいものだった。
しかし、その父が急死する。2年前から業績が悪化していたが、必ず立て直してやると、心臓が悪いのに無理をして毎日営業に回っていたという。許せないのは、債権を回収しよう躍起になった大企業たちで、父が亡くなると、サヤマ製作所が持っていた特許や機材を根こそぎ取り上げ、椎名にはなにも残されなかった。
父が受けた屈辱を思いながら、椎名は、貴船に連絡を取るのだった。


咲間は、編集長から特集記事の掲載中止を通告される。
週刊ポストと咲間、そして佃製作所に対して、サヤマ製作所とアジア医大が、信用棄損と業務妨害で訴えてきたのだ。損害賠償額は10億円。
編集長は、週刊ポストとしては、このようなことは日常茶飯事なので問題はないが、今回は、佃製作所を巻き込むことになる。そしてアジア医大が相手となると、厚労省ともやり合うことになりかねず、100%勝てる見込みがなければ、記事を掲載することはできないと言うのだった。
協力してくれた航平のことを思い、咲間は黙り込むのだった。


サヤマ製作所とアジア医大から警告書が来たことを知り、航平は椎名のもとに乗り込もうとしていた。
頭に血がのぼっている航平を、殿村は必死に止める。

殿村「社長、あなたはうちの大将なんだ。
    もっとどーんと構えなさい。
    あなたはあなたの信じた道を行けばいい。
    その編集長に、うちはどうなってもいいから
    記事を出してくれと言えばいいんです。
    もしそのせいで会社が窮地に追い込まれても、元銀行員の私がいる。
    たとえどんなことが起きようと、絶対この会社は潰しません。
    だから、あなたが今行く場所は、椎名のところじゃない。
    週刊ポストの編集室だ」



殿村の覚悟に、航平は自分がすべきことを思い出すのだった。
その航平の元に、中里が訪ねてきた。


中里は、自分が、山崎の設計を椎名に渡し、そのせいでコアハートの治験患者が死んでしまったと涙ながらに言う。
そして、どうしていいのかわからなくなり、気がついたら、佃製作所に来ていたという。

航平「まず、顔を上げろ。
    下を向いてても、やってしまったことはもう戻らない。
    何も変わらない。
    とにかく顔を上げて、まっすぐ前を見ろ。
    つらかっただろ。
    よく正直に話してくれた」

山崎「よく逃げなかったな。見直したぞ」

中里「やめてください。私が悪いんです。全部私が・・・」

航平「確かにおまえは間違いを犯した。
    でもな、誰だって間違えることはあるんだ。
    大切なのは、これからどうするかだ。
    それに、本当に責任を取らなきゃならないやつは、他にいるんだろ。
    俺はそいつを絶対に許さない。
    おまえの敵は俺がとってやる



航平は、週刊ポストの編集室に行き、編集長と咲間に、記事を掲載するよう伝える。

航平「編集長、咲間さん。
    手前どものことはどうぞお気づかいなく、
    思う存分書いてください。
    最初からそのくらいの覚悟はできています。
    大丈夫です。うちには優秀な弁護士と大番頭がいますから。
    それに治験で亡くなった患者さんのためにも、
    ここで引き下がるわけにはいかないでしょ。
    受けて立ちましょうよ。正義は我にあり、です」

咲間「わかりました。では遠慮なく書かせていただきます」

編集長「本気か?」

咲間「編集長、正しいことを声にできなくなったら、
    私たちは何のためにいるんですか?
    訴訟が怖くてジャーナリストなんてやってられません」

編集長「わかった。好きにしろ。ケツは俺が持つ」

咲間「ありがとうございます」

航平「私も同じ技術者として、
    これ以上、椎名の間違いを許すわけにはいきません。
    これは技術者としてのプライドをかけた戦いなんです」




第4次スターダスト計画最終連絡会議が、帝国重工で行なわれていた。
藤間社長をはじめ、役員の前で、石坂によってサヤマ製作所との共同開発の正式決定についての確認が行われていた。
そのとき、財前が急に会議室に入ってきた。
どうしても本日中に決済してほしい事案が発生したため、クビを覚悟でやってきたという。

財前は、性能面でサヤマ製作所を上回る佃製作所のバルブを採用することを藤間に進言する。確かに、サヤマ製作所との共同開発は、性能面での差を補って余りあるものであるが、それは、サヤマ製作所との信頼関係があってこそであり、そこに疑義が生じれば、そもそもスターダスト計画は成立しないと言う。
それに対し、石坂は、佃製作所との癒着があるのでは、と詰め寄る。

石坂「私はね、帝国重工の将来の社益を考えて、
    サヤマ製バルブを採用すべきだと言っているんだよ。
    その考えに異論があるのなら、言ってみろ」

財前「社益・・・ね。
    これを見てもまだそんなことが言えるのかな、あなたは」

藤間「なんだそれは。見せろ」


明日発売の週刊ポストのゲラに書かれていたのは、世界最小最軽量人工心臓コアハートの実験データ偽装疑惑を告発した記事だった。
その記事が出る前に、なんとしてもサヤマ製作所との取引を見直す必要があったため、こうして無礼を承知で会議に乗り込んだのだと財前は語る。

財前「その記事が事実であれば、
    サヤマ製作所は、わが社のコンプライアンス規範に多いに反します。
    それだけではありません。
    すでに納品されたロケットバルブに関しても、
    データ偽装を疑わざるをえません。
    今回の事態を受け、開発グループとしては決定を白紙に戻し、
    従来通り、佃製作所製バルブの搭載を目指したいと思います。
    よろしいでしょうか」

石坂「たかが週刊誌の記事だぞ。
    直接確認もせずにこんなものを信じて、判断を変えろというのか。
    もし何もなかったら、わが社のバルブシステムは、
    何年も遅れるかもしれないんだぞ。
    それでよろしいんでしょうかね、みなさん」

財前「石坂部長、先ほど私と佃の癒着をお疑いのようでしたが、
    あなたのほうこそ、ずいぶんとサヤマ製作所に肩入れなさっているようだ。
    あなたが椎名社長から多額のリベートを受け取ったという情報も
    私のところには届いておりますが」


ざわめく役員たち。
石坂は、その情報が財前の部下からのものだと知り、富山が裏切ったことを知る。「あの裏切り者が」とつぶやく石坂に、石坂こそ、リベートを受け取って会社を裏切っていると財前は追及する。

藤間の目が鋭く石坂を見た。
そのようすに気づいた水原は、石坂を事実を尋ねる。

石坂「とんでもございません。
    私はこのスターダスト計画を成功させるためだけに、
    すべてを捧げてまいりました。
    こんな小さな問題のためにスケジュールを遅らせるようなことがあっては
    絶対になりません」

藤間「小さな問題か」

水原「社長の懸念される通りです。
    仮に不正が真実ならば、サヤマ製作所は存続に危機に立たされる。
    バルブの共同開発など問題外だ。
    これはわが社にとって重大なことかと」

石坂「小さな問題ということばに語弊があったことは認めます。
    しかしながら、考えるべきことはいたってシンプルなんです。
    こんな週刊誌の与太記事と、NASA出身の椎名社長と、
    いったいどちらを信じるかということなんですよ」

財前「それは違う。
    これは単純にどちらを信じるかという比較の問題ではありません。
    リスクテイクの問題です。
    このままプロジェクトを進めても、
    万が一、サヤマ製作所のデータ偽装が真実であると証明された場合、
    わが社の受ける損害は計り知れない。
    スターダスト計画は崩壊します。
    その責任があなたに取れるのかな?

    今ならまだ方向転換ができます。
    我々には佃製作所がある。
    彼らの技術力はいまだ世界最高峰。健在です」

藤間「サヤマ製作所とは、白黒がはっきりつくまで、
    共同開発をはじめ、当社のすべての取引を即刻凍結する」

水原「承知いたしました」

石坂「お待ちください」

藤間「石坂、サヤマに問題はないと言ったな。
    ロケットは、金や技術があれば打ち上がるというような、
    そんな簡単なものではない。
    開発に携わる者は少しのミスも許されない極限状態の中で、
    完璧に仕事をこなし、互いに2重3重のチェックをし合い、
    その上で信頼を高めていかねばならん。

    サヤマの問題に気付けなかったのは、君の責任だ。
    石坂。君はいったい何を見てきたんだ。
    ロケットをなめるな!

    わが社は佃製作所のバルブシステムを採用する。
    石坂。君の処分については追って伝える。
    あとは任せたぞ、財前。打ち上げスケジュールは絶対に守れ」


敗北感で、石坂は、テーブルに手をつき、うなだれるのだった。




航平は、サヤマ製作所を訪れ、明日発売の週刊ポストの記事を椎名に見せる。
椎名は、この記事は捏造であるし、サヤマ製作所から盗み出したデータを検証したところでその信憑性が疑われると言う。航平の「数字はうそはつかない」ということばに対しても、60%の確率をどう思うかと逆に問いかける。つまり、10人中、4人は死ぬかもしれないが、6人は生きる可能性について、助かる可能性をすべて潰すつもりかと、コアハートの開発を妨害するのはそれと同じというのだった。
航平は、6人を助けるために4人を犠牲することが正しいのかどうかは自分には判断できないが、治験患者は確率のことなど考えているのではなく、技術者も100%を目指してがんばっているのだと答える。

航平「にも関わらず、自分の私利私欲のために、
    開発する努力を放棄して、データ偽装するなんて、言語道断だ。
    どんな理由があろうとも絶対にやってはならない、
    越えてはならない一線だ」


椎名が言っているのは、詭弁だと航平は断罪する。
椎名に人の命を語る資格はなく、また椎名が一度犯したデータ偽装によって、技術者の信頼をも失わせたのだ、と。これでコアハートの開発は当然ゼロからのスタートになるのであり、認可直前だったコアハートを待ち望んでいた患者を裏切る、マイナス100%の結果だと言うのだった。

航平とは価値観が違うし、こんな記事が出ても痛くも痒くもないという椎名に、椎名の父が今のサヤマ製作所を見ればどう思うか、と航平は続ける。
業績が悪化しても従業員をクビにすることができなかった父とは違い、すべてを部下のせいにして逃げようとする椎名を責める航平だが、椎名は、父は負け犬で、父が残したものなど必要なく、自分は、自分の力で一流の設備と人材を集めたと反論する。
社員のやりがいとプライドで支えられている佃製作所と、社員を便利な持ち駒のように利用して捨てるサヤマ製作所との差が明確となった。

確かな証拠を持って来いと言う椎名に、航平は、すべて椎名の指示であったことを告白する月島の会話を聞かせる。
月島の裏切りに愕然とする、椎名。
月島に証言させたのは、椎名が無能と言い放った中里であることを航平は伝える。
この告発の音声は、明日の週刊ポストの発売と同時に、警察に提出されることになっていた。もう、椎名はおしまいだと、航平は言い放つのだった。


去りながら、航平は振り返る。
椅子に座り、うなだれる椎名に向かって、夢はあるのか、と聞く。航平は、ロケットに携わりたいと思った時からNASAで働きたいと思っていたが、日本での生活を捨ててアメリカに行くことはできなかったといい、だからこそ、椎名に嫉妬していた部分もあったと告白する。
それに対し、椎名は、アメリカに行ったのは、大企業に家も会社も父も奪われ、天涯孤独となって、泥水をすするような地獄から這い上がるためだったという。大企業を見返すために、実力主義のアメリカに渡り、NASAの看板を得ると、日本の企業はおもしろいようにすり寄ってきたという。自分の夢は、そんな大企業のトップになることであり、そのために佃製作所は邪魔だ、自分は必ずもう一度這い上がって見せると椎名は語る。

父のような負け犬にはなりたくないと再三語る椎名に、椎名の父が開発したRM-062264の特許が、次のロケットのキーパーツとして採用されることが決まったことを航平は伝える。椎名の父の開発が最先端技術として認められたのであり、たとえ特許を大企業に取られたとしても、その技術は継承されていく。これこそが、後世に残る技術というものだと航平は語るのだった。



翌日、週刊ポストが発売されると、日本クラインとサヤマ製作所には連日のように報道陣が詰めかけた。
アジア医大の貴船のところにも調査が入り、その数日後、椎名は業務上過失致死で逮捕された。
久坂と藤堂は、貴船に謝罪して「なんとかする」「時間をくれ」というが、貴船は、医者の世界では失敗したら人が死ぬんだと突っぱねる。なんとかするというのであれば、死んだ治験患者を生き返らせろとふたりを追い出すのだった。

日本クラインに戻った久坂は、その貴船のようすに、もうダメだとつぶやく。しかし、藤堂は、コアハートの開発には莫大な資金を投入しているため、貴船にはお飾りでもいてもらわないと、と訴える。
そして、どうすれば良いのかと、中川弁護士にアドバイスを求める藤堂。
中川は、道義的責任は認めつつも、自分たちも不良品を納品された被害者として決着させる、と言う。ただ、問題は、サヤマ製作所以外のどこにバルブを作らせるか、と中川は続ける。
藤堂は、それならば佃製作所に頼めばいいという。久坂は、過去のやりとりから佃製作所が引き受けるわけはないと言うが、藤堂は、どうせ中小企業なのだから鼻先に餌をぶらさげればいいだけだと軽く答えるのだった。
その藤堂のことばに、中川は佃製作所がかかわるのであれば、自分は手を引くと言って出ていく。

中川「佃をなめると痛い目にあいますよ」




後日、佃製作所を訪ね、バルブの製作を依頼する久坂と藤堂に対し、航平は、この設計図は誰が書いたのかと尋ねる。かつて、佃製作所にいた従業員がサヤマ製作所に設計図を流出させたこと、その設計図がこれであるとことばを続ける。

藤堂「なにをバカなことを。
    そんな作り話までして自社の権利を主張したいのか。
    部長、やはり他の会社をあたりましょう」

航平「そうされるのならどうぞご自由に。
    ただし、その設計図でのバルブの製造はやめていただきたい」

藤堂「ふざけるな!
    そもそもこれが、おたくの設計図だという証拠はどこにある!」

神谷「ありますよ」


神谷弁護士により、3年前に認可されたバタフライバルブの基本特許が提示される。帝国重工のロケットにも搭載された技術でもあり、コアハートのバルブはこの基本特許を侵害しているという。また、佃製作所側は、日本クラインに特許の実施を認めておらず、すでに試作品が製造されている事実に対して、その製造中止を求めると神谷から説明がなされた。

航平「その傲慢な意識が、基本特許の侵害を見逃すなどという、
    杜撰な結果を招いたんだ。
    あんたたちのような人間に、人の命にかかわる技術を扱う資格などない」




帝国重工では、財前から航平に対して、佃製作所製バルブシステムの納品時期が確認されていた。
また、午前中の取締役会議でガウディ計画への正式な支援も決定したという。
お礼を言う、航平。
ロケットでは、自分の夢をかなえることができたので、だからガウディでは誰かの夢を応援したかったのだ、という航平に対して、財前は、その航平を応援したい、と力強く言い、ガウディの開発を応援するのだった。


佃製作所では、みんなが不眠不休でガウディの開発を行っていた。
航平のアイデアで、弁にカーブを付けることで飛躍的に性能がよくなり、最後の血栓発生テストでは、0.00005%という、基準値クリアをはるかにこえ、そして人体への発生標準値よりも低いという驚異のデータをたたき出したのだった。

その1ヶ月後、初の臨床治験が実施された。
治験患者は、ガウディをもっとも必要していた中島聖人が選ばれ、その手術も無事成功し、臨床治験はその後、順調に重ねられた。



その3年後、種子島宇宙センターでは、新たなロケット打ち上げが行われていた。
固唾をのんで見守る佃製作所の面々、そしてJAXAの沙耶、帝国重工の利菜の祈りが通じ、無事衛星が分離された。
喜びを分かち合う航平たちの元に、椎名がやってくる。
自分が開発した新型バルブを取り出し、今、打ち上げられたロケットに搭載された佃製バルブよりも、調圧信頼性、耐久性ともに30%上回るという。
椎名の復活に目をみはるとともに、闘志を燃やす航平だった。






「下町ロケット」概要
第1話 | 第2話 | 第3話 | 第4話
第5話 | 第6話 | 第7話 | 第8話
第9話 | 第10話(最終話)

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下町ロケット(2015)第9話 [ドラマ(日本)下町ロケット]

下町ロケット9.jpg


「下町ロケット」ガウディ編も、セミファイナルです。
ようやく、ひとつずつ敵が倒れていきます。
が、原作ではもっとスカッとするような展開だったはずなのですが、あれ?
それでも、スカッとはさせてもらいました。

このブログでは、ドラマを見ながら、いわゆる文字起こしをしているのですが、阿部寛さんは、けっこう滑舌が悪くて、聞き取りにくいところも多かったりします。そして、なぜか、だんだんみなさんが同じ「熱さ」になるのはなぜでしょう? みんながみんな、似たようなキャラ設定になり、紋切り型な演技になってしまっているような気がします。
とはいえ、いよいよラスト1ですから、このセミファイナルを楽しんで見ていきましょう。


【ストーリー】

臨床治験が開始された貴船のコアハートは、その記念すべき一人目の患者・小西(児島功一)の容体が急変し、死亡してしまう。
貴船は「(研究医・葛西による)初期対応に誤りはあったが、事故死ではなく、病死であり、コアハートに問題は無かった」と結論づける。遺族からは病院外部調査委員会を設置するよう要望が出ているという話に対しても、貴船は、病院側には医療ミスはなかったと説明しなかったのかと、弟子の巻田真介(横田栄司)に責任を負わせる。さらに無能な研修員による心臓マッサージによりコアハートの一部が破損したのであり、そもそも研修医への指示を徹底していなかったのは巻田のせいであるとし、すべての責任を巻田になすりつけ、臨床治験の再開に向けて動く。
貴船から全責任を負わされ、さらに関係者の面前で「恥を知れ」と罵倒された巻田は、屈辱と怒りで顔がゆがむのだった。


一方、技術面では勝りながらも、人工心臓に続きロケットエンジンのバルブ供給までも、サヤマ製作所に横取りされてしまった航平たちは、帝国重工との取引解消によって、白川重機などの取引先から取引縮小の連絡を受けていた。そして、もはや“ロケット品質”を名乗れないとまで言われてしまう。
その航平たちの代わりに取引を開始したのがサヤマ製作所であり、白川重機で椎名たちと出会った航平たちは、急な取引縮小の原因が、椎名が仕掛けたものであることに気づくのだった。


帝国重工では、水原が、石坂にサヤマ製作所との共同開発の進捗状況について確認していた。
石坂は、財前が藤間社長に直談判したことを聞いて心配していたが、水原から、根回しをしていたおかげで、藤間社長も財前の意見には耳を貸さなかったことを聞くと、ほっと胸をなでおろす。そして、財前を引きずり下ろしたい水原と石坂は、財前の苦境を知り、笑い合うのだった。
財前は、自分の力不足に肩を落とすのだった。



真野は、コアハートの治験患者の死亡を、航平と山崎に報告する。
表向きは、患者の容体急変が原因とされているが、真野がアジア医科大時代の友人から聞いた話では、容体急変後の対応に問題があったのではないか、つまり医療ミスが原因である可能性を指摘しており、現に、遺族からは外部調査委員会の設置の要望があったが、病院側はそれをはねのけたということだった。

山崎「ちょっと、おかしくないですか?
    絶対に失敗したくない臨床で患者を選ぶなら、
    比較的安定した患者を選ぶんじゃないですか?
    容体急変には、なに別の問題があったんじゃないかと」

真野「別の問題って?」

山崎「例えば、コアハートの不具合とか」

真野「もしかして、先日言っていた設計図の問題となにか・・・」

山崎「あの製造には相当難しい技術が要求される。
    もしもサヤマがなにかを見落としていたら」


航平は、次の臨床治験について聞く。そして、まもなく再開されるようだということを聞き、山崎の言う通り、コアハートの不具合が見落とされていたら、また新たな犠牲者が出ると、航平たちは、顔をこわばらせるのだった。




横田から、臨床治験の患者が死亡したことを聞かされた中里は、以前、納品している製品が検査中に破損したこと、つまり部品の不具合の可能性も思いながらも、そのことを認めたくないようだった。
しかし、横田はそれを追及する。
横田がバルブの不具合のことを気にするのは、かつて、彼がコアハートのバルブ開発を担当していたからだった。しかし、なかなか開発はうまくいかず、担当を変えられたという。横田のかわりに開発を担当したのが、開発マネージャーの月島だった。月島は、横田から開発を引き継いでから、わずか数週間でいともたやすくバルブの試作品を完成させたのだった。横田は、そこで、月島がなにか細工をして、品質が安定しないバルブを納品したのではないかと疑っていたのだった。そのことを確認したいが、確認するためのデータにアクセスするには月島の許可が必要なことから、横田は、中里に調べてくれないかと頼む。中里は、ただでさえ開発が遅れて月島から目の敵にされていること、そして、サヤマ製作所を疑うようなまねはできないと、横田の頼みを突っぱねるのだった。


患者が死亡したことについて、貴船と久坂と藤堂、そして椎名はいつものように会い、話し合っていた。
これで臨床治験が中止になるのでは、と懸念していた久坂たち日本クラインと椎名だったが、貴船に、Pmeaから今回結果は除外するから大丈夫だ、という報告があったことを聞き、ほっと胸をなでおろす。
しかし、藤堂は、巻田からコアハート自体の不具合はなかったのかと聞かれたことを貴船に伝える。巻田は、コアハートの部品が破損したことを気にしていた。葛西が心臓マッサージを行う前に、コアハートがいつもと違うアラームを鳴らしていたという報告について指摘する巻田に対し、藤堂は、破損の原因は、葛西による心臓マッサージであり、葛西が自分の失敗を隠すためにそんな嘘を言っているのだとつっぱねるが、巻田はその説明に納得はしていないようだった。
椎名から、味方と思っていた相手の裏切りが厄介だと聞かされ、巻田の行動に危機感をもった貴船は、巻田をコアハートのプロジェクトから外すことを決意するのだった。
そして、今一度、コアハートには不具合はなかったのかと念を押す貴船に、椎名は力強く大丈夫だと宣言するのだった。


貴船から、高知中央メディカルセンターへの異動を命じられた巻田は、自分が、かつての一村のように、貴船から簡単に切り捨てられたことを憤り、フリージャーナリストの咲間倫子と連絡をとるのだった。




咲間は、ここ数年、医療事故をテーマに活動し、評価を受けているジャーナリストだった。
その咲間が佃製作所を訪ねてきた。対応する航平と殿村に対して、咲間は、コアハートの臨床治験患者の死亡について、話を聞きたいと言うのだった。
山崎を交えて、話を聞くことにする航平たちに、咲間は、コアハートの不具合について確証を得るために訪れたという。
コアハートについては、疑問点が2つあった。

・コアハートの設計に無理はなかったのか?
・仮に設計が正しかったとして、何らかの理由で動作不良が起きたのではないか?

そのため、当初、日本クラインから試作品を依頼されていた佃製作所に話を聞きたいというのだ。
渋る航平に対し、咲間は、ロケットのバルブシステムを製造するほどの技術力をもった佃製作所の技術者であれば、設計図をもとに、欠陥の有無ないしはその可能性について指摘してもらえるのでは、と食い下がるのだった。
設計図があるという話に、航平と山崎は、思わずお互いの顔を見合わせる。
一方、咲間の経歴を事前に調べていた殿村は、咲間の取組はすばらしいことだと思うが、現在、佃製作所ではガウディ計画に取り組んでおり、コアハートの件で医療訴訟に巻き込まれることになったら、ガウディの認可にも影響がでる可能性があるため、協力はできないと答える。
それは、佃製作所の役員としての声であると、殿村は航平にも伝えるのだった。

それに対し、航平は、咲間に、なぜ医療事故案件に携わるようになったのか、その理由を聞く。
咲間は、5年前に、夫を医療事故で亡くしたという。しかし、そのとき、病院側はミスを認めず、すべてをもみ消そうとしたという。訴訟を起こしても勝ち目はなかった。その経験から、今は、少しでも同じ苦しみを抱える人々の支えになりたかったと言う。つまり、医療事故案件を扱うのは、好奇心や功名心で調べているのではなく、真実を知りたいだけなのだ。そして、これには、人の命がかかわっている。咲間は、そう話すのだった。

その咲間のことばを聞いて、航平は協力を承諾するのだった。その航平のことばに、殿村も、しぶしぶ認めるのだった。
咲間は、設計図を航平たちに見せる。しかし、設計図だけではやはり判断は難しいため、山崎は、実験データがあればそれも欲しいと咲間に頼むのだった。



咲間から受け取った設計図と、山崎が作った設計図はまったく同一のものだった。中里が持ち出したことがこれで明らかとなった。
思わず、怒りで叫ぶ航平だが、ガウディの開発を進める立花たちのことを思い、この件に関しては、山崎や殿村などと内々に進めていくことにするのだった。




佃家では、航平が、利菜に頼まれ、就職の模擬面談を行っていた。
話す内容はできあがっているが、利菜の思いが伝わらないという航平に対し、利菜はそんなアドバイスはいらないと言う。ただ、神社のお守りをたくさんつけて、神頼みをする利菜の必死さを認める航平だった。



貴船は、藤堂より咲間のことを聞く。
元・毎朝新聞の記者で、医療事件を専門にしたフリージャーナリストであるという。現在は、ノンフィクション作家としても注目を集め、医療機関の闇を切り裂くような著作を次々と発表しているという。その咲間が、コアハートのことを調べているという。しかも、咲間が話を聞いた下請け会社の者によると、咲間がコアハートの設計図を見せて意見を求めてきたという。
設計図の入手ルートとして考えられるのは、日本クラインからの流出がないとすれば、あとはアジア医科大のドクターしかいない。となると、高知行きの件で貴船に恨みを持っている巻田によるリークではないかと推測する、貴船、久坂、藤堂、椎名だった。
そして貴船は、裏切りそうな者は、手元に置いて監視することが必要という椎名の進言を聞き入れる。




椎名は、中里にまだ試作品ができないのかと聞く。
今月中には完成させると言う中里だったが、開発のプレッシャーと横田から聞いた話が頭から離れない。
椎名に、臨床治験患者の死亡のことを聞くが、椎名は、開発に専念してもらうため余計な心配をかけたくなかったと言い、また納品した部品は、検証した結果、不具合はなかったと言うのだった。
その上で、期限どおりに開発が進まなければ、技術者として生きていけないよう息の根を止めてやると中里を脅すのだった。



貴船は、巻田に高知行きを白紙に戻すと伝える。
その代わりに、設計図の流出のことはなかったことにするから、これ以上は動くな、と釘をさすのだった。
これを受け、巻田は咲間に、これ以上は協力できないと伝えるのだった。




ガウディ支援の進捗状況についての報告が、唐木田や津野によって行われていた。
どこの企業も、最初は感触は良いのだが、佃製作所が帝国重工と取引をやめたと聞いたとたん、態度を変えるという。
その中、試作品開発は順調であり、28時間後には耐久テストの結果が出るという。
支援企業が見つからない以上、試作品を完成させて、Pmeaに臨むしかないことを確認し合う、航平、山崎、殿村、唐木田、津野だった。
咲間から電話があり、手に入れると約束していた実験データの入手が難しくなったとの報告があった。しかし、設計図に関して、航平は、話したいことがあるので、一度、会社に来てほしいと伝える。


北陸医科大では、一村の論文がまたしても貴船の圧力によりリジェクトされていた。
医者としての使命について悩む一村の元に、手術で元気になった高橋圭太が訪ねてきた。同じ病気で苦しんでいる友達の中島聖人も元気になるよね、と尋ねる圭太に、一村は、人の命を助けるのが医者であるのに、意地を張って貴船の手を取らなかった自分を恥じるのだった。そして、貴船の申し出を受けると、真野に伝える。



佃製作所の開発室では、ガウディ計画の人工弁耐久試験の結果が出るのを、社員のみんなが固唾をのんで見守っていた。
200時間の耐久テストをクリアし、歓喜に包まれる佃製作所だった。
航平は、技術面をクリアしたことを真野に伝える。そして、そのことを一村に伝えようとするが、真野から、一村が貴船の元に行ったことを聞くのだった。


貴船の元に行き、人工弁開発の実用化に向けて助けてほしいと訴える一村だったが、貴船は、今はコアハートの治験が始まったため、もう助けられないと冷たくあしらうのだった。


肩を落とし、佃製作所に向かう一村を、航平は迎えに来ていた。
佃製作所に向かう道中、一村は、貴船に助けを求めたが断られたことを航平に伝える。ただ、それでよかった、と航平は言う。航平がガウディ計画に参加したのは、一村と桜田、そして真野の思いを受けたからであり、そこに貴船は関係がないのだ、と。
貴船もまた、人の命を第一に考える医者であったが、大学病院という組織の中で、出世に執心し、人が変わってしまった、と一村は言う。

一村「どうしたら、そういう人を目覚めさせることができるんでしょうか」

航平「それは、挫折することですかね」



自分の経験からそう言う航平だったが、一村は、貴船が挫折するとは思えないと、呟く。
そして、今度のPmeaはキャンセルしたいと考えている、と一村は言うのだった。



滝川は、貴船が一村の申し出を断ったと聞き、よかったのか、と聞く。
貴船は、滝川の協力があれば、これ以上ガウディ計画が前に進むことはないし、いよいよ行き詰ったところで手を差し伸べるつもりだと、意地悪く笑うのだった。


佃製作所の社長室では、一村と咲間がいた。
航平は、コアハートのバルブ設計図が、佃製作所から盗まれたものであることを咲間に伝える。その犯人の目星もついていた。
その時、山崎が一村を迎えにきた。
今日はぜひ、一村に見せたいものがあるという山崎は、新型ガウディの動作評価テストの結果を渡す。
その書類のデータを見た一村は、テストをクリアしていることに驚愕する。
航平は、しかも、この結果に満足せず、さらに改良を進めていると話し、だからこそPmeaの事前面談をキャンセルするわけにはいかないと一村に伝える。たとえ勝てる見込みはなくても、立花たちの努力を無駄にすることはできないと言うのだった。
その立花たちの姿を見てやってほしい、と山崎は一村を開発室に案内する。


開発室では、開発部およびプロジェクトチームの面々が一村を拍手で迎えた。
立花は、試作品を一村に手渡す。
立花たちをねぎらう一村に、加納は、くじけそうになったとき、病院で撮った写真をみて、そこに写る子どもたちの姿を支えにがんばってきたと答える。
圭太や聖人のことを聞く鈴木に、一村は、圭太から預かってきた手紙を渡した。
手紙には、聖人と一緒にサッカーをしたい、聖人や他の友達のためにがんばってくれ、というメッセージがあった。

加納「Pmea、ダメかもしれないんですけど
    悔いの残らないように、私たちの全部をぶつけましょう。
    この子たちのために」


そのことばに、その場にいた咲間は、迫田にPmeaがダメかもしれないという理由を聞くのだった。




Pmea第3回面談の当日がやってきた。
桜田は、結のお墓の前で、「祈っててくれ」と呟く。
航平もまた、「利菜からお守りを貸してあげる、と言われた」と話す母からお守りの束を渡らされ、自分を鼓舞するのだった。


面談会場では、航平が遅れていた。
気を揉むメンバーたちだが、開始時間の間際に航平がやってきて、無事、面談が始まる。
13時になり、佃製作所でも、面談が始まり、一同に緊張が走る。
真野は、佃製作所で祈っていた。



本日は、性能が格段に進歩した新作の人工弁を持参し、そのデータなどについて説明したいと言い、その試作品を渡す一村。
審査担当官リーダーである山野辺敏が試作品を見ようとすると、滝川がそれを横から奪い、試作品云々の前に前回の課題は改善はできたのか、と話をそらすのだった。
製造販売業の認可を持った大企業の支援は取り付けられたのかとの問いに、航平は、現在、鋭意交渉を重ねているところであると答える。
そのことばに、滝川はさらに、なんのために来たのか、もう止めようと、山野辺に話を振り、早々の幕引きを図るのだった。
山野辺は、また機会を改めてと言うが、滝川は無駄だと突っぱねる。
本日持ってきた試作品を見てほしいという一村に、山野辺が試作品を見ようとするが、滝川はそれも阻止するのだった。

一村「我々は確かに大企業ではないからお金はないかもしれません。
    ですが、人工弁開発にかける情熱と、そして技術は、
    その試作品を見ればわかっていただけると思います」


しかし、滝川は鼻で笑い、すでに人工弁開発は他にも行われているので、意味はないと言うのだった。
ガウディなど無用の長物だという滝川に対し、航平が抗議のために立ち上がると、立花も同時に立ち上がり、話すのだった。

立花「それは違います。
    確かに今までの人工弁の手術は行われてきました。
    でもそれは、手術が必要な子どものすべてが受けられたわけではありません。
    人工弁のサイズが合わないからという理由で、手術が先延ばしになったり、
    病気が悪化したりして、友達と遊ぶこともできない子どもたちが、
    今、日本にいるんですよ。
    この日本に。

    確かにうちのグループは小さな会社ばかりかもしれません。
    ですが、このガウディは、大勢の子どもたちが、
    完成し、臨床で使われる日を待っているんです。

    命の尊さを、会社の大小ではかることができるでしょうか。
    私はできないと思います。
    どんな会社であろうと人の命を守るために、
    ひたむきに、誠実に、強い意志で作ったものがあれば、
    会社の規模という尺度ではなく、
    その製品が本当にすぐれているかどうかという、
    少なくとも本質的な議論にはかられるべきです」


そのことばに、ガウディチームの面々は涙を流し、そして、審査官である山野辺もまた、真摯に耳を傾けていた。
航平は、涙ながらに語る立花をねぎらうように、その肩をたたく。

航平「滝川さん、さっき、
    今日なんのためにここに来たのかとおっしゃいましたよね。
    そんなの決まっているじゃないですか。
    今日、私たちがここに来た理由はたったひとつ、
    病気で苦しむ子どもたちを、命を救うためです。
    そのガウディは、こういう思いを叶えようと、必死になって挑戦した、
    彼らの努力の証であり、我々の技術の結晶なんだ。
    目をそらさず、しっかりと見てください」


山野辺を含めた、滝川を除く審査官全員が、試作品を手に取り、見る。
滝川は、早々に幕引きをはかろうと、もう話をすることはない、と山野辺を促すが、山野辺はもう少し話を聞こうと言う。
そのことばに、他の審査官から、素材について質問が行われる。

なぜ、人工弁の素材としてコバルトクロム合金を使ったのか、という質問に対して、山崎は、一般的なニッケル合金よりも強度が約30%アップするからであると説明する。さらに、コバルトクロム合金の製造実績を聞かれると、1例だけあり、それが、ロケットエンジンバルブの部品の一部で使用していると答える。
その話に、山野辺たちの感嘆の声を上げる。

滝川「なにを得意げに。
    そのロケットエンジンの取引は、他社とのコンペに負けて、
    すでになくなっているそうじゃないですか。
    その程度の技術力を自慢されてもねぇ。
    所詮は大企業の下請けレベルでしょ?」

航平「いいえ、滝川さん。
    私たちは技術力だけは、けっして大企業に劣らないと自負しています。
    もしよろしければ、お時間があるときにでも、
    弊社に足をお運びください。納得していただけると思いますよ」

桜田「そいつはいいや。
    よかったらうちの工場にも、遊びに来てくださいよ」

滝川「バカなことを言わないでくださいよ。
    そういうことをして特別扱いをされようする。
    その魂胆は見え見えなんですよ。
    我々はどんな相手に対しても、常に公正、公平に、客観的な立場で・・・」

航平「公正、公平? 客観的?
    本当にそうですか、滝川さん。
    間違っていたら申し訳ないが、
    あなたがコアハートの開発者である貴船教授と頻繁に会食を重ね、
    情報を流しているという噂がありますが、
    それはどう解釈したらよいでしょうか」

滝川「なにを言ってるの。
    貴船教授と私はね、あくまで開発者と審査官という間柄であってね、
    そんなことは根も葉もないつくり・・・」


航平は、写真を机に置くのだった。

航平「これは、あなたと貴船教授が、
    月に数回程度会っているときの写真です。
    公正、公平というわりには、ずいぶんとした肩の入れようですね。

    そういえば、私たちにも貴船教授に相談するよう
    勧めておられましたが、なにか目的でもおありだったんですか?
    例えば、我々のガウディを乗っ取る計画とか」

滝川「そんなわけないでしょう。
    私はね、あなた方のためのを思ってアドバイスを・・・」

航平「貴船教授に頼まれたんじゃないんですか?」

滝川「バカな・・・。なにを根拠に」

航平「これは先ほど、私の協力者から渡されたものです。
    私はそのとき、この写真をみて愕然としました。
    だから今日、これを使ってでも、あなたと取引をして、
    ガウディの開発を認めさせようと思いました。

    ですが、私が間違っていた。
    そんなものなくても、このガウディは、十分、
    あなた方に認めてもらえるだけの、最高傑作の人工弁だ」


航平は、写真をまるめ、床に投げ捨てる。

滝川「冗談じゃない。
    だいたい一緒に食事をして、何が悪い。
    私と貴船教授はね、医療界の将来について語り合っていたんだよ。
    それを、盗撮まがいなことをして、卑劣な。
    恥を知りたまえ。

    だいたい私たちはね、
    君たちには理解しがたいような高尚な話をして・・・」


写真を拾い上げた滝川は、その写真を見て、愕然とする。
いわゆる夜の店で、女の人に抱きつきながら、ガウディなんて潰してやると話していたときの写真だったのだ。
黙り込む滝川に、航平は、「もしなんでしたら、その時の音声もありますが」とボイスレコーダーも取りだすのだった。

滝川「ふざけるな!
    そんなやりかたが通用するとでも思っているのか!
    ああ、みなさん、中止です。これ、もう中止。ね。中止・・・」

山野辺「滝川さん、勘違いしないでいただきたい。
    この面談を続けるかどうかは、リーダーである私が決めることであって、
    あなたにその権限はない。
    さ、その写真を見せなさい。いいから、見せなさい!」


写真を見た審査官のメンバーは、あきれて、愕然とする者や、頭を抱える者がいた。

山野辺「あなたは、Pmeaの恥だ!
    出ていってください。出ていけ!」


その場に、座り込む滝川。

山野辺「お見苦しいところをお見せして、申し訳ない。

    ひとつ、提案なんですが、
    これだけの実験データを蓄積なさっているのなら、
    大型の動物へと実験の段階を一歩進めてみてはいかがでしょうか。
    ただし、製造販売業の認可を持つ企業の支援は
    なくてはならないものですから、
    並行して、そちらもなるべく早く見つけてください」

航平「必ず」

山野辺「我々も前回以降、検討を重ねてきました。
    あなた方は、良いものを開発されていると思います。
    これからも実験を継続し、一日も早く、ガウディを実現し、
    多くの子どもたちを救ってあげてください」

一村「全力を尽くします」




佃製作所では、すでに結果を聞いていた社員一同が、拍手をもって航平たちを迎えていた。
これから、実験や厚労省の認可など、忙しくなるので、がんばろうと社員に語る航平だった。





航平は、ボイスレコーダーを咲間に返す。
写真などを用意したのが咲間だと知って、山崎は驚くのだった。
咲間もまた、Pmeaと貴船の癒着ついては、コアハートにも関わることだったので調べるところだったと言う。そして、滝川は、Pmeaの審査官を下されたという情報も伝えるのだった。ただ、滝川は外れたが、コアハート自体は間もなく臨床治験が再開されるとのことだった。
治験患者が死亡したことは、問題なしとなっていたのだった。

咲間「今、唯一の手掛かりは、
    御社が設計した設計図がサヤマ製作所に盗まれ、
    それが日本クラインに渡った可能性があるということです。
    だから、なんとしてでもそれを証明しなければならないんです」


山崎は頭をかきむしっていた。

山崎「ずっと考えているんですが、
    どうもしっくりきませんね。
    自分で言うのもなんですが、あの設計図どおりに作っていれば、
    動作不良なんか起こすはずないと思うんですよ」

航平「あれを完成されるのは、相当難しいって言ってたよな」

山崎「はい。でも、もし完成できなかったとすれば、
    あの臨床で使われたコアハートは、なんなんでしょうか。
    矛盾してますよね」

航平「あるいは、できてないものをできたように見せかけたとか」

咲間「それって・・・」

航平「サヤマがとんでもないうそをついているってことだ。
    とにかく、ここで話していても答えは見つからない」

咲間「だったら、本丸に攻め込みませんか?」

山崎「本丸って・・・NASA野郎ですね」


直接、椎名に聞くことを確認する航平たちだった。




咲間の取材の申し込みに、コアハートの件について聞かれることをわかっていながら椎名が申し出を受けたという。
ただ、咲間は礼を言い、技術的な意見を聞くため、と、航平と山崎が登場すると、椎名の表情が険しいものとなった。

設計図を見せる咲間に、藤堂から聞いていた通り、咲間が設計図を入手していたことにわずかばかり驚く椎名だった。
航平は、自分から質問がしたいと話し、このバルブ部分の設計図が佃製作所に存在しているのだが、心当たりあるかと椎名に問う。
日本クラインに発注され、その設計図どおりに作っただけだという椎名に対し、航平は、最初は遠まわしに、次に明確なことばで、佃製作所に勤めていた中里を使って、椎名がこの設計図を盗み出させ、日本クラインに渡したのではないかと問うのだった。山崎もまた、あの設計図どおりに作ったというが、本当は設計図どおりでなかったからこそ、死亡事故が起こったのでは、と言う。
椎名の目に、薄暗い、鈍い光がともる。


椎名の紳士の仮面が剥がれる。
咲間に対しては、夫が死んで著名人になれたのだから良かったのではないか、あんたのやっていることは臨床治験の妨害をし、救われる命を殺すようなものだと口汚く罵り、航平に対しては証拠を出さなければ法的手段で訴えると言うのだった。

航平「いいだろう。お望みどおり、あんたを調べつくしてやる。
    これまで何を使い、どういう仕事をしてきたのか、
    あんたがどういう技術者なのか、そのデータを洗いざらい調べて、
    丸裸にしてやる。

    こっちには一流のジャーナリストがついている。
    情報ならいくらでも手に入る。
    隠せるもんならな隠してみろ。
    いくら取り繕っても、技術はうそをつかない」



椎名との生々しい全面対決となった航平たち。
ただ、サヤマ製作所にとっては、コアハートの余波が、帝国重工との取引に広がることを、まだ感知できていなかった。





最後のシーンは、正直、ムカムカしました。
次回はいよいよ最終回。
ひさしぶりに、中川弁護士が登場します。



「下町ロケット」概要
第1話 | 第2話 | 第3話 | 第4話
第5話 | 第6話 | 第7話 | 第8話
第9話 | 第10話(最終話)


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下町ロケット(2015)第8話 [ドラマ(日本)下町ロケット]

下町ロケット8.jpg


「下町ロケット」ガウディ編も、次回でいよいよラスト2話。
ロケット編では、毎回、なんとなくスカッとするような気分にさせてもらいましたが、ガウディ編は「続きモノ」という印象が強いです。前回の7話と今回の8話は、まさに、佃製作所の試練回といいますか、がんばるけれど、やられっぱなしの回です。
佃製作所も試練の回でしょうが、視聴者にとってもまさに試練の回だと思います。
この重苦しいムードを乗り越えないとハッピーエンドに向かえないのだと言い聞かせながら、早くラストでスカッとさせてもらいたいと、祈るような気持ちで待っているわけです。

この妙な緊張感が嫌な私は、だからネタバレが大好きなのです。

少し、ネタバレをしておきますと、コアハートの失敗によって、佃製作所とサヤマ製作所との勝負の風向きも変わってきそうです。
・・・ものすごく大きなネタバレです。

だから、現在のこの試練も報われるのだと信じて、視聴者もがんばって、見ていきましょう。
なお、今回は、利菜が思いがけないナイスプレーをします。



【ストーリー】

椎名は、佃製作所をライバル視しており、医学界の権威である貴船と結託して、コアハートとガウディ計画の横取りを画策していた。また帝国重工の石坂に近づき、ロケットエンジンの受注も奪おうと根回しをしていたのだった。

一方、開発に行き詰った佃製作所のガウディチームである立花、加納、鈴木は、福井で実際の医療の現場に立ち会ったことから気持ちを新たにし、開発に向き合うのだったが、航平はそのとき、桜田から、ガウディの発展が見込めない場合は、親会社からの支援を今回限りで打ち切られるという話を聞く。



Pmeaでは、貴船の息がかかった審査官・滝川より、大企業の協力なくしてプロジェクトは実施できないと言われてしまう。
航平は、自分たちで支援してくれる企業を探すと宣言する。


会社に戻った航平は、社員たちに「あてはあるのか」と聞かれ、素直に「ない」と答える。
Pmeaの発言に黙っていられなくなったため、つい、言ってしまったと、弱音を吐き、「ごめん」と言う航平。
そんな航平のようすに、どうしようもなく前途多難な状況になっていることを実感し、江原もまた、プロジェクトを持ちかけておきながら、開発費を出せなくなったという桜田のことを聞き、落胆のあまり愚痴を言う。唐木田は、桜田もまた悔しい思いをしているのだから、と、そんな江原をなだめるのだった。


福井に帰るための夜行バスの列に並びながら、桜田は、一村にも、親会社からの資金援助が打ち切られる可能性が高いことを報告していた。
自分の不甲斐なさを一村に謝罪するとともに、Pmeaの冷淡な反応から、万策が尽きたと肩を落とす桜田に、一村は、「結ちゃんのためにも、もう少しがんばってみませんか」と言う。

一村「佃さんが諦めてないのに、
    誘った私たちが先に降りるわけにはいかないじゃないですか」




佃製作所では、ガウディ計画を継続する方法を模索していた。
加納は、佃製作所が資金援助できないかと提案するが、殿村は、開発費についてはすでに持ち出し状態で、帝国重工との取引も危うくなっている中、それは難しいと苦言を呈する。
それに対し、埜村は、現在開発しているバルブシステムならば、帝国重工の燃焼試験が行われる3週間後までには精度をさらに高めることができるから、コンペに勝つこともできる、と自信をもって断言するのだった。
山崎もそのことばに大きく頷くのだった。

不安がる社員に向かって、ガウディチームもロケットチームも、それぞれの役割を果たそうと、航平は告げる。特に、ロケットエンジンは、佃製作所の主力商品なのだから、必ずコンペを勝ち取り、資金面の不安をなくそうと決意を固めるのだった。



帝国重工の富山から、燃焼試験を1週間早めるという電話が入る。
サヤマ製作所から試験を後ろにずらしてほしいという連絡が入り、佃製作所の日程と交替したのだと言うのだった。
航平は、期限が急に変ったことに対して抗議をするが、富山はできないのであれば、今回は佃製作所は辞退すると言うことで良いかとやんわりと脅してきたのだった。
サヤマ製作所が有利になるよう、わざと、佃製作所を追いつめる富山だった。

航平は、富山の電話に怒りを抑えきれない。
江原は、今回のことは、意図的なものではないかと進言する。噂によれば、椎名は、帝国重工にバルブシステムの共同開発を申し出ており、キーデバイスの内製化を目指す帝国重工としては、その申し出は渡りに船の、非常に都合の良いものであった。そのため、佃製作所の不利になるように仕組んだんものではないかと言うのだった。


その噂通り、椎名は、佃製作所からバルブシステムの受注を奪うために、帝国重工が「内製化」というものにこだわっていたことを利用して、共同開発を申し出、サヤマ製作所が有利になるよう画策していたのだった。
富山は、内製化の邪魔をする佃製作所を快く思っていなかったし、石坂は、財前をライバル視しており、財前を追いやるためにはなんとしてでも、自分の息のかかった企業を入れ、佃製作所を排除したかったのだ。



航平は、1週間の前倒しをことを、埜村に伝える。
「できるか?」と問いかける山崎に、その期間に驚きながらも、「やるしかないんですよね」と埜村は答える。
頭を下げる航平に、開発部の全員は、この試練に立ち向かおうと一丸となるのだった。



貴船は、「勝つべくして勝つ」という椎名の手腕に感心していた。
共同開発をもちかければ、帝国重工の気持ちがサヤマ製作所に傾くのは明らかだった。
椎名としても、佃製作所の技術力の高さは認めており、まともにぶつかっても勝敗のゆくえがわからなくなることから、確実に帝国重工の心を手に入れるための「共同開発」を申し出たのだ。
その椎名の手腕に、貴船だけでなく、久坂、藤堂もまた感心する。



一村は実験室に何日もこもっていた。
なかなか成果が出ず、頭をかかえていると、真野がやってきた。
桜田に「がんばろう」と言った手前、自分もがんばらないと、真野に笑いかける一村だった。
そのとき、桜田がやってきた。またなにかあったのかと顔を引き締める一村に、「改良したものを見てもらおうと」と桜田は試作品を手渡す。心をひとつにして、全力を尽くそうとするお互いの姿に、一村と真野の心にあたたかいものが広がっていくのだった。



佃製作所の開発部では、みんなが全力を尽くしていた。
ガウディチームとロケットエンジンチームのがんばりに、航平は彼らをねぎらいながら、自分も力づけられるような気がするのだった。
開発部の一角では、山崎が、新たな部品開発を行っていた。航平は、だんだんと形になってきた開発品を見ながら、山崎を頼もしく思うのだった。

山崎「これが完成すれば、佃の将来性は大きく広がりますから」

航平「やっぱ、えらいなおまえは。
    俺なんて、目先の問題に頭抱えてひーひー言ってるのに
    こんなときも会社の10年先を見ているんだからな」

山崎「このアイデア出したの、社長じゃないですか。
    今回のコンペ、うちが不利なことは間違いありません。
    だから少しでもプラスになることはやっておきたいんです。
    なんせ向こうは、帝国との共同開発ですからね」



山崎のことばに、なにかをひらめく航平だった。
航平は、財前に電話をする。試作品を見てもらい、財前の意見をいただきたいと申し出るのだった。



佃製作所を訪れた財前は、試作品を見て、感嘆する。
富山が進めた期限の件を謝罪するとともに、試作品をみて、これならば試験にクリアできると確信し、安心したと胸をなでおろす。
その財前に、今日は他にも見ていただきたいものがある、と航平は言うのだった。

航平は、山崎のもとに行く。


航平「シュレッダーです」

財前「シュレッダー?
    どういうものなんですか?」


問いかける財前に、航平は、百聞は一見に如かず、とさっそく見てもらうことにする。
新型バルブの前に、シュレッダーを接続する。そして、管の中に、かつてバルブの不具合を起こした異物を投入するという。
財前は、そうしたら、また異物がバルブに引っ掛かり、異常を引き起こす、と推測するが、その予想に反して、バルブは正常に動いていた。管の中を確認すると、異物は見当たらなかった。


山崎「センサーですよ。
    エンジン内に異物が混入した場合、
    それをセンサーが察知して、粉砕するんです」

財前「まさに水素エンジンのシュレッダーというわけか」



まだ実用化するためには改良を加え、小型化と精度化が必要になるが、これが完成すればバルブの誤作動を防止できるだけでなく、エンジンそのものの保護にもつながるという航平に、財前は思わず、言うのだった。「おもしろい」と。

財前「今度のコンペで、
    あのシュレッダーが間に合えばよかったんですが」

航平「あれは、そう簡単な代物じゃないんだ」

財前「あのシュレッダー、もし可能なら、我々と」

航平「共同開発、ですか」


大きくうなずく、財前。

航平「あの技術に興味がある、ということでしたら、ぜひ。
    ただし、こちらからも一つだけお願いがあります。

    御社には確か、医療機器部門がありましたね。
    今うちが手掛けている、ある開発案件
    支援していただきたい。
    シュレッダーの共同開発には、それが条件です」



ガウディ計画の概要書類とサンプルバルブを見せながら、航平は、ガウディ計画の社会的重要性と支援を申し出る。
財前は、「率直に言って、難しい」と答える。帝国重工の医療機器部門で扱っているのは、検査機器であり、リスクの高い医療機器ではないためであった。
難しいとわかっていても自分に頭を下げる航平に、財前は、話をしてみることを約束する。

山崎は、帝国重工から共同開発を持ちかけてくるとわかって、あのシュレッダーを見せたのかと航平に問う。
航平は頷き、そこから、ガウディの支援も受けられるかもしれないと説明する。
サヤマ製作所が共同開発なら、自分たちも共同開発だ、と航平は言うのだった。



財前は、ヘルス開発部門グループ長の安東仁に相談する。
しかし、直接命にかかわる医療機器はリスクが多すぎて手を出せないと言われてしまう。

安東「どうしても、というなら、
    おまえの部署で出資したらいい。
    その、ガウディに」
財前「そうしたいところなんですが、
    さすがに関連性のない医療分野への出資は難しいんです」

安東「関連性がなければ、作っちまえばいい」



そのことばに、財前はなにかを思いつくのだった。
富山は、財前が部屋に入るところを見かけ、その手に、佃製作所の封筒を持っているのを見て、いぶかしむのだった。


財前は、航平から渡されたガウディ計画の概要に目を通していた。
「人工弁を通るときに血栓ができる」という一文に目が止まる。
佃製作所で見たシュレッダーが、混入した異物をセンサーが察知し、粉砕することを思い出していた財前は、異物と血栓がつながることを思いつく。
さっそく航平に電話をする財前。
シュレッダーの医療分野への応用が可能ということならば、財前の部署でも支援できるというのだ。もちろん、ロケットを優先してもらうため、医療分野への展開は少し時間が必要になりかもしれないが、それでも資金援助は可能である、という財前のことばに、可能性を見出す航平だった。
この話を進めるためには、まず、燃焼テストをパスして、コンペに勝ち抜いてもらうことが大前提だと、航平に助言する財前。佃製作所のバルブが採用しなければ、水原を説得することができないからだ。


航平、山崎、殿村、津野、唐木田の間で、ガウディが存続できるかどうかが、新型バルブにかかっていることが共有された。
新型バルブの開発では、みんな不眠不休でがんばっているが、疲労もたまっていた。
限界を感じて、川本からは不満の声もあがる。埜村は、期限を1日のばしてくれるよう、航平にかけあうと入口に向かって歩き出す。そのとき、開発部に利菜がやってきた。

思わず、立ち止まる埜村たち。
航平の着替えと、社員への差し入れを持ってきたという利菜。

利菜「父がいつもわがまま言って、本当にすみません」

頭を下げる利菜に、自分が愚痴を言っていたのを聞かれたと、目を見開く川本。

利菜「どんな難問にも必ず答えはあるなんて言って、
    みなさんに無理させているんですよね」

埜村「本当はみんな社長に感謝しているんです」

利菜「そうですか。
    でも私も、みなさんに感謝しています。
    3年前、みなさんの力で打ち上げたあのロケットを見たとき
    私、感動しました。
    みなさんのおかげで、私は夢を見つけることができたんです。

    実は今、就職活動がうまくいかなくて、
    ちょっと悩んでたんですけど
    どんな難問にも必ず答えはある。
    そういう気持ちで、私もがんばります。
    ですからみなさんも、負けないでください。
    父に力を貸してやってください。
    よろしくお願いします」



社員たちは、利菜のことばに発奮し、一丸となって新型バルブの開発を続けた。


そして、燃焼試験では、かつてないすばらしい数値を計測し、成功した。
よろこぶ社員たち。
しかし、江原はひとり、素直に喜べないでいた。
夜、迫田にそのことを指摘された江原は、ほっとしているがコンペに勝ったわけではないと、言う。サヤマ製作所には日本クラインで苦い思いをさせられたので、そのことがやはり引っかかっていたのだ。
サヤマ製作所は、帝国重工に共同開発をもちかけているため、すでに佃製作所より何歩もリードしていた。サヤマ製作所のNASAの技術と帝国重工が結びつけば、佃製作所は負けるかもしれない、そういう思いがあって、江原は喜べないでいたのだ。

夜も更け、会社を出ようとした江原を迫田は、ロケットバルブの試験成功の夜もガウディの開発に没頭する立花、加納、鈴木の姿を見て、心に熱いものを感じるのだった。

江原「ロケットもガウディも、絶対にやり遂げような」



1週間後、サヤマ製バルブシステムの燃焼試験が行われた。
結果は、まずまずだった。
数値結果は、佃製作所の方が上であり、これでコンペには勝てるとよろこぶ佃製作所の社員たちだった。


試験結果を受けての帝国重工の会議では、結果が良かった佃製作所を採用したいと述べる財前に対し、石坂は猛反発する。
佃製作所の方が、サヤマ製作所よりも数値が良かったと言うが、その差は微々たるものであり、さらにサヤマ製作所は帝国重工と共同開発を行うといっていると。それは、キーデバイスの内製化を目指す帝国重工の理念にも合致するものであるから、サヤマ製作所を採用すべきだ、と言い募るのだった。

さらに、富山がかつて見かけた、財前が佃製作所の封筒を持っていたことを持ち出し、財前は佃製作所と懇意にしており、さらに別件でなにか取引があるのではないか、と邪推するのだった。
それはシュレッダーのことだと財前が説明するが、石坂はそれを否定し、なにか裏で佃製作所と約束しているのでは、と悪印象を植え付けようとことばを重ねるのだった。


結果、試験結果は、佃製作所の方が上であったが、採用されたのは、サヤマ製作所だった。


航平は、その結果を社員に報告し、自分も悔しい思いを抱いているにもかかわらず、「試合には負けたかもしれないが、勝負には勝ったんだ」と励ますのだった。
社員も悔しさに涙を浮かべながら、前を向こうを動きだす。
この結果は、佃製作所が、帝国重工の後ろ盾を失い、ガウディ計画も潰えてしまうことを意味していたのだった。




貴船は、椎名から帝国重工の受注を勝ち取った報告を受け、そのことを滝川に話していた。
滝川もまた、コアハートの臨床試験開始の承認が出たことを伝え、ふたりは満足げにワインを傾けるのだった。


帝国重工に納めていたバルブを引き取りに行った川本と航平。
航平は、悔しい思いを財前に素直に話すのだった。



数日後、アジア医大では、人工心臓コアハートの臨床試験がついに開始され、被験者・小西悟への人工心臓移植手術が行われることになった。臨床試験とは、薬剤や医療器具等の安全性有効性を検討するために、治療を兼ねて行われる試験のことである。

貴船はご満悦だった。
アジア医大の心臓外科医・巻田真介を自分の後継者として学会に参加させるほど、有頂天だった。



サヤマ製作所では、コアハートの臨床試験が行われることが、椎名から中里に伝えられた。
そのため、「そろそろ結果を見せてもらわないと」と一刻も早く改良品の開発するよう中里にプレッシャーをかける椎名に、中里は、以前、試験でバルブが壊れたことを言い出せずにいた。
人の命に直結する医療機器の不具合に、心乱される中里であった。その中里を、横田が静かに見つめていた。


一村と桜田と真野は、佃製作所に向かっていた。
桜田は、佃製作所と帝国重工との取引がうまくいかなかった原因が、もしかして自分ではないかと気に病み、航平に合わせる顔がない、と言うのだった。とにかく、今後のことを話し合おうを、一村は静かに伝える。



佃製作所では、財源確保のためにみんなが必死になっていた。
一村たちは、佃製作所ではみんなが落ち込んで、ガウディ計画を諦めてしまったのではないかと思っていたが、開発部では、ガウディチームもロケットチームも一丸となって開発に取り組んでいた。
そのようすに、驚愕する。

真野「帝国重工の支援はダメになったんだろ?
    だから、ガウディは・・・」

加納「やめませんよ、私たちは。
    この子たちが10年後に笑っている姿を私たちは見たいんです」


加納が目を向けた先には、病院で撮った子どもたちの写真がたくさん貼られてあった。
一村たちの心に、熱いものが込み上げてきた。

航平「この新兵器、見てやってください。
    こいつはね、将来、ガウディにこの技術が応用できるはずなんです。
    もしこいつが完成すれば、
    血栓なんて怖くもなんともなくなるんですから」

一村「本当ですか!
    確かにそいつはすごいな」

唐木田「弊社の開発資金は、今、経理部が
    なんとか赤字を出さずに捻出できないかをさぐっています。
    われわれ営業部も、
    帝国重工以外でこのプロジェクトの後ろ盾になってくれる
    新規企業を探しています」

桜田「いや、しかし、そんな簡単に協力してくれるような
    新規企業が見つかるとは」

航平「見つかりますよ。
    良いものを作り続けて入れば。
    技術がしっかりしていれば。
    それを認めて、必要としてくれる企業が必ずある。

    一村先生、桜田さん、あなたたちがそうだったじゃないですか。
    ロケットエンジンバルブの取引を失ってしまったことは、
    正直、はかりしれないほどショックでした。
    ですが、われわれにはまだガウディがある。
    このガウディを完成させることが、
    今の佃製作所に残されたプライドなんだ。

    感謝してますよ。
    桜田さん。一村先生。そして、真野。
    ガウディ計画に参加させてくれて、
    われわれの技術を信じてくれて、
    どうもありがとう。

    その期待に応えるためにも、
    なんとしてもガウディは完成させてみせる。
    そうだな、みんな」

桜田「ありがとうございます。
    佃社長、みなさん、ありがとう」

一村「私たちの方こそ、あなた方にお願いして、本当に良かった。
    ありがとうございます」




コアハートの臨床試験が始まったことを、真野から聞いた航平は、悔しい思いを抱く。
一方、山崎は、なにか考え込んでいた。
航平がどうしたのかと聞くと、山崎は、コアハートのことで、気になることがあると言う。
そして、日本クラインが設計の変更を申し込んできたとき、そのときの設計図が山崎が作った設計図と同じだったことを言うのだった。
まさか、中里が設計図を盗むような人間とは思わない、と航平は言うが、状況的に、犯人は中里としか思えないのだった。

山崎「でも、もしも、もしも万が一、
    この設計図が盗まれたんだとしたら・・・・」




病室では緊急事態が起こっていた。
被験者が心肺停止に陥り、研修医の葛西は「絶対に死なせるな」という貴船のことばにおののきながら、心臓マッサージをしていた。
そこに、学会で留守にしていた巻田が駆け込んできた。

巻田「やめろ!
    人工心臓の患者だぞ!」


自分の処置が間違っていたことに気づき、思わずその場に崩れる巻田。
貴船が病院に到着した時、被験者はすでに亡くなっていた。


貴船「なにした。なにをしたんだ!
    このバカどもが!」






被験者が死んだことで、医療ミスの問題が浮上する。
謎のフリージャーナリストに、高島彩が次回から登場します。
いよいよ、ラスト2話です。

ガウディ編の人物相関図はこんな感じです。

下町ロケット8-2.jpg




「下町ロケット」概要
第1話 | 第2話 | 第3話 | 第4話
第5話 | 第6話 | 第7話 | 第8話
第9話 | 第10話(最終話)

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下町ロケット(2015)第7話 [ドラマ(日本)下町ロケット]

下町ロケット7.jpg

「下町ロケット」ガウディ編も、さっそく敵に包囲され、暗雲が漂っています。まだ第7話なのに。
おまけに、「まさひこくん」って誰だよ状態で、航平パパの心はいろいろとゆれ動きます。

人のモノをなんでも欲しがる貴船教授や椎名みたいな人、確かにいます。
自分では何も生み出せないから、とことん人のモノを自分のモノにしないと気が済まないわけです。
このような困ったチャン、『ガラスの仮面』でいえば「乙部のりえ」を華麗にやっつけてくれる「亜弓さん」の登場を今は待つしかありません。

ガラスの仮面.jpg

今回は、ひたすら災難がふりかかるガウディチームですが、若手3人の奮闘ぶりを応援しましょう。



【ストーリー】

福井を訪れた航平たちは、真野(山崎育三郎)、一村(今田耕司)、桜田(石倉三郎)の思いを受け取り、ガウディ計画に協力することを宣言した。
その3日後、一村によるガウディ計画のプレゼンが、佃製作所の社員に対して行われた。
ガウディ計画とは、重度の心臓弁膜症に苦しむ子どもたちに、元気な身体と未来を取り戻すためのプロジェクトであるという一村の説明の後、航平はこのプロジェクトチームとして、開発部から立花(竹内涼真)、加納(朝倉あき)、鈴木(堀井新太)の3人を、営業部からは江原を選出する。立花がチームリーダー、江原がサブリーダーをつとめることになった。

航平「きれいごとだと笑われるかもしれない。
    だが、このガウディ計画はたんなるビジネスじゃない。
    技術者として、そして社会の一員として
    人の命を救うための果たす使命だと俺は思っている。
    おそらく開発には膨大な時間を要するだろう。

    もし道に迷ったら、この使命を思い出してくれ。
    子どもたちの笑顔と未来のために、力を合わせて、
    このプロジェクトを実現しよう」


佃製作所のプロジェクトチームは、さっそく、真野、一村、桜田とともに話し合う。
そこで、一村から、ガウディ計画の3つの壁が説明される。

1つ目の壁は、技術の壁。
真野が持ってきた人工弁の試作品は、どこがダメなのかはわからないが、血栓ができやすいという欠点があった。つまり、克服しなければならないのは、血栓を防ぐ方法と、生体適応性だった。そのため、トライアンドエラーのくりかえしになる。

2つ目の壁は、資金の壁。
現在、資金提供をしている桜田経編からは、桜田の開発に対して反発もあり、前途洋々と言うわけにはいかない。

3つ目の壁は、認可の壁。
医薬品や医療器具の審査機関である、Pmea(独立行政法人 医薬品医療器具総合機構)の事前面談が最初の砦となる。
現在の日本では、すべての医薬品と医療機器は、すべて、開発段階からPmeaの指導を受け、最終的に、厚生労働省が判断・認可するシステムができあがっていた。そのため、事前面談で、Pmeaの好意的な評価を得られれば、その後の認可までのプロセスも順調にいくが、この時点でミソがついてしまうと、後々、厄介なことになるという。

その事前面談は、2週間後に迫っていた。



航平、山崎、江原、そして桜田と真野はともに夕食をとっていた。
そこで、桜田と真野から、一村と貴船(世良公則)との関係が明らかにされる。
一村は、超一流の心臓外科医であり、一村を頼って訪れる患者も後を絶たないという。その優秀はゴッドハンドが、福井に行った理由は、コアハート開発における貴船との関係にあった。
一村はもともとアジア医大の心臓外科部長であり、貴船の一番弟子でその後継者といわれていた人物だった。もともとコアハートのアイデアは一村によるものだったが、貴船がそれを自分の実績として発表してしまう。一村は、本来ならば、自分のアイデアを盗んだ貴船に反発するところだが、自分が一歩引くことによって、コアハートの開発が進むのならばと、その屈辱的な状況を受け入れたのである。ところが、貴船は、このまま一村がコアハートに携わると厄介なことになることから、無理やり、一村を福井に飛ばしてコアハートから離し、コアハートを完全に自分のものにしたという。
その話を聞き、一村の無念さを思う航平たちだった。




一村が福井の北陸医科大学に戻ると、そこには貴船が待っていた。

貴船「風の噂で聞いたんだがね、
    今やっている研究にだいぶ苦戦しているようじゃないか。

一村「人工弁のことですか?」

貴船「実は私もね、以前から新型の人工弁を作ってはどうかと考えていてね。
    どうも君が行き詰っているようだから、
    ぜひ、力になってほしいとある人に頼まれてね。
    それで、こうして、わざわざ、
    こんなところまで足を運んだというわけだ」

一村「お気づかいをいただき、ありがとうございます」

貴船「なにを他人行儀な。
    君と私の仲じゃないか。
    医療機器というのは、
    厚労省の許可を得るまでに長い時間と金がかかる。
    私が開発をするのなら、日本クラインがスポンサーとして、
    なおかつ共同開発チームにも加わるそうだ。
    どうだ。良い話だと思わんか。
    もちろん、君と大学の名前も、
    開発者チームの主要メンバーとして名前を残すようにする。
    心臓弁膜症で苦しんでいる患者のことを考えれば、
    どのやりかたが一番実用化への近道かと考えれば
    こんなに良い話はあるまい。
    なぁ、一村くん。
    医学界の未来のため、また一緒にがんばろうじゃないか」

一村「せっかくですが、遠慮させていただきます。
    このガウディプロジェクトは、
    自分の力で最後までやりぬくことに意義があると考えています」

貴船「私がわざわざ、こんな良い話を持ってきたというのに、
    君はそれを袖にすると言うのか」

一村「たいへんありがたいと感謝しています。
    ですが、ガウディは私のアイデアです。
    コアハートのようなことはもう勘弁してください」


一村がコアハートのことを持ち出したことに苦々しいものを感じる貴船だった。

一村への怒りがおさまらないまま、貴船は、日本クラインの久坂と藤堂、そしてサヤマ製作所の椎名と会っていた。
人工弁への参入など良いではないですかとなだめる久坂に、いったんは納得しようとした貴船であったが、すぐに、椎名が、「手に入れられるものはすべて手に入れる方がよい」と進言する。さすがにそれは研究倫理的に・・・と思い、しぶる貴船であったが、椎名は、藤堂の協力で、桜田経編について調べ、そこで桜田経編がガウディ計画に批判的であることを突き止めたことを話す。すなわち、このままPmeaとの面談が不調続きならば、桜田経編による支援も見直されるだろうという話だった。そのため、こちらが黙っていても、いずれは資金が底をつき、一村の方から泣きついてくるはずだから、それを待とうと提案するのだった。
Pmeaとの面談の話を聞き、策が思いついた貴船は、自分を侮辱した一村の研究をまるごと奪うことを決意する。

貴船「椎名くん、さすがに一流の経営者だけあって、
    君の物事を見通す力はたいしたものだなぁ」

椎名「私がNASAで学んだこと、
    それは、勝つための法則を如何に見出すか
    勝つための適切な準備を如何にするか
    ただそれだけのことですよ。
    交渉の席に着いたときにはすでに勝負は決まっている。
    勝つべくして勝つ。
    それが私の経営方針です」



椎名は、中里に耐久性の改良が必要だと再度命じる。
バタフライバルブのアイデアは自分のものではなく、結局、佃製作所でも最後まできちんと開発をしなかった中里は、不安になり、現在納入している90日間動作保証のバルブの試作品を参考にしたいと願い出るが、椎名は、既存の枠にとらわれず独自の発想で改良してもらいたいとその申し出を却下する。

椎名「期待してるよ。
    うちは最高の技術と頭脳を持った最先端技術者集団だ。
    佃製作所とは比べるべくもないだろう。
    ここだけの話、帝国重工のロケットエンジンバルブも
    もうじきうちものもに切り替わる。
    このコアハートがうまくいったら、
    君には次にはロケットエンジンバルブを手掛けてもらうことになる。
    そのためにも、一刻も早く結果を出してくれ。
    無能な社員なら、うちには必要ないからね」


椎名によるプレッシャーに中里の胸中は穏やかではなかった。



Pmeaの事前面談を5日後に控えた佃製作所の試作品チームは、最後の追い込みをかけていた。
生体適応に関しては、まずまずの結果を出せたが、立花は血栓の問題がクリアになっていないと、表情は硬い。根本的に、血栓ができない構造を探し当てるしかない、と語る。

立花のプレッシャーと焦りに、加納と鈴木が委縮するのを感じた航平は、「焦るな」と助言する。失敗はたくさんするかもしれないが、独自のノウハウというものは、理屈ではなく、手を動かし、失敗から見つけるものだと。スマートにやるな、泥臭くやれ、と励ますのだった。




貴船は、Pmea審査担当官の滝川信二と会っていた。
そこで、一村が開発している人工弁を「あぶなっかしいもの」と言い、事前面談の担当官には「十分に気をつけるように」と言い含めてほしいと頼むのだった。それに対し、滝川は、自分が担当官なので心配はないと語る。




Pmeaの第1回面談が行われた。
一村、桜田、航平、山崎、立花、加納が参加していた。
審査官は、8人だった。
その担当官である滝川は、開発に携わっているのがベンチャー企業(桜田)と中小企業(佃製作所)という、吹けば飛ぶような基盤のない会社であることから、リスクがあった場合に責任がとれるかどうか疑問だと指摘する。特に、医療機器・クラスⅣ(患者への浸襲性が高く、不具合が生じた場合、人の生命の危険に直結する恐れがあるもの)の開発に、中小企業ごときが手を出すものじゃないと、悪意に満ちた見解を述べる。
さすがに、その滝川の発言の不適切さをPmea側の人間がたしなめるが、滝川は、きちんとした会社との協力体制が必要だと続ける。


一村「この新素材は、今、特許申請している最先端の技術です。
    佃製作所さんも、帝国重工のロケットエンジンのバルブを製造している、
    大企業にない技術を持っています。
    こういう会社こそ、臨床が求められている、
    新しく、高度な医療機器を開発するにふさわしいと思います」


それに対し、滝川は、財務諸表の提出を求める。株式公開もしていない会社など信用できない、添付した書類も、どうにでも都合の良いように書けると吐き捨てる。

滝川「審査の本質というのは、なにを作るかという以前に
    誰が作るか、ということなんですよ」


さらに、滝川は、貴船に相談してはどうかと一村に言うのだった。
「自分たちに医療機器をつくる資格があるかどうか、よく考えろ」という滝川のことばに、一同は、悔しい思いを抱くのだった。




滝川の、悪意と偏見のこもったことばに、加納は、悔しい思いを吐露する。
一村は、滝川と貴船が懇意の仲であり、自分が貴船の申し出を断ったため、わざと審査に通らないように貴船が手を回したのだと伝える。ただ、不安な気持ちになるみんなに対し、一村は「外堀から埋めていこう」と、現在、新しい論文を学会誌に投稿しているので、それが掲載されるとガウディ計画に賛同する声も高まり、Pmeaもそれを無視するわけにはいかなくなるだろうと語るのだった。



ため息をつく航平に、利菜は「明日面接なのに」と軽く抗議する。
航平の母は、男の人はめめしいところがあるから、と言い、「まさひこ君にもそういうところあるでしょ?」と利菜に聞くのだった。
航平は、はじめて知る娘の彼氏、しかも、何度も家でごはんも食べているという事実に驚くのだった。




一村のもとに、論文リジェクトの電話があった。
理由は、反対している一部の先生方によって「古い」と判断されたためであったが、その詳しいことはまったくわからないままだった。学界の重鎮である貴船が手を回したことは明らかであり、その結果に、佃製作所の開発チームも落胆する。
しかし、一村は、落ち込むのではなく、今また新しい論文に取り掛かっているということを聞き、その強さに、航平をはじめ、チームの人間も驚くのだった。



貴船と滝川と椎名は、ガウディ計画を阻止するとともに、コアハートの臨床実験の認可について話をしていた。
椎名は、さらに耐久性を高めたものを用意すると伝える。


中里は、開発がうまくいかず、焦っていた。
サヤマ製作所開発マネージャーである月島尚人は、失敗つづきの中里に、佃製作所にいたのにまた失敗なのかと声を荒げる。「うちの会社は結果がすべて」と月島は言い、「あんなみじめな思いをしたくはないだろ」と今は開発を離れた横田信生を見るのだった。
そのとき、ちょうどサヤマ製作所の視察に訪れていた帝国重工の一行を目にしながら、中里は、コアハートが成功すればロケットエンジンにも携わってもらうと語る椎名のことばを思い出し、焦りで心が押しつぶされそうになるだった。



航平のもとに、帝国重工のバルブがコンペになったことを聞きつけた沙耶から電話があった。
元JAXS(宇宙科学開発機構)の佃航平とNASA帰りの椎名直之の対決だとうわさになっており、沙耶は航平を応援するのだった。
そして、沙耶が「まさひこ君」を知っていたことを、ここで知る航平だった。


椎名は、帝国重工の石坂と富山を視察に招き、接待していた。
その過剰な接待に、これも、佃製作所に勝つための秘策だと、椎名は秘書に語るのだった。

椎名「コアハートも、ガウディも、ロケットエンジンバルブも
    すべて手に入れる」





中里は、現在、日本クラウンに納品されている試作品を見せてほしいと横田に頼む。
月島の許可をもらっているという中里だった。

なにか手伝おうかという横田に、かつて開発部にいたということから中里は横田の好意に甘えることにするのだった。
自分が改良中の製品と、納品した製品との差を見たいということで、納品している試作品を試験するが、エラーが出てしまった。たまたまこれが不良品だったのかと思う中里に対し、横田は何か思い当たるものがあるようだった。



佃製作所でも、改良した人工弁のテストを行っていた。
やるだけのことはやり、自信があると言う立花、加納、鈴木であったが、エラーが出てしまった。思わず、その場で崩れ落ちてしまう立花を思いやり、山崎は、今日はもう帰り、休んだ方が良いと伝える。
自信があったのにダメだったのだから、もう無理だと言う立花。加納も、Pmeaで中小企業ごときが医療開発に手を出すものじゃないと言われたことを思い出し、自分たちにはできないのでは、と弱気になる。
完全に、人工弁開発の糸口を見失ってしまった立花、加納、鈴木は、計画の原点を見るため、航平に福井行きを申し出、航平はそれを快く聞きいれる。

航平は、まず、桜田のもとを訪れる。
そこで、桜田の努力の結晶を見る3名だった。
しかし、そのとき、航平は、桜田の変化に気づき、どうしたのかと聞く。桜田は、先ほど、親会社の社長である弟・桜田努から、これ以上、ガウディ計画に進展がなければ、資金援助は今回の5000万円のみだと通告されたことを伝え、このままだと計画は半年しか持たないと言う。半年以内に結果が出せなければ、桜田は開発から離脱することになると言う。
佃製作所が参戦してくれたのに、申し訳ないと謝る桜田は、このことを一村と真野にも話すと頭を下げるのだった。

桜田の事情を胸に秘めたまま、航平たちは、真野とともに一村の元に向かう。
まだ結果を出せていないと語る立花たちに、一村は言うのだった。

一村「そんなの当たり前ですよ。
    結果なんてそう簡単に出るものじゃない。
    私なんてどれだけ挫折してきたことか」

加納「先生は、お強いんですね」

一村「私は強くなんてないですよ。
    でもね、こんな(子どもたちの)笑顔を前にしたら、
    やめられるわけないじゃないですか。ただそれだけです」


一村のことばに、なにかを得た3人。
そのようすを、航平はあたたかく見るのだった。

航平たちが病院の子どもたちにプレゼントした姫路城立体パズルに対し、高橋圭太は「ロケットが良かった」と言う。そんな圭太に、小さいものをつなげて大きなモノをつくるのはものづくりの基本だよと航平は語りかける。
一村は、明日、この圭太の手術に、ぜひ、立ち会ってほしいと伝える。

加納「命の危険はないんですよね」

一村「さほど難しい手術ではありませんが、
    どんな手術にも万が一というリスクはあります。
    だから常に全力を尽くすだけです。
    あなた方も明日は圭太のがんばる姿を応援してやってください」



翌日、航平、立花、加納、鈴木、真野は圭太の手術に立ち会う。

真野「アメリカ製の人工弁で、最小のものです。
    でもやはり、圭太にはちょっと大きすぎる。
    だから通常とは違う場所に縫合しなければならないし
    切開部分も大きくなります。
    それでもこの先、圭太が生きていくには
    あれを使うしかないのが現状なんです。
    圭太のやつ、早く病気を治して、
    いつか病室のみんなとサッカーがしたいって。
    でも、他の子たちに適合する人工弁は、
    今のところまだありません。
    子どもなんだから、ロケットを飛ばしたいだとか、
    ヒーローになりたいとか
    もっと大きな夢を見たいだろうに。

    ただ、友達とサッカーをしたい
    そんなごく普通の、小さな夢くらい
    叶えさせてやりたいじゃないですか」


真野のことばに、祈るように手術のゆくえを見守る一同。
一瞬、うまくいったかのように思えた次の瞬間、血圧が急激に下がる。しかし、みんなの応援と一村の適切な処置に手術は成功する。


立花は、航平のことばを思い出していた。
「このガウディ計画はたんなるビジネスじゃない。技術者として、そして社会の一員として、人の命を救うための果たす使命だと俺は思っている」
その意味を実感し、自分たちの仕事がどれほどすばらしいものなのかをかみしめる立花と加納と鈴木の3人は、迷いが吹っ切れ、なんとしてでもガウディ計画をやり遂げるという覚悟を決めるのだった。
その3人のことばに、航平と真野は頷くのだった。




Pmeaの第2回面談が始まった。
前回指摘のあった財務諸表に目をとおし、桜田経編と佃製作所が優良な会社であることがわかったと、滝川は言う。
しかし、このままではダメだという。
医療機器は、ただ作ればよいというのではなく、売らなければならない。そのための製造販売の認可が必要になるが、その製造販売の認可を、桜田も佃製作所も持っていないことを指摘されたのだ。だからこそ、大企業の後ろ盾を受けろと滝川は言う。

一村は、ガウディ計画を進めていく過程で、そういう大企業を見つけるつもりだというと、滝川は、貴船に頼んでいないことを責め、貴船に頼めば日本クラインがスポンサーになるのに、そういう努力を怠っているのに、「大企業を見つける」という一村のことばには信憑性がない、このままじゃ開発を諦めてもらうしかない、と断罪する。

航平「有意義な助言をしていただき、たいへん参考になりました。
    ですが、そういう企業を見つければよろしいんですね。
    ガウディが完成するまで、我々を支援してくれる、
    認可を持っているような大企業を、見つければよろしいんですね」

滝川「だから、貴船教授に相談してみたらと申し上げています」

航平「せっかくの心遣いですが、
    開発者にとって製品は子どもと同じなんです。
    その子を託す、信頼できる相手、企業は、
    自分たちの手で見つけてみますよ」

滝川「適当なこと言わないでくださいよ。
    無理に決まってるでしょ。
    そういう思いだけでできるなら、誰でも開発者になれる」

航平「ですが、思いのないところに技術の進歩はないと、
    私はそう信じています。
    そもそも、このPmeaは、
    医療開発を試みる企業の志を諦めさせるための組織ですか、
    それとも日本の医療の安全と発展のために
    手助けをする組織なんですか。
    どっちなんだよ」


そのことばに、Pmeaの他の人物たちの目が滝川を静かに見つめる。
その無言の圧迫に、滝川は、「後者」と答えるのだった。

航平「でしたらどうか、もう少しだけ、私たちを信じて、
    力を貸していただけませんか。
    たとえ1%でも可能性が残ったのなら、
    私たちは諦めません。
    このガウディを完成できるのは、私たちしかいないんだ」





今回の一村の立ち位置は、ロケット編の殿村に似ていますね。

ロケット編よりも、敵の高圧的な組織の態度に、けっこうやられました。
確かに、実際に声に出しては言いませんが、実際は、心の中ではそれよりもひどいことを言っていることは知っています。
ドラマでは、声に出すので、なにやら嘘っぽい気がしますが、現実はそれよりも過酷です。
けっこう、現実的なドラマです。




「下町ロケット」概要
第1話 | 第2話 | 第3話 | 第4話
第5話 | 第6話 | 第7話 | 第8話
第9話 | 第10話(最終話)

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下町ロケット(2015)第6話 [ドラマ(日本)下町ロケット]

下町ロケット6.jpg


「下町ロケット」ガウディ編がスタートしました。
基本、原作を読んでいても、常にピュアな気持ちでドラマを見ているわけですが、ネタバレ大好き人間としては、「ガウディ編」はまだ原作を読んでいないので、非常に心もとない気持ちで、ドラマを見ています。
今回は、敵役として、サヤマ製作所社長・椎名役の小泉孝太郎が、そして、味方として一村役の今田耕司が登場します。
このドラマでは、敵役と味方役が非常に分かりやすくて良いですね。

新たな面々を加えたガウディ編は、医療現場が舞台です。
そして、ますます、「同業者あるある」を感じながら、このドラマを注視したいと思います。



【ストーリー】

あの歓喜に沸いたロケット打ち上げ成功から3年が経った。
佃製作所は、その実績によって大幅に業績を伸ばしていた。
そんな航平の元に、帝国重工に送るバルブシステムの試作品に故意に不合格品を混ぜ、佃製作所を絶体絶命に追い込んだ真野から手紙が届いていた。
真野は、あの後、山崎の紹介で先端医療研究所に勤めていた。その就職を見つけてくれたのが航平だったことを後で知り、真野は、航平のあたたかな思いに感謝するのだった。そして、今、先端医療研究所で出会った大学教授に誘われ、福井県にある北陸医科大学の新たな研究開発に没頭しているという。そこでやりがいを見つけた真野は、航平がかつて語った夢を、自分も見つけることができたと航平に報告するのだった。そして、そこには航平に一度会って相談したいことがあることも書かれていた。

真野の成長ぶりに、航平も山崎もうれしい思いを抱くのだった。

帝国重工関連企業懇親会に参加した航平は、そこで、取引拡大のためほとんど海外にいる財前とひさしぶりに再会する。
新型バルブシステムの資料を財前に送っていた航平だったが、財前の代わりに窓口になっていた帝国重工宇宙航空部の資材調達担当部長の石坂宗典が、サヤマ製作所社長の椎名直之を伴って現れた。
そこで、次回からバルブシステムの業者をコンペで選ぶことになったこと、そのライバルがサヤマ製作所であることを知るのだった。

サヤマ製作所は、3年前に椎名直之が社長になってから、急激に業績を伸ばしている会社だった。
椎名はNASAの出身で、「NASAのテクノロジー」を売りにし、技術力も高いという。
現在は、椎名のコネクションで企業のトップと直接取引を行っており、同業者の間では「強引な手法で仕事を横取りしている」と悪い評判もあった。そのため、帝国重工も、航平の手前、形だけのコンペを開き、実はサヤマ製作所に決まっているのではないか、と、航平たちは分析していた。

佃製作所を高く評価してくれている財前は、現在、ほとんど日本におらず、石坂が担当責任者になる可能性もあるという。その石坂は、サヤマ製作所と急接近していた。
殿村は、バルブシステムの投資回収はまだまだであるため、この時点で帝国重工との取引がなくなると大赤字になりかねないと話す。
そのとき江原が、「今日、日本クラインから、新規取引の話があった」と話を切り出した。
商品は、バタフライバルブであるが、何に使う部品かはよくわからない。
江原も、何に使うものか教えてもらえなかったという。
しかも、素材がパイロライトカーボンで、動作保証90日、そして、納品期限3ヶ月で金額が2,538,000円という依頼内容に、試作に対する対価が少なく、赤字であると意見を交わす航平たちだった。
一応、量産を視野に入れての試作依頼ということで、江原は話をつづける。

江原「採算の問題もありますが
    なんといっても日本クラインは一部上場の大手企業です。
    これはそこに食い込むチャンスです。
    社長、俺たちはあの帝国重工からあのバルブの供給を勝ち取ったんです。
    今回もまた大企業相手に、チャンスをつかみましょうよ」


江原のことばに、航平もこのチャンスをつかもうと決意する。
これが、これから始まる波乱の始まりであることを、航平は知る由もなかった。



日本クラインとの予算の話し合いに臨む航平たち。日本クラインの藤堂保は、すでに量産も佃製作所にお願いすると伝えているのだから、当初の予算以上のものは出せないと突っぱねる。
そこにたたみかけるように、日本クライン製造部長の久坂寛之は、佃製作所になんとしてでもお願いしたいと懇願する。
その久坂のようすに、藤堂は冷たい視線を投げかけていた。
結局、佃製作所は、この仕事を引き受けるのだった。


1ヶ月後。
江原によって、この謎の部品が、人工心臓の弁であることが判明した。
現在、日本クラインはアジア医科大学とともに世界最小最軽量の人工心臓「コアハート」の開発を進めていた。これが成功すれば、患者の負担を軽減できる画期的な人工心臓となるという。この「コアハート」のキーパーソンは、アジア医大心臓外科教授・貴船恒広だった。貴船は、学会の重鎮であり、日本クラインは、開発当初より技術面資金面でバックアップを行っており、3年の歳月をかけてようやく動物実験の段階にこぎつけたところだという。
しかし、ここにきて、バルブの耐久性に問題が発生し、佃製作所に依頼が来たという。

唐木田は、なにか不具合があったとき、その責任を佃製作所が負わされる可能性があると話す。医療機器開発の場合はそのようなケースが多いことを指摘する。
そのため、企業側も敬遠するところが多く、佃製作所に何の部品か明かさなかった理由もそこにあるのではと言う。
この受注を断ることはできないかと言う唐木田。
それに対し、この1ヶ月の間に、それなりのコストもかかっていると答える殿村。
どうするかと航平の意見をあおぐ社員たちであった。

航平「続けよう。
    ただしこれは、人の命にかかわる開発だ。
    よほど気をひきしめてかからないと
    取り返しのつかないことになる。
    求められるのは、ロケット品質以上の精度だ」




貴船と、久坂と藤堂は、料亭で会合していた。
佃製作所からの納品期限が2ヶ月後であることを伝える久坂に、貴船は、急がせるようにと答える。
当初の計画よりだいぶ遅れており、開発費の関係もあり、理事会からうるさく言われているという。そのため、一刻も早く臨床での結果を出す必要があるという貴船に対して、コアハートの開発が成功すれば、貴船の地位も盤石であり、次期学長の座も可能であると久坂は言う。
貴船は、心に思うところはありながらも、自分は医学の進歩のために行っているだけだ、誤解を招くような発言は控えるように、と静かにたしなめる。
貴船と久坂のようすをみていた藤堂が、今夜、貴船に会わせたい人物がいると伝える。

現れたのは、サヤマ製作所の椎名だった。



航平が、日本クラインのバルブ開発チームに指名したのは、技術開発部の若手社員である中里淳、立花洋介、加納アキだった。
中里は、もともと大手メーカーの研究機関に所属していたが、経歴よりも実力がモノをいう世界を求めて佃製作所に入った。人一倍上昇志向が強く、プライドの高い人物だった。
中里は、今回、任されたこの開発について、当初は簡単にこなせると見込んでいたが、1ヶ月経った今も思うような結果を出せずにいた。

設計図に問題があることを訴える中里に、航平は、設計を疑うよりも可能性をすべて潰してから考えろと忠告する。

中里「いちいち全部証明していたら、
    時間も金もいくらあっても足りないと思いますけどね」

航平「勘違いするなよ。
    俺がおまえに頼んだのは、
    このバルブの試作であって、金儲けじゃないんだ。
    中途半端な仕事をしていて
    ダメなら相手のせいにする。
    おまえ、それでもエンジニアか。
    今日はもう帰れ。
    頭を冷やして、もう一度考えるんだな」


航平のことばに、悔しさと憤りを感じる中里。
そのようすを、技術開発部の鈴木健児は静かに見つめていた。

航平は、中里の、エンジニアとしての中途半端な姿勢に苦いものを感じていた。



椎名は、自分であれば、佃製作所より30%のコストダウンで引き受けられると、貴船、久坂、藤堂に話していた。
コストダウンということばに色めき立つ久坂と藤堂であったが、貴船は安全性が必要だという。その貴船に、佃製作所と同等かそれ以上を示せば良いのですね、と挑発的にことばをつなげる椎名に、貴船も「証明してもらないとね」と試作品作りを容認するのだった。



山崎は、日本クラウンからの設計図に対し、独自の改良案を作っていた。
それを見た中里は、これをすぐに日本クラインに提案するよう頼み込む。

山崎「これは俺が勝手に改良した、いわばまったくの別物だ」

中里「だって、部長だってできないと思ったから
    この設計図描いたんですよね。
    おまえらだってそう思うだろ」

山崎「素材の扱いをちょっと工夫したものだ。
    これなら頼まれた設計図のまま、なんとかなる。
    おまえは自分ができないことをただ言い訳にしているだけだ。
    設計図を批判する前に、もっと自分の腕を磨いたらどうだ。

    おまえの薄っぺらい紙みたいなプライドなんて
    うちの会社じゃケツをふく役にも立たないぞ。

    そんなものいますぐ捨てて裸でぶつかってみろ。
    それができなきゃ、おまえはいつもまでも半人前のままだ」


中里の、成果を急ぎ、すぐに楽な方に逃げようとする考えに、航平から開発のヒントを与えるようにと気にかけてもらっていたにも関わらず、つい、自分もキレてしまったことを、山崎は反省するのだった。
なんとか、中里を成長させたいと考える航平と山崎だったが、その気持ちが中里に届くかどうかはわからない。
それはともかく、あまり良い設計ではないと山崎は言う。
その気持ちは航平も同じだった。
このままだと量産化には不適切であり、設計そのものを見直すことが必要かもしれないという山崎に、試作品が完成した時点でそのことを日本クラインと話し合うことを決める航平だった。



ボーリングに、航平は利菜を誘っていた。
現在、慶應義塾大学理工学部3年となっていた利菜は、なかなか就職活動がうまくいかず、悩んでいた。
大手企業に入り、自分がどこまでやれるが、研究の第一線で実力を試したいという利菜に、その心意気は良いが、大手に行くことが利菜の夢をかなえることになるのかと航平は伝えるのだった。



1ヶ月後、佃製作所は、日本クラインに納品した。
日本クライン側でも厳重な耐久性テストが行われ、結果は高評価であった。
そのようすに、サヤマ製作所の椎名を紹介した藤堂は、気が気ではなかった。椎名にその結果を伝えるが、椎名は、慌てる必要ないと答えるのみだった。


日本クラインは、佃製作所側に、設計書が変更したから、作り直してくれと言う。
それなら、もっと早い段階で言ってほしいと、航平は訴える。
設計書通りに作るのが下請けの仕事であるため、設計に不備があってもそれを伝えなかったのだ。

新しい設計書とともに、納期は1ヶ月以内、金額はさらに低く2,165,400円という。
こんな条件でできるわけがないという航平に対し、藤堂は、それでもできるという会社があるからそちらに頼んでもいいが、と言うと、航平はその取引を拒否したのだった。
一方、山崎は、提示された設計書を見ながら、かつて自分が改良した設計図であることに気づくのだった。

廊下で、椎名とすれ違う航平と山崎。
「それでもできるという会社」というのが、サヤマ製作所であることに気づく航平だった。



日本クラインの受注を取ったのは、サヤマ製作所であることがわかった。
帝国重工に横やりを入れたのも、サヤマ製作所。
これが、サヤマ製作所のやりかただった。

中里は、佃製作所を辞めると言う。
航平、山崎、唐木田を前に、中里は、ふてぶてしげに、すでに次の転職先が決まっているので、今月いっぱいで辞職すると言う。

航平「なら、もう止めない。
    だがな、中里、どこに行っても苦しい時は必ずある。
    そんな時は、逃げるな。
    人のせいにするな。
    それから、仕事には夢を持て」


夢なんてないほうが普通だという中里は、航平のことばをまともに取り合おうとせず、ふてくされた態度で部屋を出ていくのだった。
真野の時と同じだ、と航平は悲しい気持ちになる。


それから1ヶ月後。
江原は、中里がサヤマ製作所に就職したことを、航平に伝えるのだった。


試作品の動作保証を90日から180日にするよう、椎名は中里に指示していた。
中里は、日本クラインからのバルブ試作の開発リーダーであったことから、以前から椎名に目をつけられていた。
2ヶ月前、中里は椎名に、山崎が考案した改良型バルブの設計について話していた。それを中里の設計だと誤解した椎名は、その設計図のデータを自分に託すよう中里に言う。中里は、自分の設計ではないことを隠したまま、そして、サヤマ製作所に転職することを条件に、夜、こっそりと会社に侵入し、山崎の設計図のデータを盗み、それを椎名に渡したのだった。

日本クラインが改良したという設計図は、中里が盗み、それを椎名が藤堂に渡したものだったのだ。




佃製作所に、真野がやってきた。
部屋に通された真野は、そこで、かつての仲間からあたたかな拍手で迎えられる。

真野「社長、あのときはご迷惑をおかけして、
   たいへん申し訳ありませんでした」

航平「よく来たな、真野」


自分のかつての裏切り行為を責めることなく、仲間たちに迎えられ、そして、航平に迎えられた真野は、感謝と感動で目頭が熱くなるのだった。
実は、日本クラインの頼まれた部品が、人工心臓関係であることを江原に教えたのは真野だった。
福井に行く前、アジア医大のコアハート開発に関わっていたこともあり、そのことを知っていたのだ。
そして、今回、真野が来たのは、現在、行っている研究の相談だった。
共に佃製作所に訪れたのは、真野を研究に誘った北陸医科大学教授の一村隼人と、研究協力者の株式会社サクラダ社長の桜田章だった。


航平、山崎、殿村、そして真野、一村、桜田は社長室にいた。
株式会社サクラダは、編み物を扱う株式会社桜田経編を母体とし、桜田が新たに人工弁開発のために作った子会社だった。
「人工弁」ということばに、航平と山崎は驚く。
真野が相談したかったのは、まさに、人工弁にかんする研究だった。

真野が提示する、心臓弁膜症手術で使用される医療器具の設計図を見た航平たちは、それが日本クラインが提示した設計図と同じものであることに驚く。

真野「日本クラインに依頼されたものとほぼ同じであると思います。
   しかし、あちらは人工心臓、機械の中に入る人工弁ですが
   こちらは直接人体に埋め込む人工弁です」


真野が持ってきたのは、日本クラインのものより2回りも小さい弁だった。
そして、その周りに付着している繊維は、桜田が開発したものだった。この伸縮性によって、子どもの患者でも、成長に合わせて繊維部分が広がり、サイズが合わなくなって何度も手術をする、ということがなくなるのだ。

一村「現在は、人工弁は外国製のみで、
   大きさなどの問題から国内の患者さん、
   特に子どもには適合しないケースがあります。
   重度の心臓弁膜症で苦しんでいる子どもたちに合ったサイズの
   人工弁を作ってやれば、
   どれだけ夢や希望を与えられるか。
   この開発には苦労するだけの意義があると思うんです」

真野「社長、このプロジェクトに参加していただけませんか。
   人工弁の芯となるリング部分と、
   開閉弁を作っていただきたいのです。

   それは失敗作なんです。
   その人工弁ではどうしても血栓ができてしまう。
   実はこれまでにいくつもの会社で
   改良を重ねてもらったのですが、
   どこもうまくいきませんでした。

   この会社で育った私にはわかります。
   この技術には、佃製作所のバルブシステムの
   ノウハウが必ず活きるはずです。
   この人工弁を完成させられるのは、佃製作所だけです」

殿村「もし、開発に成功したとして、
   承認されるまでどれくらいお考えでしょうか」

一村「臨床試験に持ち込むまで、
   あと1~2年はかかるかもしれません。
   そこから厚労省の承認を得ることになります」

殿村「つまり、その間、経費は持ち出しということでしょうか」

一村「そうなります。
   ただ、経産省の補助金もありますから。
   全額というわけではありませんが」


黙り込む、航平、山崎、殿村。
そのようすに、桜田は、この人工弁の完成を待っている大勢の子どもたちがいること、その子たちに思いっきり外を走らせてやりたい、いろんな将来の夢を見させてやりたい、と語る。
どうかお願いできないかと、桜田、一村、真野は、頭を下げる。



唐木田は、引き受けるなど論外だと語る。日本クラインの件で懲りたはずだと、医療事故の可能性、訴訟になった時の賠償金などビジネス的にはリスクが高すぎると言うのだ。
津野は、技術的にどうなのかと山崎に問う。
山崎は、いろいろと検討しなければならないが、特に、日本クラインよりサイズが小さいこと、これは未知の分野で、至難の業だと答える。だから、世界の医療機器メーカーのどこも手を出さないのだろうと。

唐木田「真野の持ってきた話ですから、
   情に流される気持ちもわからなくはないです。
   社長、今うちがやらなければならないのは、こんな医療機器じゃない。
   夢はロケットだけにしといてくださいよ。
   万が一、帝国重工のコンペでサヤマ製作所に負けたら
   これまで投じた開発資金、どうやって回収するんですか。
   人工弁なんてやってる場合じゃない」




貴船、久坂、藤堂、椎名は、サヤマ製作所の試作の数字に満足していた。
いよいよ臨床試験だとよろこぶ面々。

椎名「そういえば、北陸医大の一村先生をご存知ですよね。
   以前教授のもとで、コアハートの開発にも携わっていた方ですよね」


その一村が、佃製作所を訪れたことを聞いたという椎名。
藤堂が、現在、一村が国産の新型人工弁の開発に取り組んでいるということを聞いていると言うと、椎名は、その開発の後ろ盾に貴船がなれば、サヤマ製作所と日本クラインが全面的に協力すると、ビジネスチャンスを狙って語りかけるのだった。
久坂と藤堂、椎名は新たなビジネスチャンスだと、貴船をけしかけるが、貴船は、一村と組むことが躊躇されるような事実があり、それを表に出すことができなかった。



航平は、真野に、プロジェクトに参加できないと電話する。
佃製作所にはその技術があるのかもしれないが、社員を養うためにもリスクを犯すことはできないと断る航平に、真野は、わかったけれど、自分は諦められない、と語る。

真野「社長、来ませんか、福井に。

   覚えていますか。
   3年前のこと。
   佃製作所が帝国重工を相手に真っ向から勝負を挑んだ時のことです。
   あのとき、財前部長も、うちの工場をその目で見て、
   部品供給に納得してくれたじゃないですか。
   今度は社長にも、こっちにきて、
   桜田さんや一村先生がやっていることを直接見ていただきたい。
   とにかく見てもらいたいんです。

   社長は、私にこうも言いました。
   仕事には夢が必要だって。
   ガウディは私の夢なんです。
   お願いします、社長。
   これがダメだったら、私、諦めますから。
   お待ちしています。
   どうか、どうかよろしくご検討ください」


真野の熱意に、一村、桜田はゆっくりと頷く。
そして、航平もまた、その熱意に動かされるのだった。

航平「見てみるか。
   真野のかけた夢が、どんなものか」




航平は、山崎と唐木田とともに、福井にいた。
今さら、編み物工場の見学なんてムダだという唐木田だったが、本社の全自動化された設備に驚くのだった。
次に人工弁開発の会社に案内された3人は、ドイツ製の機械を特殊素材用に改造したというその設備を、その後、経産省の補助金が下りて負担は半分になったが、自己資金でやってのけた、その熱意に驚く。

唐木田「理解に苦しみますね。
   これほどの工場をお持ちなのに、
   なんでわざわざ医療機器など手を出す必要があるんですか」


航平は、部屋の隅にまとめられている毛布に目をやる。
桜田が寝泊まりして開発を行っていることがわかる状況だった。

一刻も早く人工弁を完成させたいと言う桜田に、航平は尋ねるのだった。

航平「ひとつ聞いてもよろしいですか。
   心臓疾患で苦しんでいる人たちを救おうという
   この事業が尊いことはよくわかります。
   ですが、それだけでここまできるものなのでしょうか。
   あなた自身がここまで打ち込める理由は、何なんですか。
   もしかして、なにか他に夢があるんじゃ」

桜田「夢? そんなんじゃありません。
   これは、罪滅ぼしです。

   これは、あの、娘の結です。
   私がこの子に親らしいことをしてやったのは
   名前をつけてやったことくらいで
   この子が生まれてからも
   ずっと仕事に追われて
   家族で食事をしたことも数えるほどです。
   何が悪い。俺はおまえたちのために働いているんだ。
   そう思ってました。

   そんなある時、
   まだ幼い結が重い心臓弁膜症だと告げられました。
   すぐに手術をしたくても、
   幼い娘に合った人工弁がなくて
   ただ、なにもすることがなくて
   成長するのを待つしかありませんでした。

   その医療費を稼ぐために、
   結局、私は仕事仕事で。
   でも、もう、娘がやっと
   人工弁が入れられるだけの大きさに成長して
   手術を行ったんですが
   体が成長するたびに
   その大きさに合わせた人工弁に取り換えねばならず
   ある時、血栓で突然弁が動かなくなって
   すぐに緊急手術をしたんですが
   間に合わなくて。

   まだ娘は、たったの17歳でした。
   私はなにひとつ親らしいことしてやれなかった。
   なにひとつ、楽しい思い出を作ってやれなかった。
   だから一緒に撮った写真もこんなもんなんです。

   こんなことしても
   もう娘は戻ってきません。
   それでも、娘のような子どもや患者さんたちを救えるなら
   私にできることなら、なんでもやろう
   そう覚悟して、この事業を進めています。

   今さら何をしても、娘はもう二度と笑ってくれません。
   でも、その中で、この事業を成功させることだけが
   私の唯一の救済なんです。

   この編み機は、今回の計画の象徴です。
   佃さん、お願いします。
   どうかこの編み機を稼働させてください。
   あなた方の技術を、力を、どうか貸してください。
   お願いします」



桜田のことばに、航平と山崎は、お互いの顔を見る。
そして、航平は、唐木田に「どう思う?」と問う。

唐木田「仕事ってのは、いろいろですね。
   桜田さんとうちでは、仕事をする理由が違う。
   人の数だけ、仕事をする意味があるんですかね」


涙を流しながら、そう話す、唐木田。
その唐木田の心の変化に、航平は自分が感じたことを、唐木田もまた感じていることを知るのだった。

航平「そうかもしれないな。
   でも、根底は同じなんじゃないかな。

   桜田さん。
   日本が本格的なロケットを手掛けるようになってから
   55年が経ちます。
   今、私たちは純国産ロケットの打ち上げに成功し
   やっと世界と肩を並べられるようになってきました。
   ですが、そうなるに至った最初のきっかけは
   1959年に起きた伊勢湾台風だと言われています。
   死者行方不明者5000人以上
   未曾有の大災害でした。
   そういう被害を二度と出さないために
   気象衛星の打ち上げが急務となり
   ロケット開発は、
   今日に至るまでの進歩を遂げてきました。

   私にはどう逆立ちしたって
   桜田さんの悲しみはわかるものじゃない。
   ですが、娘さんのことがあったからこそ
   変わる未来もある。
   私はそう思います。
   そういう悲しみや後悔を
   プラスに変える力が技術にはあるんだ。
   新型人工弁の開発は、
   今はあなたにとっては贖罪なのかもしれない。
   ですが、それがいつか、夢だと言える日が来てほしい。

   私は技術者として、全力でそれをサポートしたい」



唐木田は、目の前の機械にかけられた「GAUDI」と書かれたプレートに目を止める。
ガウディ・・・それが、真野たちが開発する人工弁のコードネームだった。

真野「この計画は、ガウディ計画と呼んでます」

唐木田「ガウディか。良い名前だな。
   やりましょう、社長。
   私にも、小さな娘がいます。
   今ここでやらなかったら、
   私はあの子に父親としてなにも言えない。
   ガウディ・・・。
   私にとってのロケット、見つけました」


唐木田のことばに、その場にいた全員の心がひとつになる。
このプロジェクトの参加を渋っていた唐木田の決意、そして、彼自身の夢を見つけたと言うことばに、航平は宣言するのだった。

航平「どんな難問にも、必ず答えがある。
   挑戦し続ける限り、必ずその答えを見つけ出せる。
   今この瞬間から、佃製作所は全力でガウディに挑戦します



佃製作所も加わり、ガウディ計画が動きだした。




夢を持てなかった者たちが夢を見つけていく。
その姿には、感動しますね。
真野が、いきなり良い人になって再登場しました。
ヒゲがないだけで、ここまで好青年になるとは、という感じです。
また、ビジネスの世界にいる方には、理解しづらいアカデミズムの世界の微妙な状況に「あるある」と思いながら、見ていました。
次回もまた、いろいろな困難がガウディ計画に押し寄せてきます。



「下町ロケット」概要
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第5話 | 第6話 | 第7話 | 第8話
第9話 | 第10話(最終話)

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下町ロケット(2015)第5話 [ドラマ(日本)下町ロケット]

下町ロケット5.jpg


「下町ロケット」ロケット編のラストです。
基本的に、このブログはネタバレ度が高いです。
まるでドラマを見ているかのような、ゆえに「もうドラマ見なくてもいいんじゃない?」レベルの内容ですが、個人的には、このレベルのネタバレ度でなければ映像を見たいと思えないネタバレ大好き人間なので、もし、楽しみは取っておく派で「すべて見せないで」という方は、途中で読むのを止めていただければ幸いです。

さて、ポスト財前の座を狙う富山の悪意にみちた審査に、佃製作所は逆に結束し、全社員で困難に立ち向かい、1次審査に合格する。
しかし、航平の方針に反発する技術開発部の真野は、商品テストの試作品のひとつを不合格品とすり替えていた。
万事休すと思われた商品の再納品だったが、財前がその窮地を救い、無事製品テストに合格するのだった。
一方、宇宙科学開発機構(JAXS)の元同僚である三上は、航平をJAXSの要職に推薦していたが、航平は「夢は研究所じゃなくても叶えられる。俺はうちの会社で社員たちと一緒に夢を追いかけてみる」とその話を断るのだった。
いよいよ、部品供給の最終テストは、燃焼テストのみとなった。


【ストーリー】

富山は、佃製作所の納品された製品に明らかな動作不良が認められ、このままテストを継続する必要があるのか危惧している、と水原に報告する。
それに対し、財前は、交換したものでテストはクリアしたと伝えるが、水原は、テストを打ち切ると宣言する。

財前「お待ちください。
   品質ではなく納入ミスなどといった理由で部品供給を断れば、
   佃側も態度を硬化させる可能性があります。

   佃製作所を動かすのは、金ではない。
   モノをつくるメーカーとしてのプライドだ。
   もし交渉に失敗したら、それでスターダスト計画は終わる。
   君にその責任が取れるのか」


佃製作所は金で動くだろうと安易に考える富山だったが、財前のことばに、富山も水原もことばに詰まる。
結果、最後の燃焼テストも行うことが決まるが、水原は静かに財前に告げるのだった。

水原「もし、テストにクリアしたとしても
   部品供給には最大の壁が残されている。
   わかるな。財前」


燃焼試験の結果で、佃製作所との交渉の仕方を考えると言う水原は、引き続き、テストの責任者として富山を指名する。


宇宙科学開発機構(JAXS)の三上のもとに、電話がかかってきた。
相手は、水原だった。
航平をJAXSに戻そうとする話は、水原によって仕掛けられたものだった。
しかし、三上は「あいつは、佃製作所で夢を追いかけるそうです」と答える。ロケット部品の研究開発がしたいのだったら、JAXSの方が良いはずに決まっていると声を荒げる水原に、三上は静かに答えた。

三上「7年ですよ。
   7年という月日が、根っからの研究者だった佃という男を変えたんです。
   今の佃航平は、佃製作所という社員200人の会社を経営する、
   立派な経営者なんです」


三上のことばを聞き、水原は、中小企業と侮っていた相手にこれまでの戦略が使えないことを思い知らされるのだった。


航平は、真野を呼んでいた。
なぜ、製品をすり替えたのかと問う航平に、真野は、社長の夢物語にはついていけないと答える。

航平「俺はな、仕事ってのは、
   2階建ての家のようなもんだと思うんだよ。
   全体を支える1階部分は、
   めしを食ったり、生活するための金を稼ぐためにある。
   だが、それだけじゃ窮屈なんだ。
   だから夢を見るための、2階部分が必要なんだ。
   夢だけじゃ家は潰れちまうが、めしだけ食えても
   そんな家は狭くて退屈だろ。
   仕事には夢が必要なんだよ」


それに対し、真野は、自分の夢を潰したのは社長だと反論する。ロケットエンジンばかりに予算を費やし、真野が開発したステラエンジンは制約ばかりで、夢なんて持てない、と。

航平「制約がない環境なんてない。
   おまえはただ、甘えているだけだ」


そんな航平に対し、真野は辞表を出す。
航平は、「辞めて夢が持てるんなら、そういう仕事を探すんだな」と真野を止めることなく、辞表を受け取るのだった。自分を引き留めようとせず、「二度と俺の前に顔を出すな」とまで言う航平に、真野は、悲しみに満ちた目で社長室を去るのだった。
航平もまた、去っていく真野の仕事に対する甘さを嘆きながらも、去る者を追いかけることもできない自分に悔しい思いを抱くのだった。

財前は、部品供給後の「最大の壁」について、思案していた。



利菜は、自分の正直な気持ちを航平に告げてはどうかという母・沙耶に言われたことばを思い出していた。
河川敷で航平の帰りを待つ利菜に、航平が話しかける。
自分を待っててくれたのかと言う航平に、思わず強がりを言ってしまう利菜。何かを話しかけては口をつぐむ利菜に、航平とひさしぶりにバトミントンをしようと誘う。
バトミントンをしながら、航平は、なぜ、利菜が怪我が治っていないふりをしていたのか、そんなにバトミントンが嫌いになったのかと問う。
「嫌いになれるわけない」と利菜は答えるのだった。

ジュニアの大会でたまたま準優勝して、高校に入ってからもインターハイ優勝をめざしてがんばってきたが、高校には自分よりうまい人はたくさんいて、とうとうレギュラーから外された、と利菜は語る。パパのように夢をあきらめないでがんばろうと努力したが、やればやるほど苦しくて、どんどんバトミントンが嫌いになっていくような気がした、という。
そんな利菜に、航平は不器用ながらも語るのだった。

航平「もう、勝ち負けはいいんじゃないかな。
   好きだったら、納得のいくまでバトミントンを続けりゃいいし
   ダメなら他にもまだまだいくらでも
   夢中になれるのが見つかるよ。
   焦らずに、ゆっくり探せばいい」

利菜「私のこと、信じてくれる?
   だったら、ちゃんと見ててね、私のこと。
   パパとママみたいに
   私も自分の夢を絶対見つけるから」


娘のことを信じられない親がいるものか、と言う航平に、利菜の素直な気持ちがあふれていく。
航平もまた、苦悩して、今また立ち上がろうとする利菜の姿に、涙があふれるのだった。



佃製バルブシステム燃焼試験当日を迎えた。
この燃焼試験が最後のテストだと思っている航平と山崎に、財前は、実は最後の壁が残っていること、すなわちキーデバイスの完全内製化をめざす藤間社長の説得が必要であることを告げる。

財前「燃焼試験に成功さえすれば、社長は必ず私が説得します」

財前の並々ならぬ決意を前に、航平はことばを発しようとした。
が、試験が始まり、航平と山崎はその結果を見守る。

しかし、エンジン点火から30秒が過ぎたとき、異常発生で緊急停止することに。バルブシステムが作動しなかった可能性があったのだ。
バルブシステムが作動しなかった可能性があるということで、その原因をつとめるため、帝国重工と佃製作所でそれぞれ検証が行われる。バルブシステムが作動しなかったことが原因であるが、佃製作所での検証の結果、バルブシステムそのものには異常はなかった。
しかし、当初から、佃製作所のバルブシステム、すなわち中小企業がつくるような製品に対して快く思っていなかった富山や、同じく帝国重工宇宙開発事業部の近田は、帝国重工側の製品の検証させてくれと訴える佃製作所の申し出を聞きいれようともしない。

近田「おたくさ、ロケットエンジンのバルブを、
   その辺の民生品レベルで考えているんじゃないの。
   基準が甘いんだよ。素人じゃあるまいし」


航平たちに暴言を吐く、近田。
このままじゃ、うちも納得はできない、他の製品も検証させてくれという航平のことばに、原因がわからない限り、我々は前に進めないと、財前が許可をする。
期間は1週間という財前に対し、富山は3日と期限を切る。その無茶な期限に、財前は思わず口を挟もうとするが、このテストの責任者は自分であるという富山に、航平は3日で原因を解明すると答える。


その夜から、航平と山崎、そして埜村などの8名は、帝国重工に泊りこみ、浅木などのサポートを得ながら不眠不休の検証を行っていた。
富山や近田は、その間も高圧的な言動をくりかえしていた。それに対し、航平たちはなんとか原因を探ろうと、佃製作所の社員たちと一丸となって、部品をひとつひとつ分解して検証していたが、原因を特定できずに2日間が経っていた。

原因の糸口を見いだせず、困り切った航平は、ふと、信じてくれるなら、ちゃんと見ていてほしいという利菜のことばを思い出していた。
そこで、自分たちが信じているバルブシステムをワイヤーカットで分解し、もう一度調べることを提案する。

しかし、バルブシステムにはやはり異常はなかった。
力なく椅子にもたれる航平は、そのとき、光の反射で、バルブシステムに何かが擦れた跡があるのを見つける。そこで、その原因究明のため、調圧バルブの配管を調べることに。その担当者は、佃製のバルブを「民生品」と言い捨てた近田であったが、その配管をファイバースコープで確認したところ、思いがけないものが写っていたのだった。


約束の3日が経ち、航平たちは、原因が見つかったと報告する。
配管に、二酸化ケイ素の粒子が付着していたのだった。
その二酸化ケイ素が原因でバルブが誤作動を起こしたのであれば、その発生は、調圧バルブのフィルタであるという。そこで、使用されていたフィルタを確認したところ、そこには二酸化ケイ素が付着していた。
フィルタの製造時に二酸化ケイ素が出ることがあり、今回、誤作動の原因となった二酸化ケイ素も、フィルタ製造時に作られた可能性が極めて高い。そして、今回の燃焼実験によって高圧ヘリウムガスでフィルタからはがされた二酸化ケイ素が、佃製のバルブシステムに入り込み、その結果、佃製のバルブに傷が残っていたのだった。

このフィルタを作ったのは、近田だった。
二酸化ケイ素ごときでバルブが作動しなくなるなんて、と述べる近田に、拡大鏡で確認できるくらいの大きな二酸化ケイ素が調圧バルブのピストンとシリンダーの間に挟まったとしたら、誤作動が起こる可能性はあると山崎は告げる。
この限りなく確信に近い推測に対し、これが原因だと航平は結論付けた。

財前は、製品テストの段階では異常が出なかったのに、なぜ今回異常が出たのかと問う。航平は、製品テスト段階では、佃製のフィルタを使っていたから問題はなかったが、燃焼テストでは帝国重工製のフィルタを使いたいということで、富山がその交換を許可したことを伝える。

財前「なるほど。君の独断の結果が、これか」

そう言って、富山を見る財前。
富山は、なぜこのような単純なミスを起こしたのかと近田を責める。

近田「佃のフィルタより、うちのフィルタの方が
   優れているに決まっているじゃないですか。
   そう思ったから、主任だって換えるように指示したんでしょ」


憎々しげに近田はそう吐き捨てる。
問題があるとわかっていたら指示しなかった、おまえのミスだ、と近田を責める富山。

財前「富山。責任者はおまえだろ。
   近田も、発言は立派だが、見苦しいぞ。
   これがわが帝国重工の技術か。
   恥を知れ」


呟くような財前のことばに、帝国重工の面々はことばを失う。

富山「申し訳ありません。
   ですが、私は、帝国重工の技術部を任された人間として、
   間違ったことをしたとは思っておりません。
   すべてのキーデバイスを内製化し、自社開発する
   それこそがスターダスト計画の根幹であり、
   藤間社長が目指す最優先事項だったはずです。

   であれば、わが社のフィルタ使用を検討するのは
   当然のことでしょう。
   本来なら、バルブシステムそのものも我々の手で
   作るべきだったはずです。
   あなただって最初はそうおっしゃっていたはずじゃないですか。
   財前部長。

   なのに、ロケットエンジンの要ともいえるバルブシステムを」

航平「富山さん。
   確かにうちは帝国重工さんから見れば、
   吹けば飛ぶような小さな会社です。
   でもね、社員のモノづくりに対する熱意だけは、
   けっして引けをとりません。
   今回の原因が究明できたのも、
   ここにいる我々の力だけじゃない、
   他にも大勢の社員たちが、この3日間、会社に泊りこんで、
   原因究明に我々と同じように全力を尽くしてくれたからです。
   そういう社員たちの力があったからこそ、
   あのバルブシステムを生み出すことができたんだ」

富山「佃プライドってやつですか。
   中小企業には中小企業のプライドがあると
   そうおっしゃりたいわけですか」

航平「確かにそれもあります。
   ですが、今、私が感じていることは、少し違います。
   私たちがここまでこれたのは、
   なによりもまず財前部長のお力添えがあったからです。
   それと、この3日間、一緒になってがんばってくれた
   浅木さんをはじめ帝国重工の研究員の方たちのおかげで
   答えを見つけ出すことができました。

   なにかを成し遂げようとする大きな夢の前では、
   大企業も中小企業も、帝国重工も佃製作所もない。
   良いものを作りたいという、たったひとつの思い、
   技術者としてのプライドがあるだけだ。

   富山さん。一緒にやらせてください。
   力を合わせて、純国産ロケットを打ち上げませんか」


航平のことばに、帝国重工の面々から拍手が起こる。

5日後、再び燃焼システムの試験が行われ、過去に例のない数値をたたき出して、佃製作所のバルブシステムはテストに合格した。



本社では、水原が財前に、佃製のバルブシステムを採用するにあたり、社長を説得できるかと問いかける。
水原が知る限り、藤間社長が自分の意見を変えたことはなく、しかも、今回のスターダスト計画は、次期経団連会長の座を視野に入れた、重要なプロジェクトであった。だからこそ、キーデバイスの完全内製化によって、帝国重工の技術力を国内外に向けてアピールしてきたのだ。そこに、佃製作所などという中小企業の部品を入れることは、藤間社長、そして会社のメンツをつぶすことになる。

水原がこだわってきたのは、そこだったのだ。
しかし、この段階になり、水原も覚悟を決める。
藤間社長の説得を、次の役員会で財前に託す、それが水原の出した結論だった。



財前は、航平を盃を酌み交わしながら、藤間社長を説得するのは、自分の仕事だと伝える。
その財前に対し、航平は、社長の説得は並大抵の難しさではないとわかっているが、それでも、ふしぎと不安はないと語る。

航平「あとは、あなたを信じます」

航平の信頼に満ちたまなざしに、財前は、わきおこる感動を胸に、決意を新たにするのだった。


役員会の日、財前は、大型水素エンジン開発段階で起こった問題解決について、その経緯について報告する。


調圧バルブのベンチマークのデータをパワーポイントで提示しながら、財前は語る。
帝国重工の開発したバルブシステムは、信頼度では他国の製品を上回るものだったが、特許申請の段階で僅差で出遅れ、幻の製品となった。
当然、役員たちは、特許買い取りに向けて交渉しているのかと問うが、佃製作所は部品供給を望んでいると伝える。そして、キーデバイスの内製化という原則に逆らうものであるが、社益に寄与する例外として認めてほしいという財前に、藤間社長は「ありえん」と言い放つ。

席を立つ藤間社長に、財前は7年前に打ち上げに失敗した大型ロケットに搭載されたセイレーンというエンジンのこと、そして、その画期的なエンジンの開発主任が佃航平であることを伝える。
セイレーンが失敗したのは、燃料計のトラブルであり、その根本的な問題はバルブシステムにあったことを突き止めた航平が、それに特化した研究開発をこの7年間継続して行っていたこと、バルブシステムはキーテクノロジーであること、そして佃製のバルブシステムが現在の最高基準のものであること、それをデータとともに提示するのだった。

「佃製のバルブを搭載しなかった場合、どうなる?」と藤間社長は問う。
考えられる結果としては、現在の帝国重工のノウハウでは、これ以上のものを開発することは難しく、旧製品では国際競争から脱落することは免れないということ、そして帝国重工が採用しなければ、競合他社が佃製のバルブを採用する可能性があり、そうなれば、圧倒的な技術的優位のもとに宇宙航空戦略を推進するというスターダスト計画が崩壊する、というものだった。

もう一度、特許買い取りで交渉しろという役員たちに対し、それは無理だと財前は告げる。

財前「自分の手掛けた部品でロケットを飛ばすことこそ、
   佃社長の夢だからです」


夢など、青臭いことを言うなという役員に対し、藤間社長はぎっと睨みつける。

財前「私もはじめはそう思っておりました。
   ですが、その一途な思いがなければ、
   これほどの性能のバルブは生まれなかった。
   佃社長は、研究所を追われ、中小企業の経営者となってからも、
   ずっとその夢を持ち続けた。
   藤間社長もそうでいらっしゃったはずです。
   以前、工場を視察していただいたときの社長を見て、
   もしかしたら、と思いました。
   社長もかつてはわが社の優秀な技術者であられた。
   そしてそこから、宇宙航空ビジネスのさらなる理想実現のために
   経営者としての道を選ばれた。
   そんな藤間社長ならば、
   佃氏の思いを理解していただけると、私は信じております。

   バルブを制する者、ロケットエンジンを制す。

   佃氏はそのことを知りつくした男です。
   これを超えるバルブは、今この世の中のどこにも存在しません。
   世界最高のバルブシステムです。
   ご承認いただけませんでしょうか」



藤間社長は腕を組み、ゆっくりと語る。


藤間「バルブを制する者、ロケットエンジンを制する、か。
   7年前、もしもその男が作ったセイレーンが
   打ち上げに成功していたら
   我が国の宇宙産業は、間違いなく世界のトップに立っていた。

   賭けてみるか。
   どん底から這い上がった男に。

   わかった。このバルブを搭載しよう」




佃製作所の部品供給が認められた。
この7年、あの打ち上げ失敗を糧に夢をあきらめなかったのは、藤間社長も同じであるからこそ、航平に賭けたと思う、と財前は航平に語る。

財前「あなたの言ったとおりでした。
   どんな難問でも、挑戦し続ける限り必ず答えは見つかる。
   私も今はそう信じられる」


自分の父親も中小企業の経営者だったこと、ワンマンで周りをふりまわしてばかりの父に反発して帝国重工に入ったが、今は帝国重工に入ったことを心から誇りに思う、そう思わせてくれたのは航平だと財前は言う。
感謝の気持ちを述べる財前に、自分も7年前の失敗がなければ父親の会社を継ぐことがなかったかもしれないと、航平も答える。
そして、一緒に打ち上げを成功させようと、2人はかたく握手するのだった。



それから半年後。
スターダスト計画として、種子島宇宙センターから佃製バルブシステムを搭載したX-ⅡAの打ち上げが行われた。
みんなが見守る中、航平と沙耶は電話で話をしていた。利菜に打ち上げを見せてやってほしいと沙耶は言う。

ロケットの打ち上げを、佃製作所の面々、そして利菜たちが見守っていた。利菜は、目を閉じ祈る航平の姿、今まさに夢をかなえようとしている父の姿に、胸に迫るものを感じていた。
佃製作所を去った真野は、先端医療研究所にいた。そして、その様子を祈るように見つめるのだった。

大気圏を脱出し、軌道に乗ったロケットは、衛星分離を果たした。
打ち上げは成功だった。

よろこぶ帝国重工の面々。
財前は電話で、打ち上げの成功を航平に報告する。打ち上げ成功の知らせを受け、佃製作所のみんなは、声もなく、涙するのだった。

利菜「パパ。私もロケット作りたい。
   だから、本気で慶応理工学部、受けてみることにする」


利菜のことばに、航平は、自分の夢が周りをふりまわしていただけではなく、周りに夢を与えていたことを知るのだった。




次回からは、医学界に挑戦です。
池井戸潤の最新作『下町ロケット ガウディ計画』(2015)が原作の、医学会とNASAをライバルに据えたガウディ編の開始です。
真野が、なぜ先端医療研究所にいたのか、ここで謎が解けました。

「半沢直樹」では、銀行業界の人間が、実際はちょっと違うよ、と言いながらも見ていたそうですが、このロケット編では、そのことを実感しました。内情を知っているだけあって、実際はそううまくはいかないよ、ということがわかりつつも、純粋に楽しめました。
暑苦しいほどのキャラが際立っている佃航平ですが、だからこそ、周りを動かしていくのでしょう。
情熱というのは、大切です。



「下町ロケット」概要
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第5話 | 第6話 | 第7話 | 第8話
第9話 | 第10話(最終話)





下町ロケット2 ガウディ計画

下町ロケット2 ガウディ計画

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2015/11/05
  • メディア: 単行本



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下町ロケット(2015)第4話 [ドラマ(日本)下町ロケット]

下町ロケット4.jpg


ロケット編もいよいよ佳境です。
今期、一番おもしろいドラマだと思いながら見ています。
今回は、TEAM NACSの重ちゃん(戸次重幸)が出ていましたが、安田さんとの絡みはありませんでした。
しかし、それよりも気になったのが、営業第二部係長の江原役の和田聰宏さんが、これほどサラリーマンが似合う俳優さんだとは思いませんでした。情熱的な、良い俳優さんですね。

さて、佃製作所のバルブシステムをめぐって、帝国重工との本格的な駆け引きが始まった。
主要部品の内製化にこだわる帝国重工の財前は、航平からの部品供給の申し出に難色を示すが、佃のバルブシステムの特許がなければ、藤間社長のスターダスト計画が頓挫してしまうのも、また事実であった。
佃製作所内では、帝国重工への部品供給に反対する声もあり、財前はそれを理由に部品供給を断ることを目的に佃製作所を訪れる。しかし、そこで、財前が目にしたのは、丁寧で明るい社風と手作業による技術、製品の高い品質であった。財前が思い描く、中小企業の姿とは大きくかけ離れた佃製作所の姿に、中小企業の可能性と、航平の夢に共感した財前は、部品供給の可能性を検討してくれるよう上司の水原に進言する。


【ストーリー】

財前「安易な理由で部品供給を拒めば、
   態度を硬化させた佃からは特許使用さえも難しくなります。
   そうなれば、スターダスト計画そのものが破綻します」


このことばは、帝国重工に対する財前の挑戦でもあった。
藤間社長の内製化に反する財前の進言に、水原は難色を示すが、スターダスト計画の破綻という財前のことばに、一度は考えると返答する。
しかし、水原もまた、藤間社長の意向に怯え、今回の部品供給の検討のことを言い出せず、特許買い取りのみにしか選択はなく、それを必ず叶えると言うことしかできなかった。
その水原に、財前のやり方に不満を抱き、“ポスト財前”の立場を狙う富山は、あえて佃製作所に対する財務・品質条件に関するテストを行い、自分がそのテストの担当者として不合格に導けば、部品供給の選択肢をつぶし、特許使用契約の交渉を行うことができると提案する。水原は、佃製作所との部品供給の話を秘密裏に処理するために、その任務を富山に任せるのだった。

航平たちは、そのテストの入念さに驚く。

富山「製品テストだけでなく、御社の財務状況も審査させていただきます。
   それから、実際に御社の製作現場を見させていただき、
   うちの要求水準を満たしているかもチェックさせていただきます」


1週間後には、品質テスト用の試作用バルブ20個の提出も求められた。
航平は、社に戻ると、今回の帝国重工用のプロジェクトチームを立ち上げることにした。
メインとなる技術開発部からは埜村、その埜村のサポートとして真野が抜擢される。
財務の担当は、経理部の迫田、営業部の江原が抜擢される。
埜村以外は、今回の部品供給に対して批判的なメンバーであり、抜擢された本人たちも戸惑い、反発するのだった。

航平「このプロジェクトをやり遂げることで、うちが得る方は計り知れないんだ。
   まずは力を合わせてテストを乗り切ろう。
   そうすれば必ず答えは出てくるんだ」


予想以上の社員たちの反発に、航平は「本気で話せば、みんなわかってくれると思っていたんだが」と山崎に苦しい気持ちを吐露する。
自分の夢ばかりを追いかける自分は、経営者には向いていないのか、と。

そんなとき、航平にかつての同僚から電話がかかってくる。


迫田、江原、真野は、プロジェクトチームに抜擢された不満を共有する。
「どうせ、あんな厳しい審査、通るわけがない」と最初からやる気のない迫田と江原に対し、真野はまた少し違った考えを持っているようだった。

真野「どうせよろこぶのは水素エンジン開発の連中だけだ。
   あんなもの製造したところで、なんのメリットもない。
   うちは小型エンジンのメーカーなんだ」


真野の抱える思いは、暗く、深いものだった。


富山の厳重すぎるテストに対して、財前が苦言を述べるも、富山は自分が水原に一任されていると突っぱねる。
その富山の態度に、財前は暗い思惑を感じ取るのだった。

財前「富山、落とすためのテストはするな」

工場視察にやってきた藤間社長に、財前は佃製作所の部品供給の件について話をしようとするが、やはり言い出せずにいた。


宇宙科学開発機構(JAXS)の元同僚である三上と会った航平は、思わぬ話を聞くことになる。
本木教授の来年の退官に伴い、航平にJAXSに戻らないか、というものだった。
教授の後任の候補に航平の名が挙がっているというのだ。
JAXSを離れてのブランクはあるものの、論文の数と質については申し分ないし、そして、あのバルブシステムの特許があれば、後任として申し分はないというのだ。
航平は、自分にはまだ経営者としての仕事が残っていると述べるが、三上は、それが航平の本心なのかと聞くのだった。

三上「会社の人間は、おまえのその考えについてきてくれているのか?
   はっきりいっておまえは、やっぱり経営者というよりは研究者なんだよ。
   なあ、佃。
   教授として、この国の宇宙航空産業を背負って立つ未来の若者を
   おまえのその手で育ててやってくれないか。
   彼らに夢を見せてやってくれよ。
   かつてのおまえがそうであったようにさ」


三上のことばは、航平に鋭く突き刺さるのだった。
現在、社員からは部品供給に関する理解を得られておらず、自分が経営者としては失格ではないか、やはり自分は研究者じゃないのかと思い悩む航平は、自分の宇宙に対する夢、それが叶うかもしれない恵まれた職場に戻ることができるチャンスを目の前にして、三上のことばを断ることもできないのだった。

利菜は、夢を語りながらも、娘のことを正面から見てくれない、それはすなわち娘を冷たく突き放していることにも気づかない航平に対して、怒りを爆発させる。
自分のことを見てほしいのに、見てくれない。
夢を追いかけることはつらいのに、両親は夢ばかりを追いかけて、その苦しみをわかってくれない。
利菜の悲しみに満ちた叫びに、航平はことばを失うのだった。


部品供給テストの1日目がやってきた。
富山は、自分の同期であり、水原の息のかかった盟友・溝口と田村を引き連れ、佃製作所に乗り込んできた。
佃製作所の製造環境と工場内のマネジメント評価を請け負うのは、生産管理部主任の溝口、そして企業審査の専門家である審査部主任の田村は、不合格にするために、悪意をもって高圧的な態度で佃製作所の社員と対峙するのだった。

溝口は、手作業を行う社員たちの姿に、侮蔑のまなざしを向ける。

富山「手作業は、所詮手作業ですよ。
   人間の感覚なんてのは、思ったよりあてになりません。
   手作業の方が価値があるというのは、
   私から言わせれば、技術大国日本と呼ばれた頃の愚かな妄想に過ぎない」


富山のことばに、航平は唖然とする。

一方、財務の方も、田村から営業赤字について容赦ない非難を浴びていた。
営業赤字に対して、言い訳ばかり述べて、これだから中小企業は甘くて良い、そのような甘い考えでは帝国重工との取引は行えない、という見下すような言動に、迫田、江原、唐木田、津野、殿村は悔しい思いを抱く。

開発部のおけるクラス5のクリーンルーム化に、普通開発事業部の浅木は感心するが、溝口は、中小企業には不釣り合いな過剰設備だと突き放す。

溝口「規模と作業内容に見合わないクリーンルームに金をかけて、
   一方でちまちまとした手作業に依存してる。
   まるで統一感のないバランスの悪い環境ですね。
   試作品工場として高い評価がほしかったら、
   もっと身の丈ってものを知るべきですな」



そのとき、田村も、帝国重工との取引を希望するなら、明日までに資料を用意するよう、無理難題を突き付けていた。

帝国重工の言動から、最初から取引を断るためにテストに臨んでいるのだということに虚脱感を覚える航平、山崎、津野、唐木田であった。
そんな仲間に対し、殿村は激を飛ばす。

殿村「そんなんで諦めるんですか。
   うちは一時的に営業赤字にはなっていますが
   今までの利益の蓄積も厚いし、このまま潰れるような会社ではない。
   そんなことは誰が見ても一目瞭然なはずです。

   数字は嘘をつきません。
   うちがいつ創業して、今までどれだけの利益をあげてきたか
   自己資本がどれだけ分厚くて安定性が高いか
   疑う余地はありません。

   いくら担当者が悪意の評価をしたとしても、
   帝国重工にだってきちんと数字を読む人間がいるはずです。
   正当な評価をしてくれる人が必ずいるはずです。

   ですから、社長。
   どんとぶつかっていきましょうよ。
   佃製作所は良い会社なんです。
   元銀行員を信用してください」



社長の人柄にふれてなのか、最近、とみに良い人度を高めている殿村であるが、その殿村のことばに、知らずに卑屈になっていたかもしれないと反省する航平たちだった。そして山崎は、若手も落ち込んでいるから、若手のフォローをしないと、と述べる。

一方、これで部品供給の線もなくなっていいんじゃないかと言う迫田に対し、江原は悔しい思いを吐露する。

江原「俺は本当にばかだ。
   あんなテストなんて適当に流して不合格ならそれでいい
   最初はそう思っていた。
   でも、実際始まってみたら、俺自身が否定されている気がしたんだよ。
   おまえらは所詮中小企業だ。
   いい加減だ。
   甘ちゃんだって。

   でも、そうじゃないだろ。
   あいつら、技術でうちに先越されたんだぜ。
   つまり、技術力ではうちが上なんだ。
   ナメられる筋合いじゃない。
   あんなふうに偉そうな顔してあらさがしするのがテストなら
   それで俺たちの何がわかるっていうんだよ。

   部品供給が良いとか悪いとか
   そういう問題じゃない。
   これは、俺たちのプライドの問題だ。

   見下されっぱなしで、黙ってられるか」


江原のことばに、迫田もまた、町工場の意地を見せてやると意気込む。

午前2時。
社長室で眠ってしまった航平は、殿村に案内されて見たものは、「佃品質 佃プライド」と掲げたポスターのもと、江原の意気込みに応えてテスト対策をする社員たちの姿だった。
また、開発部でも、山崎を中心に皆が納品に合わせてがんばっていた。その様子を、静かに見つめる真野だった。


部品供給テスト2日目。
納品は間に合い、溝田と田村が佃製作所にやってきた。

開発部では、佃の製品と、競合他社の製品(ナカシマ工業)の比較テストを行っていた。
溝田は、最初の確認したシリンダーをナカシマ工業の製品と思い、すばらしいと述べ、次に確認したシリンダーを佃製作所の製品だと思い、60点と点数をつけた。しかし、最初のシリンダーこそが佃製作所の製品だった。
自分がバカにされたと思い、憤る溝田に対し、あなたが良品と粗悪品を見分けられる人だということがわかったと航平は言う。

航平「帝国重工マンとして曇りのない目で正当な評価をしてくださると信じています」

悔しさに舌打ちをして去っていく溝田とは別に、浅木はその手作業による高い技術に対し、素直に称賛するのだった。


田村もまた、昨日の課した書類をすべて用意した佃製作所側に、驚きを隠せないでいた。
それでも、赤字には変わりはないと突っぱねるが、迫田は、「赤字を隠そうとは思いません」と言い返す。

迫田「会社を経営していれば
   業績が良い時も悪い時もあります。
   ですが、これだけは断言できます。
   うちの財務表に記載されている数字は正しい。
   良ければ良いなりに、悪ければ悪いなりに。
   会社の姿を映し出す、そういう財務を目指してきました。
   資料の数字、どこか間違っていましたか」


赤字には変わらないという田村に対し、迫田はさらに今後の売上予測も提出し、今期は黒字であることを示す。
それに対しても、そんなものはあてにならないという田村に、江原は、経営計画や売上予測を机上の空論だと言う田村には資料を評価する資格はない、とかみつくのであった。

江原「あなた、いったい何しにここに来ているんですか。
   我々は貴重な時間を費やしてそれだけの資料を作成しているんですよ。
   しっかり評価する気がないなら、やめませんか」


田村は激昂し、やめていいならやめてやると帰り支度と始める。
その田村たちの姿に、殿村は静かに語るのだった。

殿村「なにか勘違いされていませんか、田村さん。
   今回のテストは、帝国重工がうちを評価するだけじゃない
   うちもまた帝国重工を評価しているんですよ。
   もし仮に帝国重工が、正確な判断もできないような会社ならば
   うちとしてもそんなところとつきあうわけにはまいりません。

   わかっていないのは、田村さん、あなたの方だ。
   佃のバルブシステムは、世界の最先端技術です。
   御社以外にもその特許に興味を示す企業は
   世界中にたくさんございます。

   もし、うちのバルブがなければ
   スターダスト計画は頓挫するんじゃございませんか。

   佃製作所が技術力と意欲にあふれた
   どれほどすばらしい企業であるか
   そんなこともわからない相手に、部品供給など無理。
   ましてやうちの大事な特許を預けることなど
   とうていできません。

   この取引は、うちの方からお断りします」


殿村のことばに、田村も弱点を突かれ、黙り込む。
そのようすを部屋の外からこっそり聞いていた航平は、思わずガッツポーズをするのだった。


財務評価システムの点数は71点で優良であり、また生産現場もトップレベルで文句の言いようがない。
部品供給をなんとしてでも避けたい富山の思惑とは裏腹に、社命で評価を行っている以上、溝口も田村ももう対処は取れないのだった。


佃製作所では慰労会が行われていた。
そこでは、みんなが殿村をたたえたが、しかし殿村もまた「佃品質 佃プライド」のポスターに感動し、自分がようやく佃製作所の一員になれた気がすると伝える。
また、迫田と江原も、部品供給に反対する自分たちをプロジェクトチームになぜ入れたのかと航平に問うが、部品供給に反対するくらい会社のことを思ってくれていたからだと言う航平のことばに、自分たちが会社にとって重要な人物として認められていたことに胸を熱くするのだった。


利菜と沙耶と会っていた。
航平もまた、夢に敗れて会社を継いだというのに、夢を語ることに苛立ちすら覚える利菜だったが、沙耶は、それでも航平が夢をあきらめず、努力していたことを告げる。沙耶は、利菜に自分の素直な気持ちを航平に告げてはどうかと伝えるのだった。


佃製作所では、みなが打ち上げをしている中、埜村と立花が、製品の精度を高めたいと作業を始めていた。
そこで、立花は、不合格品の中に、納品したはずの製品があることに気づく。
帝国重工では、まさに、そのすり替えられた不合格品が、異常な数値を示していた。


不合格品にすり替えたのは、川本だった。
真野の指示で製品をすり替え、これでテストにも不合格になって良かったじゃないかと言う真野を、江原が殴りつける。
自分も最初は同じ気持ちでいたことを航平に謝るとともに、今は、部品供給や特許使用契約など関係なく、帝国重工に対するプライドで戦っているのだと江原は語る。
その上で、航平とともに、部品の差し替えに自分も付いていくと伝える。


帝国重工では、富山の指示で再テストは行わないことになっていた。
航平と江原を前に、浅木は迷う。
佃製作所の技術を見たからこそ、自分も佃製作所と一緒に仕事がしたい、と、浅木は財前に事情を話すのだった。
浅木から連絡を受けて、財前がやってくる。富山の指示、それは水原の指示を無視して、差し替え品での再テストを指示する財前は、すべての責任を追うと社員たちに伝えるのだった。その財前の姿に、航平は心が熱くなるのだった。


夜が開け、航平と江原が戻ると、社員たちがそのまま帰らずに待っていた。
テストは無事合格となったことが社員たちに伝えられる。
よろこぶ社員たち、そして、このテストに全力で向かっていく佃製作所の姿に、航平は、三上に電話をするのだった。
研究所には戻らない、と。
自分は、この佃製作所で夢を叶えると、力強く語るのだった。



さて、次回は、ロケット編のラスト。
無事、佃製作所は部品供給できるのか、手に汗握る展開です。




「下町ロケット」概要
第1話 | 第2話 | 第3話 | 第4話
第5話 | 第6話 | 第7話 | 第8話
第9話 | 第10話(最終話)

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下町ロケット(2015)第3話 [ドラマ(日本)下町ロケット]

下町ロケット3.jpg

第3話の平均視聴率は、自己最高となる18.6%。
確かに、おもしろいですから。

TBS版「下町ロケット」のキャストに芸人さんが配されているということで、賛否両論の意見があったようですが、メインキャストが安定感抜群の実力派俳優が顔をそろえていますし、神谷弁護士役の恵さんは、いい演技をしていたと思います。
そして、次回から、TEAM NACSの戸次重幸さんの登場ですか。こちらも楽しみです。


さて、ナカシマ工業との訴訟で事実上の勝利を手に入れた佃製作所には、多額の和解金が入ることになった。
そのうえ、帝国重工との特許売却もしくは特許使用契約を結べば、さらにノーリスクの大金が入ってくるということで、社内は大いに盛り上がる。
しかし、ひとり航平だけは別の可能性を探っていた。
特許売却か、使用契約か、それ以外の選択か。
一方、佃製作所の事実上の勝訴に、帝国重工の財前も焦っていた。
資金の確保ができた佃製作所はおそらく特許使用契約を求めてくるだろう、と。「スターダスト計画」の遅れを取り戻すためにも、バルブシステムの使用権利を早く手に入れたいと、富山とともに航平の元に訪れた財前は、そこで、航平から予想だにしなかった提案を聞くことになる。


【ストーリー】

帝国重工開発部の仕様変更で、5億円の予算オーバーが報告された。
しかし、藤間社長にとってはすでに各国の宇宙事業団体から問合せが急増しており、世界的に注目をあびている「スターダスト計画」の成功こそが重要だった。
財前の肩にプレッシャーがのしかかる。

宇宙航空部本部長の水原に、佃製作所との特許使用契約もやむを得ないと説明をする財前は、早急に使用権利を確約するため、佃製作所に向かう。
しかし、そこで航平が提案したのは、特許売却でも特許使用契約でもない、帝国重工への部品供給であった。
部品供給ということは、帝国重工の下請けになるということであるが、航平はそれでも良いという。

富山「そもそも作れるんですか。
   失礼だが、この規模の会社にうちが要求する水準の部品ができるなんて、とても思えない」

航平「お忘れなく。
   うちは帝国さんより先にあのバルブシステムを開発したんです」


航平のことばに、プライドを傷つけられた富山は黙りこむ。

財前「部品供給の道があるかどうか、社に持ちかえり上と相談してみます。
   検討はしますが、正直、ご希望に添える保証はありません。
   そのときは、特許使用の線でお願いできますか」

航平「それは、理由にもよるかな」


財前は、社に相談することなど考えていなかった。
しばらく答えを保留し、相談したが許可が下りなかったと言うだけだと富山に言い放つ。
その間、佃製作所の弱みを探しだし、なんとしてでも特許使用契約に持ち込む算段なのだ。


一方、航平の判断に、ノーリスク・ノーコストで多額の金を得られると思っていた第二営業部長の唐木田は猛反発する。
エンジンメーカーならば、部品を供給するのが普通である、と航平は言う。

航平「金の問題じゃない。これはエンジンメーカーの夢とプライドの問題なんだ」

第一営業部長の津野は、航平がいたからこそ特許が生まれたのだから、航平が判断すべきだと語る。
技術開発部部長の山崎は、ロケットエンジンに部品供給したいと、自らの思いを語るが、もし、実験に失敗したとき、責任をとらされるのは佃製作所だという唐木田の声に、黙り込む。
経理部部長の殿村は、現在の財政状況はけっして楽になったわけではないと語る。特許使用契約か部品供給か、どちらが10年後の佃製作所にとってメリットがある否かで考えると、ロケットエンジンを手掛けて、新たな事業を展開できるのであれば、その方が良いのかもしれない、とことばを続けるのである。
リスクを語る唐木田に対して、殿村はこう言い放つのだった。

殿村「リスクのないところにビジネスはありますか?」

この殿村の一言で、佃製作所の方針は部品供給に決まった。
この決定を良しとしない第二営業部係長の江原、経理部係長の迫田、技術開発部ステラエンジン担当の真野は、航平に直談判する。なぜ、部品供給なのかと、その判断をする際に、社員のことを考えたことがあるのか、と。

江原「会社は社長の私物ですか」

和解金が入っても、給料に反映されないことに不満をつのらせる江原たち。
そして、航平がステラエンジンよりもロケットエンジンを重視することに不満を抱く真野たちであった。


一方、娘の利菜は、航平に「1億円を貸してほしい」と言う。
友達の会社が倒産して、1億円の借金を抱えているという。そのため、転校もするという。
だから、友達を助け、転校をしなくてもすむように、1億円を貸してほしいという。
56億円もの和解金があれば、1億円くらいどうってことないじゃないかと言い募る利菜に、航平は、会社の金は自分の自由になるものではないこと、たとえ、その友達にお金をあげても本当の助けにはならないことを伝える。

利菜「結局、パパもママと同じ。自分さえ良ければそれでいいんでしょ」

子どもには子どもの事情があるかもしれない。
しかし、大人にも大人の事情がある。
それを理解せずに表面的なところしか見えないのはしかたがないが、それよりもなによりも、両親の離婚からいまだに立ち直っていない利菜を見て、航平は思い悩むのだった。


別れた妻・沙耶は、航平が帝国重工への部品供給を行おうとしていることに対して、まだ宇宙への未練があるのであれば、居場所が違うのではないかと伝える。もっと直接、宇宙事業とからめる会社、つまり、航平が辞めざるを得なかったJAXSへの復職をほのめかすのだった。



佃製作所では、高森電工が資金難で外資に買収され、現在、優秀な技術者を募集しているという情報が流れる。
真野の心は揺れ動く。


富山は、佃製作所の弱みをつかむことができず、苛立つ。
7年前のロケット打ち上げに失敗したにも関わらず、部品供給をしたいと言う中小企業の愚かな発言にたいして憎しみがわいてくるのだった。

財前「いつもそうだ。町工場の経営者は出来もしない大口をたたいて、いつも周りを振り回す」

財前の実家は、有限会社財前化工という町工場を営んでいた。
父の信生は、ワンマン社長であり、新製品を開発すると言っては大きな投資をし、結局は失敗して、そのしわよせをすべて家族や社員に押しつけていた。大企業が、中小企業など相手にするはずもない、それなのに自分勝手は夢ばかりを見て周囲を振り回す父の姿と、航平の姿が重なって見えるのだった。


佃製作所では、真野たちステラエンジン担当者と、山崎、そしてバルブシステム担当の埜村たちの関係がギクシャクしていた。
そんなとき、高森電工から真野がヘッドハンティングされる。

開発部チームを集め、山崎は、高森電工からの引き抜きの話について確認をする。
辞めるつもりかと問う山崎に、真野は、もっと待遇を良くしてほしいと伝える。
そんな真野たちは、山崎は、自分が佃製作所で働くことになった理由を語るのだった。

7年前、航平から佃製作所に誘われていたとき、山崎は業界最大手の優良企業アスロ・テクニカルで働いていた。
航平から、一度会社を見に来てくれと言われ、面接のつもりで佃製作所を訪れた山崎は、開発中の業界最軽量のモーターボートエンジンの試作に携わることになり、大企業にいても研究に携われずにくすぶっていた心が、いつの間にか感動で高ぶっていることに気づいた。

航平「君には夢はあるか。
   俺にはある。
   今は小型ボートだけど、いつか自分で作ったエンジンでさ、
   秒速11キロの壁をこえて、
   地球の重力を脱出できるロケットを大空に飛ばしたいんだ」


航平のことばを聞いて、そのとき、山崎は決意したのだった。

山崎「大手の看板や高い給料より、
   自分の手でものづくりのできる
   佃製作所という場所のほうが俺には合っているって。

   後で聞いたら、社長はその試作品のエンジンを作るのに、
   1ヶ月近く家に帰らず、
   毎晩ほとんど寝ないで開発に没頭していたらしい。
   しかも、今みたいなまともな設備もなかったし、
   まだ会社からも資金が出なかったから、
   あるだけの自費を投じて製作費にあてたそうだ。

   社長は、誰よりも体はって、
   リスク背負って、
   本気で夢を叶えようとしてるんだ。

   俺はそんな社長のもとで一緒にものづくりができて良かったよ。
   この会社に入れて良かった。

   おまえらは、どうなんだ


山崎のことばに、真野たち、そして開発部の全員の心に、ものづくりへの思いがこみ上げてくるのだった。


財前は、部品供給の件を水原に言えないでいた。
もう失態は許されないという水原に、焦る財前。
富山から、佃製作所内では部品供給に反対する技術者がおり、主要な技術者の何人かは高森電工に引き抜かれる可能性が大きい、という情報を受ける。
財前は、すぐに佃製作所に赴く手配をするのだった。


佃製作所に訪れた財前は、そのような状況下では部品供給などできるはずはない、という論法で、特許使用契約を結ぶ話をする予定であったが、航平は、部品供給するのであればまず工場を見学することが必要だと、財前を工場に案内する。

工場では、航平は社員と気軽に話し、仕事場の雰囲気は明るいものだった。
かつて、社員たちが不平不満ばかりを言っていた自分の実家とは違う雰囲気に、財前は違和感を覚える。
そして、技術開発室に向かった財前は、そこで航平の失敗を糧に、徹底管理された施設に驚く。
さらに、現在、機械化が進んでいるにも関わらず、手作業への要求水準の高い佃製作所の方針に、なぜ手作業の方が精度が高いのかと問い、航平の提案で、その場で手作業が必要か否かを試してみることになる。

作業を行う社員がひとり休みになっていたため、航平は真野にその作業を委ねる。
真野はためらうが、それならば自分が行うという航平や山崎に対し、自分がやると部品を受け取るのだった。

ラッピング作業(金属鏡面加工)、バリ除去作業、そして洗浄。
その仕上がりを、航平がひとつひとつ確認する。

その姿を見て、財前は、いつも航平はああなのかと津野に聞くのだった。
津野は、いつもそうだと答え、こう切り出すのだった。
7年前のロケット打ち上げプロジェクトに財前がかかわっていたことを知っている津野は、財前が航平を恨んでいるのでは、と問う。
航平ひとりの責任ではなかったが、誰かが責任をとらなければならなかったから、航平は辞めたのだと。

津野「どうか、社長のことを誤解なさらないでください。
   社長はちょっと変わっていますが、
   立派な研究者であり、技術者なんです」


社員にそこまで言わせる航平の人柄に、財前は、驚く。
そして、出来あがった部品を見て、その技術を見て、財前は驚き、さらにバルブシステムの実験データが帝国重工よりも優れていることに驚愕するのだった。


佃製作所を出ながら、財前は、なぜ中小企業である佃製作所が、無駄な製品になるかもしれないのに、ロケットエンジンのバルブシステムを作ろうとしたのか、と航平に問う。

航平「強いて言えば、チャレンジですかね。
   ロケットに搭載する技術は、ネジ一本におよぶまで
   最高の信頼性が要求される。
   そういう研究は、今後の生産活動に必ず活きてくるはずです。
   難しいからこそ、やる価値があるんだ。
   どんな難問にも必ず答えはある。
   挑戦すれば、必ずその答えを見つけ出せる。
   私はそう信じているんです」


財前は、そのことばに、自分にもかつてあった熱い思いを思い出す。
そして、佃製作所が自分が知っている中小企業とは違うことを知り、水原に、佃製作所の部品供給を検討させてほしいと申し出るのだった。




いよいよ、部品供給をめぐって、適正評価が始まる。


「下町ロケット」概要
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第9話 | 第10話(最終話)


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下町ロケット(2015)第2話 [ドラマ(日本)下町ロケット]

下町ロケット関係図.jpg

山崎役の安田顕さんがとても良いです。
TEAM NACSの安田さんは、「水曜どうでしょう」時代から知っていますが、本当に良い役者ですね。


さて、物語では、次から次へと困難がふりかかります。
ナカシマ工業の卑劣な罠にはまり、特許侵害訴訟であわや買収寸前まで追いつめられた航平たちに、神谷弁護士が提案をします。

逆訴訟です。
我々も、ナカシマを訴えます。


そのころ、帝国重工が開発した悲願のバルブシステムと同構造の特許が、すでに1週間前に出願されていたことが判明した。
それは、銀行からガラクタといわれ、死蔵特許と呼ばれた佃製作所の製品の中にあった。
そのことにはまだ気づかない航平たちは、目の前のナカシマ工業との裁判に注力していた。


【ストーリー】

佃航平と財前道生は、かつて、宇宙科学開発機構(JAXS)で共にロケット打ち上げに携わっていたが、お互いに面識はなかった。
財前は、航平について、さらに調べを進める。


一方、ナカシマ工業を逆訴訟で訴えることで、2つの訴訟を抱えることになった佃製作所は、その分、資金的に裁判に費やすことができる期間が短くなることに、いっそうの覚悟を決めるのであった。
ナカシマ工業による訴訟(以下、訴訟①)と、佃製作所による訴訟(以下、訴訟②)を担当するのは、田端耕二裁判官。
訴訟②の第1回公判において、航平たちは、田端がナカシマ工業寄りではないかという違和感を覚える。
田端が扱ってきたここ3年の裁判21件中18件が大企業寄りの判決であることに、不安を抱える佃製作所の社員たち。
せめて、資金さえあれば、と。

その中、帝国重工の宇宙開発事業部が佃製作所にやってくる。
航平が開発したバルブシステムの特許を20億で譲ってくれとの申し出であるが、航平は売却するために開発したものではないとし、譲渡ではなく特許使用契約、さらにそれを独占的に使いたければ独占使用権を提案するが、すべてを自社製品で開発することを目指す帝国重工は、その提案を退ける。そして、現在、ナカシマ工業との裁判で資金が必要でなのでは、と佃製作所の弱点をついてくるのだった。
1週間後に返答を出すということになる。

一方、帝国重工は、航平の思いを曲解し、大企業ならではの高圧的な見解を述べていた。

財前「なにが愛着だ。
   彼があのバルブ特許と持ってなんになる。」

富山「どうせ金が目当てですよ。
   渋れば多少売値が釣り上げられると思ったんでしょう。」

財前「下請けの考えそうなことだ。」

富山「ま、1週間ぐらいしたら特許を売却したいと言ってきますよ。
   多少、値を釣り上げて、ね。」

財前「50億ぐらいまでなら出してやるさ。
   それでスターダスト計画が維持できるなら安いものだ。」


佃製作所では、航平の思いとは裏腹に、20億で特許を売ることに前向きになる社員たち。
これまで、研究開発に反対していた社員たちは、資金繰りが大変な今、さっさと20億で売ってしまおうと提案。
一方、殿村は、20億では安すぎると発言する。

帝国重工がうちの足元を見て、安く買いたたこうとしているとしか思えません。
帝国重工はあの技術を開発するのに、今まで少なくとも100億以上の資金を投じているはずです。
ならば、それと同等の額。
100億円で売ってもおかしくない。


それに対し、200億円でも売りたくはないという山崎。
社員たちの気持ちに、宇宙に対する自らの夢も含めながら、航平は思い悩んでいた。

娘・利菜が手首を痛め、現在、リハビリ中であることを知った航平。
家族と向き合っていなかったことにも気づく。


財前たちが航平と会って、1週間が経った。
航平は、まだ社内での意思統一がはかれていないこと、特許使用契約についても考えてほしいと伝える。
財前が特許使用契約を考慮しないと伝えると、航平は、もう少し時間をほしいこと、その結果、特許を売却しないこともあり得ることを伝え、財前はようやく特許使用契約を検討することを承諾する。


訴訟①を傍聴する航平たち。
そのとき、ナカシマ工業側から、次回公判時に航平の証人尋問申請が行われた。
ナカシマ工業の引き延ばし作戦だとわかっていても、受けないわけにはいかず、航平は神谷が用意した想定問答を暗記して臨むことになった。

財前は、大学の同期であるナカシマ工業の三田公康とアポイントメントを取っていた。
財前が約束の時間に行くと、三田は毎朝新聞記者・高瀬のインタビューの受けているところだった。
中小企業を、大企業の寄生虫と言う三田の発言を聞いていた財前は、ナカシマ工業の目的が佃製作所の買収であり、金のみに執着する企業であることを確かめていた。そのナカシマ工業に佃製作所が買収されたら、特許買取価格の跳ね上がりが予想される。そうならないために、佃製作所との交渉を早期に進める必要があること、そのためには特許使用契約も考慮しなければならないことを痛感するのだった。


航平の証人尋問の日。
利菜のために薬を用意する航平のやさしさにふれた利菜は、航平のシャツにアイロンをかけていた。
その利菜の思いやりに航平もまた、裁判を闘う決意を新たにするのだった。

神谷は、自分が用意したメモではなく、航平自身のことばで、航平の思いを語ってほしいと伝える。

航平は一技術者として、開発に対する思いを語る。

技術者はみんな自分の無力さを知ってるよ。
毎日壁にぶつかってばかりだからな。
だからこそ必死に、腕をみがいて、徹夜で開発に没頭して、
次こそはと信じて、ものを作り続けているんだ。

なんでかわかるか。
おもしろいんだよ。
昨日できなかったことが、今日できるようになる。
今日わからなかったことが、明日わかるようになる。
それを自分の技術でやれたら、最高だ。


田端は、佃製作所の技術に対する考え方を知るため、航平のことばに耳を傾ける。

技術は人を支える。
人間社会を豊かにする。
人をしあわせにする。
これこそが、技術の本当の力じゃないんでしょうか。

技術者を守るためにこそ、特許はあるべきだ。
それにふりまわされて、金のことしか考えられなくなったら
そこに技術の進歩はありません。
そんな特許ならないほうがましだ。
特許だの買収だのしか頭の中にないあんたたちに
うちより先にあの技術を完成させることなど、
絶対に、絶対にできるわけはない。
特許侵害を起こしたのは、うちじゃない。
ナカシマの方だ。

たとえこの裁判に負けたとしても
ナカシマに特許を奪われたとしても
屁でもありません。
培ってきた技術力だけはけっして奪えない。
正義は我にあり、だ。



この後、裁判は一気に決着を見る。
田端より、両者への和解勧告がなされ、訴訟①②を含め、和解金56億円が佃製作所に支払われることになった。実質上の勝訴である。

よろこぶ佃製作所の社員たち。
その中、白水銀行が再度の取引を申し出てきた。
航平は、もっとも苦しかった時に融資を断り、会社を窮地に陥らせたことにたいして、今後、白水銀行との取引は和解金が支払われた後に解消し、メインバンクは東京中央銀行に変更することを告げるのだった。

毎朝新聞にナカシマ工業が「中小企業は寄生虫」と述べた記事が掲載された。
企業イメージがダウンし、ナカシマ工業は訴訟を停止することを三田に通達する。
この記事を書いた高瀬は、かつて、神谷がナカシマ工業と決別するきっかけとなった、ナカシマ工業による買収公判で倒産に追い込まれた企業の息子であった。

佃社長、あなたは強い人です。
どうぞこれからも中小企業の意地を貫いてください。


高瀬のことばに、航平はうなづくのだった。


ナカシマ工業との裁判に勝ち、次は、帝国重工との特許問題である。
航平が出した答えは、特許売却でもなければ、特許使用契約でもなかった。






技術者としての航平のことばは、2014年にノーベル物理学賞を受賞した中村修二さんのことばを思い出します。
組織の大きさに比例して、態度も大きくなるのは世の常です。
その中で、技術力は、誰のために、何のためにあるのか。
つづきが気になります。

「下町ロケット」概要
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下町ロケット(2015)第1話 [ドラマ(日本)下町ロケット]

研究者としての夢と、経営者としての現実。
その間でゆれ動く航平の心は、本当にリアルです。
そして、大企業を相手にしたときの弁護士の動きもリアルです。

もちろん、フィクションですから、それなりにフィクションの要素が加わっていますが、業界を知っている者にとっては、業界あるあるネタもそこかしこにちりばめられているので、フィクションなりに楽しめる要素もあります。
かつて、「半沢直樹」で銀行員たちが、いろいろな反応を示した理由がよくわかります。


【ストーリー】

主人公・佃航平は、宇宙科学開発機構(JAXS)の研究員。
自身が開発したエンジン「セイレーン」を載せた念願のロケットが、種子島宇宙センターから打ち上げられた。
成功したかに見られたロケットは、打ち上げ直後に軌道を離れ、結果、失敗。その失敗の責任を取らされて、航平は父親がのこした下町の工場「佃製作所」を継ぐことになる。

それから7年。
昭和39年創業の佃製作所(東京大田区)は、精密機器製造業を営む中小企業であり、かつては電子部品を主力としていたが、航平の社長就任に伴い、小型エンジンの製造を主力として年商は3倍となった。年商100億円に満たない中小企業であったが、エンジン開発技術においては大企業をもしのぐという評判である。が、この研究開発費は膨大であり、また、商品化に結びつけるのは一朝一夕には叶わなかった。

主要取引先の京浜マシナリーからの突然の取引終了の通知、さらなる融資を頼んだメインバンクである白水銀行からは融資を渋られる。
中小企業なら中小企業らしく、目先の利益のために、ロケットエンジンよりももっと実用的な開発を、という柳井のことばに、航平は苛立ちを覚える。
そんな航平に、殿村は、JAXSと帝国重工による新たな純国産ロケットの打ち上げ計画「スターダスト計画」の新聞記事を見せながら、こう訴えた。

社長はまだ、研究者だったころの夢が忘れられないんじゃないですか。
だから研究開発がやめられないんです。
だけどもう今は研究者じゃない。経営者なんです。
今は会社のこと、社員の生活のことを第一に考えてくれませんか。


殿村のことばに、航平は、宇宙にかける自分の夢と会社経営という現実に板挟みとなるのであった。
その中、ライバル会社のナカシマ工業から、主力商品である小型エンジン「ステラ」が特許侵害で訴えられる。
ナカシマ工業は、他社の製品を模倣した後に、逆に特許侵害で訴えて賠償金を取ることで有名な大企業である。京浜マシナリーの突然の取引終了も、ナカシマ工業のしわざかと苛立つ佃製作所関係者であるが、その法廷戦略の得意なナカシマ工業から訴えられたことで、白水銀行からは融資を断られ、続々と届く取引先からの取引終了の通知に、財政的にあと半年しか時間が残されていないという現実に追い詰められていく。
さらに家庭でも、航平は、娘・利菜との関係に悩んでいた。

裁判での戦いは、頼みの田辺顧問弁護士が、知財関係の知識に乏しく、また大企業相手ということで最初から及び腰であったため、第1回口頭弁論後に、航平は弁護士を変えることに。
そして、資金繰りに悩む航平に、これまで佃製作所とは一線を引いた関係だと思われていた殿村が、銀行と決別して佃製作所を守ろうと動きだす。白水銀行の定期を解約しても、半年のリミットが1年に延びただけであるが、その期間を利用して、改めて裁判で戦うことを決意する。

弁護士を探す航平たちであったが、大企業相手ということで、弁護を引き受けてくれるところは少ない。困り果てた航平は、離婚した元妻・沙耶に紹介された、知財関係に詳しい神谷修一弁護士に、ようやく活路を見出す。
神谷弁護士からは、裁判を引き受ける条件として2つ、提案が出される。
1つ目は、たとえ勝訴は濃厚でも、裁判の長期化に備えて、あと半年分の資金を調達すること。
2つ目は、今回のような事態を招かぬよう、これまの特許の内容を見直すこと。


神谷が、佃製作所の弁護士となったことを受け、ナカシマ工業は、水面下で策を講じる。
メインバンクからの融資を断られた佃製作所に融資をしてくれる銀行はなく、資金繰りに困り果てる航平たちに、山崎より、ベンチャーキャピタル「ナショナルインベストメント」が融資可能かもしれないという情報を持ってくる。これで半年の資金を確保できることになる。
第2回口頭弁論は、神谷によって順調に進む。しかし、そのとき、ナショナルインベストメント」からの融資の話が白紙となる。ナカシマ工業が裏で手を回していたのだ。
またしても資金繰りに困る佃製作所に、ナカシマ工業から和解の申し出があった。和解の条件は、佃製作所の株式51%の譲渡。つまり、実質上の買収である。ナカシマ工業の真の目的は、数々の特許を持つ佃製作所の買収であったことが明らかになる。航平は、資金の調達のため、白水銀行に再度融資を頼むため、研究開発をストップさせることを決意し、銀行に依頼する。しかし、ナカシマ工業の子会社となった方が銀行としてはメリットがあるという、銀行の答えは冷たいものであった。
会社を守ろうとする社員、ナカシマ工業の買収案を受け入れ、子会社として自らの生計を確保しようと考える社員など、佃製作所内でいろいろな思いが交錯する。

そのころ、帝国重工では、失敗が続いていたバルブシステムT-13型の最終燃焼試験が行われ、無事成功した。

帝国重工のバルブシステム燃焼試験成功の記事に、航平は、ナカシマ工業からの和解案を受け入れることを決意する。
その自分の決意を、山崎、殿村、津村、唐木田に伝える航平。そして自分が社長から退くことも伝える。

山崎、頼みがある。
どうか、作り続けてくれ。
ナカシマだろうと佃だろうと、そんなことどうだっていいんだ。
みんながこれまで必死になって培ってきた、技術や志を、次の世代につないでいってもらいたい。
技術の進歩が止まってしまったら、世の中の発展はない。
だから、どうかものづくりの火を消さないでくれ。


その航平のことばに、殿村は、他に手立てはあるはずだ、考えようと訴える。
技術があっても日の目をみない中小企業のために、自分は銀行員になった。その元銀行員として、佃製作所のような良い会社を、自分は守りたいと訴えるのであった。

その航平たちの姿に、神谷は、さらに資金が必要となる可能性があるが、成功したらナカシマ工業を短期間のうちに完膚なきまでにたたきつぶす方法があると提案する。
それは、逆訴訟である。
ナカシマ工業の主力商品を特許侵害で訴えることで、佃製作所の信用を取り戻すのである。
航平はその案をのみ、ナカシマ工業と戦うことを決意する。


一方、帝国重工が開発したバルブシステムT-13型の特許申請の前に、佃製作所のバルブシステムの特許申請がなされていたことが明らかとなった。
航平たちが特許を見直しを行ったため、特許の優先権は佃製作所にあることになる。
すべてを自社製品で、と目論んでいた帝国重工の財前は、愕然とするのであった。


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